藤原洋のコラム -6ページ目

~インターネット・トラフィックの聖地=大手町で起きていることとは?~
~IXとは?ASとは?インターネットは何故世界中と繋がっているのか?~

 去る7月20日に当社の最新鋭のデータセンターである「新大手町サイトが、契約率90%を超え開設3年10か月で満床に近づく」という発表をさせて頂きました。そこで、今回は、その背景について述べてみたいと思います。

 https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2022/0720_002156/

●7月1日に開催された『JPIX創業25周年』記念シンポジウム

 思い起こせば2022年7月は、ことの外感慨深い月となりました。というのは、7月1日に、日本インターネットエクスチェンジ株式会社(以下、JPIX)の『JPIX創業25周年』記念シンポジウムが開催されたのでした。このJPIXこそ、「新大手町サイト満床に近づく」という発表の起源となるもので、創立が25年前の出来事なのでした。ここでのIXとは、インターネットエクスチェンジの略で、「インターネット・トラフィックの交換を可能とする相互接続ポイント」のことで、AS(後述)を有するISP(Internet Service Provider、通信キャリアなど大手インターネット接続事業者)が伝送されるインターネット・トラフィックの交換を行う拠点です。これによって、各々のISPに加入している人々同士の電子メールが相互に届く訳です。

 JPIXは、日本初の商用IXサービス提供会社として、1997年7月に、KDD(国際電信電話株式会社、現KDDI)とIRI(株式会社インターネット総合研究所)との発起設立で18社の合弁会社として始動しました。現在では、当社はJPIXをIRIから継承し、KDDIに次ぐJPIXの2番目の株主として同IXの運用を受託しています。記念シンポジウムでは、当初設立に関わった産業界を代表して私が、学術界を代表して村井純教授が記念講演を行いました。
 その後のパネルディスカッションには、NTT系のIX=JPNAP(2001年5月~)を運営するインターネットマルチフィード株式会社の外山勝保副社長が参加されました。ここでは、IXの地域展開の可能性や、アジアにおいて、日本、シンガポール、香港において、日本とシンガポールのトラフィックと接続AS数(後の解説参照)が伸びており、香港が落ち込んでいるということが話題となりました。また、ソフトバンク系IX=BBIX(2003年6月~)を運営するBBIX株式会社の池田英俊社長も参加されました。

 当社の新大手町サイトの最大の特長は、これら3つのIXが全て接続点を有しており、日本で最もインターネット接続性に優れたデータセンターであるといえます。さて、感慨深いシンポジウムは、以下のプログラムで行われました。

●当日のプログラム(敬称略)

13:30 ◆開会◆
13:35-13:45 ◆ご挨拶~25周年を迎えて~◆
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   COO 猪澤伸悟
13:45-14:45 ◆『初の商用IXとしての役割とこれからのJPIXへの期待』
  ~JPIX創業25周年に寄せてSince 1997 ~◆
  株式会社ブロードバンドタワー
   会長兼社長CEO 藤原洋
14:45-15:45 ◆『大規模広域分散システムの時代』◆
  慶應義塾大学 教授 村井純
15:45-16:00 ◆休憩◆
16:00-17:00 ◆トークセッション◆『NEXT IX』
  株式会社ブロードバンドタワー
   会長兼社長CEO 藤原洋
  慶應義塾大学 教授 村井純
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   代表取締役社長 山添亮介
  インターネットマルチフィード株式会社
   代表取締役副社長 外山勝保
 モデレーター:
  日本ネットワークイネイブラー株式会社
   フェロー 石田慶樹
17:00-17:20  ◆ネットワークと人の集約点をめざして◆
  日本インターネットエクスチェンジ株式会社
   代表取締役社長 山添亮介
17:30 ◆閉会◆

●私の記念講演の概要

 当日は、77ページのプレゼンテーション資料を用い、以下の目次でお話させて頂きましたが、主なものを示させて頂きます。

目次:
1.自己紹介
2.日本初の商用IX=JPIXの役割
3.インターネットとSDGs
4.これからのJPIXへの期待

●IXとは?ASとは?(ミニ解説)

 IXの前に、インターネットの動作原理を説明します。インターネットとは、各組織が所有するネットワークであるAS(自律システム)が相互に接続された集合体です。ASは「Autonomous System」の略で、統一された運用ポリシーによって管理されたネットワークの集まりを意味し、BGP(Border Gateway Protocol)というドメイン間ルーティング(経路制御)プロトコルにより接続される単位となります。このAS間で経路情報の交換をおこなうことにより、インターネット上での効率的な経路制御を実現します。ASは16ビットの数字を用いたAS番号によってインターネット上で一意に識別され、日本ではJPNIC(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)が割り当てと管理を行っています。
 固有のASを持たない組織がインターネットに接続するには、インターネット回線を経由して、企業や個人向けにインターネットに接続するサービスを提供しているASを有する「ISP(インターネットサービスプロバイダ)」に接続する必要があります。通常、規模の大きいISPのネットワークは固有のASを形成しているため、ISPを窓口にすることによって他の組織と通信できるようになります。
 そこで、インターネットエクスチェンジ(IX)とは、「インターネット・トラフィックの交換を可能とする相互接続ポイント」です。ISPやコンテンツプロバイダー、ホスティング事業者、クラウド事業者など様々な事業者がインターネットエクスチェンジで接続され、トラフィック交換を行っています。  インターネットエクスチェンジを利用しない場合、各事業者はお互いに個別の回線を準備し、相互に通信可能な環境を作り出す必要があります。インターネットエクスチェンジに各事業者の接続点が集約されることで、インターネット上の通信がスムーズかつ安定的に維持されるのです。

●「新大手町サイト」が契約率90%超の意義について

 新大手町サイトは、当社が2020年代のモバイルインフラとなる5G時代のインターネットインフラを支える拠点となることを目指し、5Gモバイルの特徴である、超高速(10Gbps)・超低遅延(1msec)・超多地点同時接続(100万点/k㎡)をコンセプトに開設した、当社の最新鋭の基幹であるデータセンターです。大手町地区において、新世代のビジネス環境・都市モデルの具現化を目指し進められた大規模再開発事業の一翼を担う最新鋭のデータセンターとして、政府入札を経て2018年8月に開設しました。
 大手町地区は、前述の如く、その起源は日米インターネット・トラフィックを運ぶために、旧KDD大手町ビルに開設されたインターネットの相互接続点であるインターネットエクスチェンジ(IX: Internet eXchange Point)が集中する日本のインターネットの中心地です。数多くの金融機関・情報通信・メディア企業などが拠点をおき、また、国内外のクラウド事業者も多数進出するなど、事業者間の接続性に優れているインターネットの聖地なのです。

 当社は、設立以来、大手町地区をデータセンター事業の中核地としてとらえ、設立初年度の2000年7月に「第1サイト」を開設、翌年2001年にはJPIXの拠点を誘致し、インターネットエクスチェンジ(IX)との接続性を確保するなど、その地の利を最大限に活用し、事業を行ってきました。現在では、「第1サイト」・「新大手町サイト」においては、日本を代表する三大IX (JPIX、BBIX、JPNAP) へ構内での接続や、Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)などのメガクラウドとの閉域網接続を実現、「ネットワーク接続に強い」データセンターとして、高い評価を受けております。本センターの特徴を評価頂き、多様なインターネットへの接続を必要とするインターネット企業、通信キャリアに加え、製造業など今後のインターネット利用が加速化している顧客との契約が中心となっております。そして、既存顧客の拡張性を残しつつ慎重に顧客獲得を行い、開設から3年10か月で90%超が契約済みとなりました。

 そこで、いよいよ「ポスト新大手町」戦略を立案し実行するフェーズとなりました。今後の市場ニーズに応えるために、当社独自のハイパースケール&リージョナルデータセンター&エッジ・データセンター事業を展開してまいります。このようにデータセンターの大規模化と地域分散化を推進するにあたり、当社ならではの「新大手町モデル」ともいうべきトラフィック集中型データセンターの特長を活かした展開を行ってまいります。具体的には、当社の強みを活かし、当社にはない役割を担うパートナーシップ企業との連携を強化することで、「新大手町モデル」をコアコンピタンスとした事業展開を行っていく所存であります。

2022年7月27日
 代表取締役会長兼社長CEO
 藤原 洋