「何年かけて教員になるべきか」――。

 3日の文部科学相の諮問で、こんなテーマが中央教育審議会で議論されることになった。昨年夏の政権交代以降、教員養成6年制や教員免許更新制の廃止などが浮上したが、教師にとって免許更新は目の前のハードル。6年制には批判が巻き起こり、政権側が「4年制プラスアルファ」とトーンダウンしている。学校現場からは「政策が『猫の目』のようでは混乱する」と嘆息も漏れる。

 「医師や看護師は終身なのに、なぜ教員だけ更新なのか」。北海道の道立高の男性英語教諭(45)は今も更新制反対だ。でも、2009年春から始まった制度では、10年度までの2年間に大学などが開く講習を計30時間受けないと免許が失効する。講習料金約3万円は自腹だ。

 政権交代後「更新制廃止論」も浮上し期待はしたが、見直されるとしても時期は不透明。昨年は夏期講習の指導などで全く受講できなかった男性は、「この夏はどんなに忙しくても受講しないと」とぼやく。

 何のための講習なのか疑問に感じる教師は多い。

 東京23区の区立小学校に勤める女性養護教諭(43)は、各地の大学の講習内容を1週間かけて比べ、現場で役立ちそうだと、看護大でけがの応急措置などの講習を受ける予定だ。だが、教職に関する基本的な講習は「区や都の研修を日頃から受けている。できれば受けたくない」と思う。

 美術大学の通信制講習を選んだ別の区立中の男性美術教諭(53)は、今後2年かけ、夜間や休日に自宅で美術教育のテキストを読み込んでリポートを提出する予定で、「制度が朝令暮改では現場は混乱するだけ」と淡々と話した。

 受講者を見込んで設備投資をした大学側も戸惑う。

 約5000万円をかけ、教師がインターネットを通じて在宅で講習や試験を受けられるシステムを開発した桜美林大(東京)では、昨年夏の東京都議選で、更新制に批判的な民主党が大勝してから申し込みが激減したといい、09年度の受講は延べ1200人にとどまった。担当者は「忙しい教員の負担を軽くしようとシステムを導入したが、更新制がなくなったら本来の目的が失われる」と漏らす。

 2年前「教員免許センター」を設立し、今年度も約90の講習を開く埼玉大。加藤泰建(やすたけ)センター長(63)は「10年、20年と続く制度と思い講習内容を充実させてきたが、先が読めなくなった」と困惑する。

 一方、教員養成期間の延長については、学費も含めて負担が重くなり、志願者が減って質が落ちる、との批判が強い。将来、教師となることも考えている早稲田大教育学部2年の佐々木彩香さん(19)は「学部の4年に加え大学院2年が必要になれば、あきらめるかもしれない。給付型の奨学金を受けられるような環境を整えてほしい」と話す。

 これまで2~4週間程度だった教育実習の長期化も、中教審で議論になる。東京の区立中校長(58)は、学生の間には経験を積む機会は多い方がいいという声があるのを認めつつも、「学校側の負担が大きすぎ、とても受け入れられない」と疑問符を付けた。

 ◆教員免許更新制=教員免許に10年の有効期限を設け、更新にあたって講習を義務付けることで最新の知識・技能を取得させようと自民党政権時代の2009年に導入された。当初は不適格教員排除のためとされたが、制度化にあたり質の向上に目的が変わった。対象は毎年約9万人。

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