こんにちは。せいじょう鍼灸院の草野です。
前回は、私自身の50代の話でした。
今日はまた、訪問の現場に戻ります。
訪問先で、いちばんよく聞く言葉があります。
「腰が痛くて」です。
肩でも膝でもなく、腰。
これは私の訪問先に限った話ではないようです。
国が2025年に行った、国民生活基礎調査という大きな調査があります。
体のどこかに自覚症状がある人に、その症状を聞いたものです。
いちばん多かった症状は、男女ともに腰痛でした。
男性では1000人あたり85.9人。女性では100.8人。
65歳以上に限ると、1000人あたり162.9人。
およそ6人に1人が、腰の痛みを訴えている計算になります。
ここまでは、数字の話です。
現場で私が気になっているのは、その先です。
「腰が痛い」と言われたとき、そこで話が終わってしまうことが多い。
ご本人も、ご家族も、そして正直に言えば、以前の私も。
「年のせいだから」で、腰の話はそこで止まります。
でも、腰が痛い、という一言の中身は、人によってずいぶん違います。
朝、起き上がるときだけ痛むのか。
座っている時間が長くなると痛むのか。
体を起こしてもらうときに痛むのか。
歩き出しがつらいのか、歩いているうちに楽になるのか。
夜、横になっていても痛むのか。
同じ「腰が痛い」でも、中身が違えば、見るところも違ってきます。
だから最近は、腰が痛いと聞いたら、その先を聞くようにしています。
いつから、どの動作で、どのくらい。
聞いてみると、思っていた場所と違うことが、よくあります。
腰だと思っていたら、お尻に近いところだった。
腰そのものより、同じ姿勢が続いたあとの立ち上がりがつらかった。
ご本人も、聞かれてはじめて、そう言えば、と気づかれることがあります。
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。
腰の痛みの中には、私のような鍼灸師が見るべきではなく、
先に整形外科で診てもらってほしいものがあります。
日本整形外科学会が、受診の目安を出しています。
安静にしていても痛みが軽くならない。
だんだん悪くなっている。
熱がある。
足がしびれる、力が入らない。
尿が漏れる。
こうした症状が一緒にあるときは、自分で様子を見ずに、
すみやかに整形外科を受診するように、と書かれています。
それともう一つ、ご高齢の方で私が特に気にしているのが、
転んだあと、あるいは、くしゃみや尻もちのあとに急に痛くなった腰です。
背骨の骨折が隠れていることがあります。
ご本人は「ちょっとひねっただけ」とおっしゃることが多いのですが、
いつからか、何かきっかけがあったかは、必ず聞くようにしています。
そして、心当たりがあれば、まず病院で診てもらうようにお伝えしています。
ここは、鍼灸の出番ではありません。
では、そうした心配がない腰痛には、何をしているのか。
私にできるのは、大きなことではありません。
話を聞いて、体に触れて、どこがどう硬いのかを一緒に確かめる。
痛くない動き方、起き上がり方を一緒に探す。
そのくらいです。
腰痛の診療の指針では、原因が特定しにくい腰痛については、
じっと安静にしているより、できる範囲で体を動かし続けるほうがよい、とされています。
ご高齢の方の場合、痛いから動かない、動かないから弱る、弱るからまた痛い、
という順番になっていくことを、現場で何度も見てきました。
腰の痛みそのものより、動かなくなることのほうが、私は心配です。
だから、「腰が痛くて」と聞いたら、そこで終わらせない。
その先を、もう少しだけ聞く。
いまのところ、私にできるのはそこまでです。
最後に、もう一つ。
訪問先で腰が痛いのは、ご本人だけではありません。
体を起こしたり、支えたりしているご家族の腰の話は、
また別の回で、ちゃんと書こうと思っています。
また書きます。
訪問の範囲やご相談は、こちらから。
