KIK's Review Log -4ページ目

ひかりのまち

★★★★★

子どもの頃、たくさん読んでもらったおとぎ話は
どれも「それからお姫さまは王子さまと幸せに暮らしましたとさ」
に代表されるようなハッピーエンディングで、大団円が基本だった。


その後の人生で、自分が素晴らしい経験をした後はいつも
「おとぎ話ならここで私の笑顔と共におしまいになるのにな」とため息をついた。

好きな人から素敵な贈りものをもらって幸せ一杯のときは
「ドラマならここで場面転換だ、次週に持ち越しだ」と思うし、

素晴らしい景色の中に自分を置いたときは
「これが映画のエンディングならまるで風と共に去りぬのラストシーンのように、私が印象的なセリフを残してカメラが引いていく絵になるんだろうな」などと考える。


でも、実際はそうはいかない。

華やかなパーティの後でもタクシー拾えるかしらと心配するし、
贈りものをいただいたあともさてトイレに行こうと席を立ったりするし、
素晴らしい景色の中にいても、そろそろ寒くなったから車に戻ろうなどと考える。

印象的な経験の後にはいつだって日常生活が待っているし
人生はドラマティックではないぼんやりした時間の方が遙かに長い。

その中で感じる虚無感、満たされない想い、ここではないどこかにあるだろう幸せを望む気持ちを
毎日かみ殺しながら生きている。

そう、誰もが。


ロンドン。ソーホーのカフェで働くウェイトレスのナディアは、伝言ダイヤルで恋人を募集中。姉のデビーはバツイチの美容師で9歳になる息子ジャックと暮らしているが、夜遊びに余念が無い。元教師の妹モリーはもうすぐ出産。でも夫のエディは、なぜか最近うかない顔。「日蔭のふたり」のウィンターボトム監督によるヒューマン・ドラマ。音楽はマイケル・ナイマン。


どこにでもいそうな姉妹、恋人、親、それぞれが抱える日常とその虚無感が
重くもなく意味を持たせすぎずに描かれていて、とても良かった。
淡々と、という表現で語れないのは、特段大きなドラマがあるわけではないのに
静かなリズムで展開していくからかな。
映像も色の濃いフィルム感で、ロンドンの街の空気の中にいるようだった。

こういう映画はかなり好き。


何年も前から勧められていた映画、やっと見たよ。


ひかりのまち [DVD]/ジナ・マッキー

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追憶

★★★★☆

1973年作品。大戦直前の37年の大学反戦運動に端を発し、戦争末期の愛の再燃、結婚、そして、お互いの立場の違いを理解しての離婚、そして……と約20年にも及ぶ男女の過程を大河的に描いたラブ・ロマンス。バーブラが歌う主題歌は当時大ヒットし、アカデミー賞も受賞した


ヒロインが美人でない映画は最初からテンションが下がる。
良い例が「バッドマン」なのだけれど。

ごりごりに政治運動をしているケイティ(バーブラ・ストライサンド)は、美人ではなく、よく言えばファニーフェイス。対するハベル(ロバートレッドフォード)は、言わずもがなの絶世の美男子。役柄も才能に恵まれたハンサム青年。

その二人が恋に落ちる。


「知っているかい?君はきれいだよ」


男性でありながらお人形さんみたいなロバートレッドフォードに、頬をなでられながらそんなこと言われたら、どんな女子でも美貌細胞が60億個くらい増殖するだろう!!ってくらいなのだが、劇中でもケイティの表情が驚くくらいぐんぐん美しくなっていく。
最後の方は、もうケイティの美しい表情ばかりに目を取られて、映画史に名を轟かせる稀代のハンサムに対しては、「ロバート、けっこう吹き出物多いな」みたいな感覚になっていった。


観るタイミングによって全然おもしろさの違う映画だと思う。
二人の恋愛を何十年にもわたって描いた物語なので。若い子には退屈かなぁ。

どんなカップルにも、どんな恋愛遍歴にも「ああー・・・ねえーー」みたいな思い当たる節の多い映画だと思う。
気が強くてスイッチが入ると早口で演説をぶちまけるケイティに疲れたり、やっぱりこの子だと思ったり、ハベルは逡巡しながら過ごしていくのだけれど、お互いに認め合っての選択がそこにある。

男性はいつまでたっても子どもだとか、女性は強いとか大人だとか、女性の手のひらに男性が転がされている状態が良い、などとよく言われるのだが、この映画を観ていて思ったこと。

女性はどうしたって目の前のことにキーキー言ったり、絶対譲りませんよ的に頑固だったりする生き物なわけで。男性の方に「よしよし、またキーキー怒ってるな。あはは、よーし来い!」っていう、いわゆる母性みたいなものがあるとうまくいくのではないか、と。男性の手のひらで女性がジタバタしている状態ほうが、なんだか良い気がしてきた。「彼女がすることですからね。」みたいにデンと構えていていてもらったほうが。

この物語は、それが出来なかった例なのだが。元クラスメイトであったり(同学年はなぜ張り合おうとするのか)、ケイティが憧れていた作家というものにはハベルの方が才能があったりで、おおらかさが少ないのよね。

とにかく丁寧にふたりの恋愛を描いた映画です。

友人の存在がうまく効いているのと、どんどん静かに変わっていくケイティの強くて美しい表情、そして劇中に流れる歌声(主題歌は彼女が歌っています)が素晴らしい。



追憶 コレクターズ・エディション [DVD]/ロバート・レッドフォード,バーブラ・ストライサンド,ビベカ・リンドフォース

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ソウル・キッチン

★★★★★

「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」で世界的に高く評価された、ドイツのファティ・アキン監督による群像コメディ。ハンブルクで暮らす青年ジノスは、経営するレストランの不振、愛する恋人が外国へ行くなど、不運続きの日々。そんなある日、新しく雇ったシェフの料理が評判を呼ぶ。そこでジノは、店をワケありの兄に任せて恋人の元へ向かおうとするが……。2009年ベネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞。



好きなひとをもっと好きになる。

それって、そのひとの意外な面が見えたとき。かつ、それがひどく自分好みだったりするとき。そしてそれが嬉しくてプッと笑ってしまうようなときですよね。

このひとのここが好きだ!って言い張っていたときよりも、ぐっと肩の力が抜けた状態で「ああ、やっぱり好きになるべきひとだったんだ」とにんまりしてしまうような瞬間とも言えます。
これは恋の第二ステージ。第一ステージの焦がれるような、そして焦りにも似たドキドキ感を経てこその醍醐味ではないでしょうか。大人はこの第二ステージの楽しみを大切にしなければいけません。


「そして、私たちは愛に帰る」でズキュンと恋に落ちたファティ・アキン監督。
もうすべての映像がかっこいいし、人間ドラマが濃くてぐっとくる。トルコ・ドイツという、わたしにとって超異文化のミックスに、もう首ったけになった。そう、恋をしたんです。
次に見た「愛より強く」でも同じような印象だった彼。「好きだわ。あたし、こういう世界好きだわー」ってずっと恋い焦がれておりました。


そこへ来てこのコメディ!!

ずっと笑い続けるコメディではなく、進んで行くに従って「ぷっ」「ぷぷぷっ」「あは!」みたいになっていく映画です。

もう、わしづかみにされましたね。
次はどんな顔を見せてくれるのでしょう?

わたしはよく言うんですけど、派手なアクション映画やサスペンスものよりも、こういうものを作れる人の方を尊敬してしまうのです。特に、昨今「上質のコメディ」飢饉ですから。

これは、「お熱いのがお好き」「有頂天ホテル」などが上位に名を連ねる私のコメディランキングに赤丸急上昇です。


ファティ・アキン監督ファンはとにかく必見(遅い?)。
ヨーロッパのシニカルな笑いが好きな人にもたまらないでしょう。
お洒落大好き、インテリア大好きなタイプも楽しめるはず。
映画はそんなに観ないんだよね、というひとにも「じゃあこれ観なよ」って勧められる映画です!

あとね、三谷幸喜ファンにもオススメですよ☆
三谷映画の欧風スタイリッシュ版みたいな感じ。


そして、特筆すべきは
「世界一かっこいいエンドロール」。
終わった終わったってすぐに席を立たないでね☆


ソウル・キッチン [DVD]/アダム・ボウスドウコス,モーリッツ・ブライプトロイ,ビロル・ユーネル

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