某S県

県境の古びたトンネルに纏わる噂話

ある若い男女が遠出の帰りに遭遇した出来事…



元々標高が高い上に

山頂へ続く登りの峠道

ガードレールの一歩外側…眼下には深い渓谷が広がる



その日も案の定

濃霧と霧雨で

視界はほんの10メートルばかり


残り心許ないガソリンに急かされる様に

車は危険を省みず闇雲にスピードを上げる


濃い霧に差し込むヘッドライトの中に

不意に浮かび上がる髪の長い女性の人影…





『ドンッ』





鈍い衝撃と共に車が停止する



車中の二人が身じろぎもしないのは

良心の呵責による恐怖からでは無く


フロントガラス1枚を隔て

ボンネットの上で苦しみもがきのたうち

頭部から夥(おびただ)しく血を流す女性から眼が離せ無いからだった




『…い、痛い…助けて…』



血まみれの女性が絞り出したか細い声を聞いた刹那


バネ仕掛けの様に車は勢い良くバックして

ボンネットの上の女性を振り落とす


地面に転がり落ちた女性の手が

挙がったのを見たか否か


『グシャリ』という嫌な感触を乗り越えて

車は霧の中へと走り去る…






やがて車は

高速道路へと続く古いトンネルへと差し掛かる


トンネルの奥は一切の明かりが無く

ただ暗闇が広がるばかりであった


ヘッドライトだけを頼りに

トンネルに分け入る車中の二人は

恐怖感と逃げ出したい一心からか

顔面蒼白で無言のまま

前方を食い入る様に凝視している








『嫌ぁ―っ!!』





絶叫と共に助手席の女性が激しく反り返る

シートベルトもちぎれんばかりに

頭部を両手で抱えて狂った様に暴れている


トンネルの中程ではあったが止む無く停車し

助手席の女性を落ち着かせにかかる



『嫌っ!!髪っ!髪を引っ張らないでっ!!』

『落ち着いて!誰も引っ張ってなんかいないよ!』



発狂がぴたりと止み

暗闇の中に遠くの雨音だけが響き渡る…



『…本当に?』

『ああ!誰もいやしないから!』


頭部から両手を離し
上目使いで怖ず怖ずと尋ねる彼女を

男が宥(なだ)める


『…本当に誰もいない?』


彼女が窓の方へ振り向くと



彼女の…



後頭部がざっくりと割れていて狂った様に血が溢れ出している




彼女は長い髪を後ろから

見えない強い力で急に引っ張られたかの様に『ぐるり』とこちらを振り向く…






ボンネットの上で見た

血まみれの女と同じ顔で…






『… 戻 っ て 来 て …』






その後、このトンネルを車で通る長い髪の女性が

後ろから髪を引っ張られたという話が

後を絶たない






あなたの後髪は…


引かれていませんか?













(『嫌な話を聞いちまった』)

居酒屋の洗面所で用を…それも大きな用事(失礼)を足しつつ

小部屋の中で独り『考える人』のポーズを決め込む。


会社の同僚達との打ち上げ会で

駅前の居酒屋に繰り出した迄は良かったが

KYな怪談話ですっかり酔い醒めして

店内にいる長い髪の女性を見る度に目で追ってしまう始末。


(『疚しい気持ちなんぞこれっぽっちも無い。これは怪談のせいだ』)


先程などは

斜め向かいにのテーブルに座っていた

髪の長い…しっとりとした感じの女性に最大限友好的に微笑みかけたものの

まるで見えない力で後髪を…急に引っ張られたかの様にそっぽを向かれ敢え無く撃沈。

彼女の面影に独りさめざめと

小部屋の中で後髪引かれていた次第である。



大仕事(失礼)を終えて全てを水に流すべく

拭き取るべき用紙を探すと

在るべきはずの専用フォルダにセットされていない。


(『気にするなよ…良くある事さ』)

己の迂闊さを棚にあげつつ

出来うる限りの中腰に勇気を持って挑み
後上部にある棚の扉をまるで神棚の御神体であるかの如く

不自然な姿勢のままで静々と開ける。






…あるべき筈の神がおられ無い…




(『たしか、ネット上ではネ申と強調するんだったな』)


途方に暮れたまま

再び『考える人』の体勢に戻る。




…10分経過

『携帯電話で助けを呼ぶ』何て初歩的な対処は既にチャレンジ済みであり


電波が届かないという在り来りの結果に終わっている。

心中『キャリアを変えてやる』と誓う。SBめ。






…20分後


捨てる神あれば拾う神あり。


やいのやいのと大きな声で話をしつつ

若者らしき数人が用を足しに入って来た。


(『たっ、助かったっ!』)

なけなしの勇気を振り絞り若者達に助けを求める…



『…すっ、すいません…』


聞こえたか否か

全く応えが無い。


その後

恥もプライドもかなぐり捨てて大声で何度も呼び掛けたが応(いら)えは無く


若者達の一団は大声で会話をしながら洗面所から去って行った。





『…神も仏もありゃしない…』



神にも紙にも見放されて

寒い小部屋の中心で独り世界に愛を叫ぶ…






この後?




何もございませぬ。





『そして誰もいなくなった』にございます(^^ゞ
某S県

県境の古びたトンネルに纏わる噂話

ある若い男女が遠出の帰りに遭遇した出来事…



元々標高が高い上に

山頂へ続く登りの峠道

ガードレールの一歩外側…眼下には深い渓谷が広がる



その日も案の定

濃霧と霧雨で

視界はほんの10メートルばかり


残り心許ないガソリンに急かされる様に

車は危険を省みず闇雲にスピードを上げる


濃い霧に差し込むヘッドライトの中に

不意に浮かび上がる髪の長い女性の人影…





『ドンッ』





鈍い衝撃と共に車が停止する



車中の二人が身じろぎもしないのは

良心の呵責による恐怖からでは無く


フロントガラス1枚を隔て

ボンネットの上で苦しみもがきのたうち

頭部から夥(おびただ)しく血を流す女性から眼が離せ無いからだった




『…い、痛い…助けて…』



血まみれの女性が絞り出したか細い声を聞いた刹那


バネ仕掛けの様に車は勢い良くバックして

ボンネットの上の女性を振り落とす


地面に転がり落ちた女性の手が

挙がったのを見たか否か


『グシャリ』という嫌な感触を乗り越えて

車は霧の中へと走り去る…






やがて車は

高速道路へと続く古いトンネルへと差し掛かる


トンネルの奥は一切の明かりが無く

ただ暗闇が広がるばかりであった


ヘッドライトだけを頼りに

トンネルに分け入る車中の二人は

恐怖感と逃げ出したい一心からか

顔面蒼白で無言のまま

前方を食い入る様に凝視している








『嫌ぁ―っ!!』





絶叫と共に助手席の女性が激しく反り返る

シートベルトもちぎれんばかりに

頭部を両手で抱えて狂った様に暴れている


トンネルの中程ではあったが止む無く停車し

助手席の女性を落ち着かせにかかる



『嫌っ!!髪っ!髪を引っ張らないでっ!!』

『落ち着いて!誰も引っ張ってなんかいないよ!』



発狂がぴたりと止み

暗闇の中に遠くの雨音だけが響き渡る…



『…本当に?』

『ああ!誰もいやしないから!』


頭部から両手を離し
上目使いで怖ず怖ずと尋ねる彼女を

男が宥(なだ)める


『…本当に誰もいない?』


彼女が窓の方へ振り向くと



彼女の…



後頭部がざっくりと割れていて狂った様に血が溢れ出している




彼女は長い髪を後ろから

見えない強い力で急に引っ張られたかの様に『ぐるり』とこちらを振り向く…






ボンネットの上で見た

血まみれの女と同じ顔で…






『… 戻 っ て 来 て …』






その後、このトンネルを車で通る長い髪の女性が

後ろから髪を引っ張られたという話が

後を絶たない






あなたの後髪は…


引かれていませんか?








(『嫌な話を聞いちまった』)

居酒屋の洗面所で用を…それも大きな用事(失礼)を足しつつ

小部屋の中で独り『考える人』のポーズを決め込む。


会社の同僚達との打ち上げ会で

駅前の居酒屋に繰り出した迄は良かったが

KYな怪談話ですっかり酔い醒めして

店内にいる長い髪の女性を見る度に目で追ってしまう始末。


(『疚しい気持ちなんぞこれっぽっちも無い。これは怪談のせいだ』)


先程などは

斜め向かいにのテーブルに座っていた

髪の長い…しっとりとした感じの女性に最大限友好的に微笑みかけたものの

まるで見えない力で後髪を…急に引っ張られたかの様にそっぽを向かれ敢え無く撃沈。

彼女の面影に独りさめざめと

小部屋の中で後髪引かれていた次第である。



大仕事(失礼)を終えて全てを水に流すべく

拭き取るべき用紙を探すと

在るべきはずの専用フォルダにセットされていない。


(『…良くある事さ』)

己の迂闊さを棚にあげつつ

出来うる限りの中腰に勇気を持って挑み
後上部にある棚の扉をまるで神棚の御神体であるかの如く

不自然な姿勢のままで静々と開ける。






…あるべき筈の神がおられ無い…




(『たしか、ネット上ではネ申と強調するんだったな』)


途方に暮れたまま

再び『考える人』の体勢に戻る。




…10分経過

『携帯電話で助けを呼ぶ』何て初歩的な対処は既にチャレンジ済みであり


電波が届かないという在り来りの結果に終わっている。

心中『キャリアを変えてやる』と誓う。SBめ。






…20分後


捨てる神あれば拾う神あり。


やいのやいのと大きな声で話をしつつ

若者らしき数人が用を足しに入って来た。


(『たっ、助かったっ!』)

なけなしの勇気を振り絞り若者達に助けを求める…



『…すっ、すいません…』


聞こえたか否か

全く応えが無い。


その後

恥もプライドもかなぐり捨てて大声で何度も呼び掛けたが応(いら)えは無く


若者達の一団は大声で会話をしながら洗面所から去って行った。





『…神も仏もありゃしない…』



神にも紙にも見放されて

寒い小部屋の中心で独り世界に愛を叫ぶ…






この後?




何もございませぬ。







『そして誰もいなくなった』にございます(^^ゞ
昨日は仕事の関係で

JR東京駅の地下通路を抜けて『東京国際フォーラム』へ





近代建造物の技術力と

『地震がきたら硝子の雨が降るかも』等と

杞憂にして空き時間を過ごす。

『太田道灌像もあちらこちらに奉りすぎじゃね?』と

お上りさん的に心中不条理な言い掛かりをつける事にも余念無し。


会場前にランチを頂くべく



憧れの『レバンテ』へ。

夜は輝く店内も

当然ながら昼間は普通のレストラン…食堂である。

昼間から生牡蠣とワインに舌鼓…ともいかず

プライス1000円のサービスステーキランチをオーダーする。

しっかりした肉質と絶妙かつレアな焼き加減。

想定外のヴォリュームに十分満足。


地中海気分は味わえませんでしたが(笑)



明けて本日

最近めっきりお馴染みになりつつある

息子『ポポノ進(ぽぽのしん)』の発表会。

一週間前から続く息子からのオファに抗いきれず

出社時刻を遅らせての登園。


まだ30代であろう若い園長先生の挨拶の後

年少組のほほえましい演目…と言うより『甘え泣き』が恙無く進行(微笑)。

『一昨年は我が子もあぁであった』とノスタルジックに反芻する間に

いよいよ我が息子の所属する『チーム・ウサギ』による演目…『Jingle Bells/打楽器version』の順番が巡り来る(…たしか練習段階ではピアニカも編制されていたはずではあるが)。

木琴、カスタネット、タンバリン等の打楽器をそれぞれ手に持ちチーム・ウサギの面々が登場。

総勢40人からなる『一様にHDDムービーカメラを手にした父母曾祖父母の一団』に臆する事なく

中央に進み出るポポノ進。







サンタ姿の息子の勇姿(?)と『これから~ウサギ組ジングルベル云々』の挨拶に

不覚にも涙腺が緩み…


本末転倒ではありますが

多くは語りますまい(照笑)



全ての演目が無事終了し

息子サンタ姿のまま控室にて親子歓談。


わたくしの『このままサンタさんになるか』との他愛ない一言に


『ぼくがサンタさんになってあげるから…パパは何が欲しいの?』と。





息子よ

パパは『お前が居れば他に何もいりませぬ』…








訂正


『妻とお前が居れば他に何もいりませぬ』(^^ゞ