藤原洋のコラム -10ページ目

 日本政府は、去る3月21日夜、東京電力管内の電力需給が翌日の22日に非常に厳しく逼迫するとして、「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を初めて発出しました。これは、22日朝から節電に協力するよう企業や家庭に呼びかけるものでした。

●地震による火力発電所への影響
 そもそも、3月16日に福島県沖を震源とした地震によって、一部の火力発電所が停止したことに起因します。当地震は、昨年(2021年)2月13日の地震とほぼ同じ位置、規模で起きましたが、宮城県で震度6強・6弱を観測する所が多く、若干大きな津波も観測されました。気象庁や防災科学技術研究所が地震波を、また、国土地理院が地殻変動を解析した結果によると、昨年2月の震源断層は南側、今回は北側に広がっていました。断層が生じて滑り始めた地点は近くても、滑りが進む方向が反対だったため、今回は北方が強く揺れ、マグニチュード(M)も、昨年の7.3より少し大きく7.4と報告されました。
 当地震の仕組みは、図1に示すように、東北沖の日本海溝では陸側プレートの下に海側プレートが沈み込み続けていますが、摩擦のため、スムーズに動かず、固着している所があり、ひずみが蓄積されます。2011年の東日本大震災を引き起こしたM9地震は、プレート同士の境界が広い領域で面的に一気に滑って起きたものです。昨年と今回の福島県沖地震は、東日本大震災と異なり、頻発するもので、東日本大震災が発生した境界より深い所で、海側プレート内部で押す力が働き、上下にずれるように滑る「逆断層」が生じたものです。

 

図1.福島沖地震(2022年3月16日)の仕組み(気象庁)

 

 気象庁は、東日本大震災後、東北・関東の沿岸や沖合で続発した大きめの地震を余震と発表してきましたが、10年経過した際に余震と呼ぶのをやめました。日本海溝沿いでは震災前からM7以上の地震が時々発生してきた経緯があり、区別できないためです。しかし、M9の大震災時の地震のエネルギーは極めて大きく、影響は続いていると考えられています。
 昨年の福島県沖地震後は、昨年3月20日と5月1日に宮城県沖のプレート境界を震源とする最大震度5強の地震が相次いだと報告されており、政府の地震調査委員会レポートによると、「今後も強い揺れや津波に備えてほしい」とされています。このように東北・関東に代表されるプレート境界型地震は、日本全体で頻発するものと予想されるため、火力発電所をはじめとする発電所の停止は、かなりの頻度で発生するものと想定されます。

●「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」に関わる電力需給状態
 去る3月21日の「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」の発出は、気温の低下が重なり暖房需要の増加が見込まれるためでした。今回の警報制度は、東日本大震災後の2012年につくられたもので、震災後に実施した計画停電の手前の措置として位置づけられています。実際には、電力需要に対する供給余力が3%を下回る見通しになった際に発出することとされています。同警報の発出は、当時見込まれる電力需要に対し、他の電力会社から電力の融通を受けたとしても、必要な供給力を確保できない見通しだったためでした。当日の状況はさらに厳しくなり、節電要請は午前8時から午後11時までで、1都8県の企業や家庭を対象に電力需要の10%程度の節電を求めたものでした。
 供給力不足は、東京電力と中部電力が出資する発電会社「JERA」の広野火力発電所(福島県広野町)6号機など火力発電所6基が復旧していないことに起因しています。また、3月22日は悪天候が重なり、太陽光発電所の発電量も低下しました。
 3月21日夜、説明会を実施した経済産業省によると、11年の東日本大震災後に計画停電を実施したとき以来の厳しい状況に陥ったとのことで、電力の需要と供給のバランスが崩れると、大規模な停電を引き起こす可能性があると説明しました。
 東電は電力の使用量が多い工場設備などを保有する一部企業に対し、すでに個別に節電の要請を始めました。家庭に対しては不要な照明を消し、暖房温度を20度に設定するなどの対策を呼びかけました。


 まとめると、警報の発出は、火力発電所の停止に加え、気温が想定を超えて低下する見通しになったためで、東京電力によると、3月21日午後に最新の気象予測を加味して計算した結果、電力需給が想定以上に厳しくなると予想されためとのことでした。気象庁の発表によると、22日には関東の上空約1500メートルに零下3度以下の寒気が流れ込む影響で、東京の日中の最高気温は5度と予想され、一日中冷え込むこととなると共に、22日朝には関東の南東の海上で低気圧が発生し、東京都心でも降雪がありました。3月22日の実績を図2に示します。

 

図2.(2022年)3月22日時点での電力の需給状態(東京電力)

 

●データセンターの停電対策
 データセンターは、24時間365日稼働することが求められるために、電力会社からの給電が停止した(停電)時には、最初にUPS(Uninterruptible Power Supply、蓄電池で構成)が動作し、約30分のコンピュータ機器の稼働を保証します。UPSがないと、電圧低下・瞬時停電・電圧変動などのさまざまな電源障害が起こり、ハードウェア損傷、データ損失・ファイル破壊などを引き起こし、これらのシステム障害の復旧には膨大な時間と費用を要することとなってしまいます。また、データセンターは、LAN・インターネットなど様々な情報通信機器が導入されており、インターネットと接続されるネットワーク全体のアベイラビリティが重要です。電源異常により、ネットワークシステムが停止すると、物的損害だけでなく、ビジネス機会の損失や信用の失墜など、より大きな問題へと発展するリスクがあるため、UPSは欠かせないものであると言えます。


 次にUPSからの電力供給に続いて、非常用発電機が始動します。通常非常用発電機としては、ガスタービン発電機やディーゼル発電機を利用し、約72時間の連続稼働を保証し、それ以上の連続稼働には燃料の補給体制を確保することとします。また、燃料補給が途絶えるなど72時間以上の燃料補給体制をとることが困難な場合に対応するには、地理的に離れた場所でのDR(ディザスターリカバリー)用データセンターを確保し、常にデータの遠隔保管を準備する対策を行うことが必要となってきます。
 

図3.データセンターの停電対策(JDCC日本データセンター協会)

 

●おわりに
 去る3月21日から3月23日にかけて東京で「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」が、初めて発出されました。その理由は、災害大国の日本らしい3月16日の福島沖での地震による火力発電所6基の停止が原因でした。このような地震は、かなりの頻度で発生するものと想定されます。幸運なことに、当社データセンターへの電力供給の停止はなかったのですが、東京でも何か所かで停電が発生しました。今回の警報を契機に、当社のデータセンターでは停電時でも24時間365日にわたる連続稼働の達成体制の確認を行いました。また、今後は、DR用データセンターの検討を行っていきたいと考えております。


2022年3月31日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋