5月以来となります「続・20世紀のロックアルバム」のコーナー。今回は、90年代のロック・シーンを代表する鬼才、ベックの名作を取り上げます。

 

Odelay / Beck
96年発表

曲のクレジットではベック・ハンセンとなってますが、アルバムのクレジットは単にベックとなっています。ロスアンゼルス生まれの白人ソロ・アーティスト。93年にインディ・デビューを果たし、94年にメジャーからアルバムをリリース。ここに収録された"Loser"が、オルタナ・チャートの首位に輝き、一躍その存在を知られることになります。

そして、96年に発表されたメジャー第2弾となるこのアルバムで、絶大な評価を得るに至りました。カントリー、サイケデリック、パンク、エレクトリック、ブルーズ、ソウル、ヒップホップ、ラテン等、あらゆる音楽要素を融合したそのサウンドは、新たな時代のロックの姿が提示されたようでした。

このアルバム、最初に聴いた時は、なんか取っ付きにくかったのですが、聴き込むにつれ、その音楽性の深さに惹き入れられて行きました。ライヴ・パフォーマンスもメチャ格好いいシンガーです。(18年のサマー・ソニックでナマを拝することができました。)

① Devil's Haircut
アルバムの冒頭を飾る①は、彼の代表曲の1つ。印象的なイントロのギター・リフと妖しげなテンポの歌部分、さらにその合間に入るアヴァンギャルドなサウンドが絶妙にミックスされたナンバーです。ライヴ映像でどうぞ。


② Hotwax
③ Lord Only Knows

カントリー・ブルーズ風のイントロから始まる②でも、所々にエレクトリック・ノイズを織り込み独特の雰囲気を醸し出しています。冒頭シャウトで始まったかと思ったら、長閑なカントリー・ナンバーへと移行していく③では、アルバム・タイトルが連呼されますので、一種のアルバム・タイトル・ナンバーと言って良いでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=x_I5so_Ct3s

④ The New Pollution
テンポの早いファンキーな④は、歯切れの良いリズム感で突き進んでいくナンバー。シングル・カットもされています。
https://www.youtube.com/watch?v=uxugaMpt1vU
 

⑤ Derelict
⑥ Novacane
⑦ Jack-Ass

アフロ感たっぷりの抑制的なナンバーの⑤、電気処理されたヴォーカルをフィーチャーしたヒップホップ・ナンバーの⑥と、音楽性はさらに拡がりを見せます。一転して穏やかな雰囲気に包まれる⑦はプログレ的な感触もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=2HMhfdfxR98

⑧ Where It's At
⑨ Minus

ブラック・ミュージック風のエレクトリック・ピアノが印象的な⑧に続いて、⑨では性急なパンク・ロック・サウンドへと展開していきます。破壊力抜群です。レコードを上回る熱量を感じるライヴ映像でどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=QH98B3HdhUk

⑩ Sissyneck
⑪ Readymade
⑫ High 5 (Rock the Catskills)
⑬ Ramshackle

⑩もカントリー風の曲調ながら、サウンドはかなりエレクトリックな処理がなされています。ミニマルな雰囲気の⑪も不思議な雰囲気を持ったナンバー。再びヒップホップ・サウンドで攻めて来る⑫へと展開し、ラスト⑬ではゆったりとした夢見心地の雰囲気でアルバムを締めくくります。


ある意味、掴みどころないサウンドと言えなくもないですが、それでいて統一感は保たれている、聴けば聴くほど味の出て来る作品でした。