藤原洋のコラム -16ページ目

~日本社会のデジタル変革の展望と当社グループ戦略~

 

  2021年9月1日にデジタル庁が創設され、これまで、世界の中で遅れてきた我が国の行政と産業のデジタル化を推進するために、新たにデジタル改革(DX)政策が始動しました。当社からもCloud&SDN研究所所長の西野大氏が兼務でデジタル庁専門職員として勤務することとなりました。このようなデジタル政策の転換期に当たり、当社グループは、これまでのDataセンターカンパニー企業グループからDXセンターカンパニー企業グループへの転換を図り、社会のデジタル化を担う企業グループとして、さらなる成長を目指す所存であります。そこで、今回は、デジタル庁創設の経緯とその位置づけ、および日本の未来を担う日本社会のデジタル変革の展望と当社グループの戦略について述べさせて頂きます。

 

●デジタル庁の創設の経緯とその位置づけ

 政府は、新型コロナウイルスの感染症拡大の中で、デジタル及びサプライチェーンの見直し等、今後できることから前倒しで実施し、複数の省庁に分かれている関連政策を取りまとめ、強力に進める体制として、去る9月1日にデジタル庁が新設しました。以下にこれまでのデジタル改革の経緯と今回のデジタル改革行政の位置づけについて示します。

 

(1)デジタル改革の経緯

 我が国では、インターネットを中心とした情報通信技術(IT)の活用により世界的規模で生じていた急激かつ大幅な社会構造の変化(いわゆるIT革命)に適確に対応する観点から、2000年(平成12年)、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号。以下「IT基本法」という。)が制定されました。当社は、このインターネットを中心とした国造りに対応するために、日本初の専業インターネット・データセンター企業として誕生しました。

 IT基本法では、インターネット等の「高度情報通信ネットワーク」を整備し、国民が「容易にかつ主体的に利用する機会」を有することで、産業の国際競争力の強化、就業の機会の創出、国民の利便性の向上といった「あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展」がなされるとの考えの下、所要の施策を推進することとされました。

 その後、高度情報通信ネットワークの整備が相当程度進展した一方、インターネットを通じて流通するデータの多様化や大容量化の進展に伴い、IT基本法が重点を置いていたインターネット等の高度情報通信ネットワークの整備に加え、今日では、データを最大限に活用していくことが不可欠となっています。その間、政府は、「e-Japan戦略1」以降、主にインフラ整備とIT利活用を推進し、その後、「データ利活用」と「デジタル・ガバメント」を戦略の柱として推進してきました。

 こうした状況の中、多様・大量なデータ流通による負の側面も顕在化しており、デジタル技術の活用のみならず、個人情報の保護や必要なリテラシーを育むことの重要性が増加しています。また、新型コロナウイルス感染症への対応において、官民においてデジタル化を巡る様々な課題が明らかになりました。今後、大規模地震災害をはじめとする自然災害や感染症等の国民の生命・身体・財産に重大な被害が生じ、又は生ずるおそれがある事態に際しての強靱性(レジリエンス)の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、データの活用は緊要なものとなっています。

 こうした状況を踏まえ、政府は、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行するための突破口としてデジタル庁を創設することを柱としたデジタル改革について検討を加え、昨年(2020年)12月25日、IT基本法の見直しの考え方やデジタル庁設置の考え方について政府の基本的な方針を盛り込んだ「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(「デジタル改革基本方針」)を閣議決定しました。

 その後、この方針等を踏まえ、デジタル改革関連法案3が、本年(2021年)2月9日に閣議決定され、国会審議を経て5月12日に成立しました。

 

(2)本計画の位置付け

 デジタル改革基本方針では、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げ、このような社会を目指すことは、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を進めることに繋がるとしています。

 また、デジタル社会を形成するための基本原則として、以下の10原則を掲げました。

 この10原則等を踏まえ、デジタル社会形成基本法(令和3年法律第35号)第2条においてデジタル社会の形成に関する基本理念が規定され、また、これを踏まえ、同法第4章において施策の策定に係る基本方針が定められています。

 本計画は、デジタル社会形成基本法の施行(2021年(令和3年)9月1日)を見据え、同法第37条第1項に規定する「デジタル社会の形成に関する重点計画」に現時点において盛り込むべきと考えられる事項を示しつつ、

①IT基本法第36条第1項に規定する高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画

②官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)第8条第1項に規定する官民データ活用推進基本計画として策定するものです。

 すなわち、デジタル庁を司令塔として、デジタル社会の形成に向けた官民の施策や取組を迅速かつ重点的に推進する観点から策定するものであり、国、地方公共団体、民間をはじめとする社会全体のデジタル化について関係者が一丸となって推進すべき取組を示すことにより、デジタル社会の形成に向けた羅針盤とすることを目指すものであります。

 今後、本計画を踏まえつつ、デジタル庁の創設後速やかに、デジタル社会形成基本法第37条第1項に基づく「新重点計画」を策定することとされています。

 本計画に加え、デジタル・ガバメント推進の取組を加速するため、「デジタル・ガバメント実行計画」(2021年(令和2年)12月25日閣議決定。「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて(国・地方デジタル化指針)」及び「マイナンバーカードを活用した各種カード等のデジタル化等に向けた工程表」を含む。)に基づく取組を引き続き実施するとされています。

 デジタル化はあくまでも手段であり、その目的は我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現であります。こうしたデジタル改革が目指す究極の姿は「デジタルを意識しないデジタル社会」であり、徹底した国民目線で行政サービスを刷新すること等により、誰もがデジタルの恩恵を受けることのできる社会や、地域における魅力ある多様な就業機会の創出、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現、地域社会の持続可能性の確保等、地方においてもデジタルによる恩恵が受けられる社会に向け、さらには、自然災害や感染症等の事態に際しての強靱性の確保や、少子高齢化等の社会的な課題への対応のためにも、国、地方公共団体、民間事業者その他の関係者が一丸となって取り組むことが求められるとされています。特に、国及び地方公共団体においては、本計画に基づくデジタル化の取組を着実に実施することに加え、国民目線でサービス向上に資する取組をできるものから順次積極的に実践していくものとされています。

 図1に同法案で示された全体図を示します。

 

図1.デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の概要

 

●日本社会のデジタル変革の展望と当社グループの戦略

 以上に述べたように、行政のDXに始まる、本格的なDX(デジタルトランスフォーメーション)時代を迎え、データの収集と利活用のためのプラットフォームを提供する役割が鮮明になってきました。また、「デジタル変革(DX)」と共に、首都圏一極集中の解消のための「地方創生」を重要な日本の社会課題として捉えた事業戦略を推進する所存であります。

 「地方創生」の担い手として重要な役割を果たす当社子会社であるジャパンケーブルキャスト株式会社(JCC)の顧客企業が加盟する一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は、去る6月30日に「2030ケーブルビジョン」を発表しました。JCCは、当社と共に、地域DXの推進を行ってまいります。

 ここで、当社が考える社会のDXの全体像を図2に示します。本図にあるようにデジタル庁がリーダーシップをとって構築されるべき国家情報通信基盤があります。この情報通信基盤を活用して各分野のDXが実行されるべきであると考えます。これらのDXに関わる情報処理は、基本的にはデータセンター内で実行されることとなります。当社グループは、これらの情報通信基盤の中で、国家が構築するものと、民間企業が構築するものに分けられると想定されますが、民間企業が構築すべきデータセンターインフラを先導して取り組んでいく所存であります。そこで重要になってくるのがデータセンターのカーボンニュートラルへの取組です。当社は、新大手町データセンターにおける電力調達を再生可能エネルギーへの転換を図るなど積極的に取り組んでまいります。

 また、国家情報通信基盤と各分野のDXが協調する鍵となるのがAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)ですが、当社データセンター内にはこれらのAPI連携基盤を今後整備し、当社データセンターにおいては、各分野におけるDXの担い手となる、株式会社ヘリックスをはじめ多様性に富んだ多くのSaaS(Software as a Service)事業者との連携を強化してまいります。

 

図2.当社が考える社会のDXの全体像

 

 さて、このようなDXの潮流の中で、そこで、データの集約拠点を担う当社とデータの配信を担うJCCとの連携が益々重要になってきております。このため、当社における、当社グループ事業の全体像としての、3つの事業セグメント、すなわち、①コンピュータプラットフォームセグメント(データセンターサービス、クラウドサービス、ストレージソリューション、サイバーセキュリティ)、②IoT/AIソリューションセグメントエーアイスクエア、GiTV)、③メディアソリューションセグメント(JCC、沖縄ケーブルネットワーク(OCN))の連携を深める所存です。このことによって、これまでの首都圏企業のDXだけではなく、地域DXの担い手として当社グループの事業の方向性を強化したいと考えております。

 コロナ禍によって、テレワークが進行し、ワークスタイルとライフタイルが大きく変化し、物販ECの市場成長によって当社グループの市場拡大が期待されます。その結果、従来にも増して、3つのセグメントに共通して重要度が増しているのが、情報セキュリティです。同分野については、情報漏洩防止ソフトウェアなどで日本オリジナルの技術開発に実績のある当社子会社の株式会社ティーエスエスリンクの事業拡大に取り組んでまいります。

 最後に、今回のデジタル庁の新設を契機として、当社グループは、「行政DX」「企業DX」「地域DX」市場成長のニーズに対応すべく、この潮流を捉えて事業拡大に臨むと共に、尚一層の3つの事業セグメントに共通の情報セキュリティ体制の整備を行ってまいります。

 

2021年9月29日

代表取締役会長兼社長CEO

藤原 洋