ポール・ウェラーがソロとしては17枚目となる新作を発表しました。66歳になる前日にリリースされたアルバムのタイトルは"66"。自分の歳をタイトルとしたことに、並々ならぬ意欲を感じましたし、実際、そのサウンドを聴くとその意欲がうまく作用したように感じました。

 

66 / Paul Weller
24年発表

前作"Fat Pop (Volume 1)"から3年のインターヴァルを経ての新作。前作のタイトルからVolume2が来るのかと思っていたら、このタイトルで出して来ました。ここのところ、ウェラーらしさを感じる作品が続いていながら、並みの上といった感じでしたが、今回は久々の傑作となりました。個人的には08年の"22 Dreams"以来と思われる、刺さって来た作品でした。

モッズ系のテンポの良い曲、ブラック・ミュージック風の曲、アコースティックなバラード・ナンバーと、これまでのウェラーのサウンドを総括するような、ヴァラエティに富んだ内容。同年代(2つ年下)の私にとっても、とってもしっくりと来るサウンドでした。

ゲストには、ノエル・ギャラガー、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピー、マッドネスのグラハム・マクファーソンらが参加しており、バースデイ・パーティのような賑わい。盟友、オーシャン・カラー・シーンのスティーヴ・クラドックも全面的にではありませんが4曲に参加しています。

【収録曲】
 ① Ship of Fools
 ② Flying Fish
 ③ Jumble Queen
 ④ Nothing
 ⑤ My Best Friend's Coat
 ⑥ Rise Up Singing
 ⑦ I Woke Up
 ⑧ A Glimpse of You
 ⑨ Sleepy Hollow
 ⑩ In Full Flight
 ⑪ Soul Wondering
 ⑫ Burn Out

 
個人的には現時点でのベスト・トラックと思っている②"Flying Fish"。テンポの良いリズムに心に沁みるメロディを乗せたハード・ポップ・ナンバーです。
https://www.youtube.com/watch?v=wDW_RCJ6hs0

ホーンも導入されたパワフルなロック・ナンバーの③"Jumble Queen"は、ギャラガーとの共作。冒頭3曲でこのアルバムへの期待がさらに膨らみました。ジュールス・ホーランドのTVショーの映像がありました。クラドックもしっかりサポートしています。


フィリー・ソウル風の流麗なストリングスが印象的な⑥"Rise Up Singing"は、このアルバムから2枚目のシングル・カットとなっています。ザ・ブロウ・モンキーズのドクター・ロバートらとの共作。ウェラーもじっくりと歌い込んでいます。
https://www.youtube.com/watch?v=MIuoyhvnQuY

ピアノをフィーチャーしたミドル・テンポの⑧"A Glimpse of You"は、60年代後半のソフトロックを思い出させる曲調。ウェラーの余裕を持った歌いっぷりで、穏やかな気持ちにさせてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=DZClTG7jgUw

ラスト・ナンバーの⑫"Burn Out"は、ピンク・フロイドを思わせるような浮遊感溢れるナンバー。ラストを盛り上げるに相応しいナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=4ivg6zQb-jU


近年のアルバムと大きな違いはないように思うのですが、久々にウェラーらしさが随所に感じられる、質の高い作品だと思います。