ボブ・ディランの全曲訳詞に挑戦中、「ディラン日記」のコーナー。ブートレッグ・シリーズも第3集に入り、"Desire"録音時にまでやって来ております。今回は、前回に引き続き同アルバムからのアウトテイクです。

 

Catfish
"The Bootleg Series Volumes 1-3 (Rare & Unreleased) 1961-1991"(1991)収録

タイトル名は直訳するとナマズですが、これは60年代後半から70年代前半にかけてMLBで活躍したキャットフィッシュ・ハンターというピッチャーのこと。アスレチックスとヤンキースに在籍し、71年から75年の5シーズン連続で20勝をあげ、74年には25勝をあげています。75年に歌詞に出て来るフィンレイー氏がオーナーであるアスレチックスからヤンキースに移籍しています。ちょうど"Desire"が録音されていた時期のこと。引退後はノースカロナイナ州ハートフォードに農園を持ったそうですが、既にそのような事が歌われてます。

"Desire"ではディランとジャック・レヴィの共作が多く収録されていますが、これもその1つで、レヴィが中心となって書かれた曲のようです。確かにディランが野球をテーマした曲を書いたことはなかったように思います。

曲は典型的なブルーズ・ナンバー。エリック・クラプトンが参加したテイクもあったそうですが、ここではエリック・フランドセンがスライド・ギターで、シュガー・ブルーがハーモニカで参加しています。アルバムの雰囲気に合わなかったことでアウトテイクとなったものと思われます。

ジョー・コッカーが76年の"Stingrey"でカヴァーしているようです。

まずはディランのHPで原詩を確認下さい。
https://www.bobdylan.com/songs/catfish/

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けだるいスタジアムの夜
キャットフィシュがマウンドに
「3ストライク」審判が言う
バッターは戻って座らされる

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない

フィンレイ氏の球団で働いてた
だが老人は払おうとしなかった
それでヤツはグローヴを詰めて腕をつかんだ
そしてある日ヤツは逃げ去った

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない

ヤンキースのいるところに現れ
ピンストライプのスーツに身を包み
特製の葉巻を吸う
ワニ革のブーツを履き

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない

カロナイナに生まれ育ち
小さなウズラを狩るのが好きだった
100エーカーの土地を持ち
販売用の猟犬を持つ

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない

レジー・ジャクソンがバッター・ボックスに
カーヴしか狙っていない
スイングは速すぎたり遅すぎたり
キャットフィッシュが投げるモノに喰らいつく

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない

ビリー・マーチンでさえ苦笑い
ザ・フィッシュがゲームに出る時は
毎シーズン20勝
野球の殿堂入り間違いなし

キャットフィッシュ 百万ドルの男
誰もキャットフィッシュのような球を投げられない
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まずはコッカーのヴァージョンをお聴き下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=YCh9XCvYOxA

続いてディランのヴァージョンをお聴き下さい。