若き日を過ごした所を訪れて見ると、その当時の事が色々と思い出されます。
若かったあの頃、不器用だったあの頃、でも精一杯やっていたあの頃が
懐かしく思えて来るのです。
封印していた記憶が鮮やかに蘇り、若かったあの頃を思い出した私。
そして30数年ぶりに、思い出の地に向かったのでした。
それは3月下旬、桜の咲く季節でした。ちょうど新型コロナが騒がれ始めた頃です。
最初はどうしようか迷いましたが、この機会を逃すと一生行けない様な気がして
思い切って行く事にしました。
電車に揺られ、やがて電車は懐かしの駅へ。
30数年ぶりの駅前は、再開発ですっかり景色が変わっておりました。
大きな駅ビルができ、よく行った商店街などはもうありませんでした。
「無理もないな~、あれから時は流れたんだから」
つい、そんな独り言をつぶやいてる自分がいました。
私は、マスターの喫茶店があった所へ行ってみる事に。
もうそこは昔の面影など、まるで残ってはいませんでした。
何軒ものお店が連なり、もう別世界と思うほどです。
そこを過ぎ、私は桜並木の通りに。満開の桜は、あの頃と全く変わってませんでした。
絵美と、たった1シーズンだったけど、一緒に歩いたこの道。
絵美を亡くして沈んでいた私を引っ張り出し、ここを歩きながら一生懸命
励ましてくれた由美。
目を閉じると、頭の中にあの頃が鮮やかに映し出されます。
絵美の誕生日に手鏡を渡した、そして彼女の過去を受け入れて抱きしめた
夜景が綺麗だった丘。
今では整備されて公園に。あの頃とはだいぶ様変わりしてましたが
ベンチに座り、街の方を見つめると、あの日の事がつい昨日の様に
思い出されます。
海の見える公園に行ってみました。家族連れやカップルに人気の所だそうです。
私は海の方を向いて、静かに目を閉じてみました。
ここは由美と初めてKISSした場所。彼女が大学に合格した時、お祝いは何がいい![]()
と、聞いた時、ここへ来て「KISSして
」と言われ、驚いた自分を思い出しました。
若かったあの頃、不器用だったあの頃、でも精一杯自分なりにやっていたあの時が
一番輝いていたのかもしれません。
私はふと、ある思いが頭をよぎりました。
ここまでせっかく来たのだから、絵美のお墓参りに行ってみようかと。
しかし、30数年も立って今更お墓参りに行ったとしても、
絵美の怒りを買ってしまう感じもしないでもありませんでした。
でもやっぱり行ってみよう
私はそう思い立って絵美のお墓参りに行く事にしたのです。
花を買い、私はお墓に向かいました。
そこで私は、信じられない光景を目にする事となったのです。
~愛を抱きしめてきたけれど
愛に流されて失くすものばかり
あなたと生きてきた季節が鮮やかに
胸の奥でよみがえる
いつか忘れてね すべて忘れてね
二人作った思い出さえ~
岡村孝子 「あなたと生きた季節」 より