3月以来となります「20世紀のロックアルバム」。今回は90年代の作品をピックアップしました。ウェールズ出身で、現在もコンスタントに作品を発表し続けている、マニック・ストリート・プリーチャーズのデビュー・アルバムです。

 

Generation Terrorists / Manic Street Preachers
92年発表

86年にジェームズ・ディーン・ブラッドフォード(vo,g)、ショーン・ムーア(dr)、ニッキー・ワイアー(b)らにより結成。88年に自主制作のシングルを発表した後、リッチー・エドワーズが加入し4人編成となります。91年にインディ・レーベルからデビュー・シングル、"Motown Junk"を発表します。「30曲入りの2枚組デビュー・アルバムを発表し、世界でNo.1にした後、解散する」といった、とんでもない宣言をしてしまいました。

続いて発表した"You Love Us"を発表した後、音楽雑誌のインタビューで批判的なインタビュアーに対して、エドワーズが腕に"4 Real"とカミソリの刃で切り刻んで大怪我を負うという衝撃的なエピソードを経て、メジャーのソニーと契約。ヴィニール盤では2枚組だったようですが、CD1枚の収録時間の上限に近い77分18曲入りのデビュー・アルバムを92年に発表しました。残念ながら本国UKでも13位どまりだったようですが、90年代を代表するUKバンドとしてはまずまずのスタートであったようです。

個人的には、デビュー当時、全くフォローしていなかったバンドですが、00年代に入ってから彼らの新作アルバムを聴いて、これはいいなと思い、遡って90年代のアルバムを聴いていく中で、極めて自分好みのサウンドあることに遅ればせながら気づいた次第です。


① Slussh N' Burn
記念すべきデビュー・アルバムのオープニング・ナンバー。歯切れの良いギターのイントロで始まるテンポの良いナンバー。ドライヴ感もあるサウンドと、親しみ深いメロディが気持ちの良い曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=b8a1WEjLqUw

② Nat West-Barcleys-Midlands-Lloyds
③ Born to End
④ Motorcycle Emptiness

ややヘビメタ感のある②ですが、ブラッドフォードの突き抜けるようなヴォーカルで王道ロックの貫禄を感じます。③でも冒頭からの勢いを落とすことなくズンズンと突き進んで来ます。そして、彼らの代表曲にして、個人的には90年代ロックを代表する1曲と思っている④。何度聴いても心に沁みます。


⑤ You Love Us
前述のメジャー契約前のシングル・ナンバーの⑤。こちらもドライヴ感溢れるノリの良いサウンド。私が唯一見た10年の来日公演のオープニング・ナンバーでもありました。
https://www.youtube.com/watch?v=f6ZsxGd_v-g
 

⑥ Love's Sweet Exile
⑦ Little Baby Nothing

ここでややペースを落としてアコースティック・ギターが入ったと思ったら、ブレイクの後、これまた小刻みなリズムで盛り上げて来る⑥。シングル・カットもされた⑦には、なんとUSのポルノ女優、トレイシー・ローズがヴォーカルで参加しています。曲自体はハードポップ系の親しみ易いナンバー。
https://www.youtube.com/watch?v=wM3N54avEQc

⑧ Repeat (Stars And Stripes)
⑨ Tenessee
⑩ Another Invented Disease

⑪ Stay Beautiful
一転、打ち込み系のヒップホップ系のサウンドが展開する⑧も高揚感を煽るようなナンバー。再びハードなギター・サウンドが炸裂する⑨が続きます。さらにヘビメタ風のギターとボ・ディドリー風のリズムがミックスされた⑩が流れ、勢いはまだまだ止まりません。アルバムから最初のシングル・カットとなった⑪も、ドライヴ感のあるハードポップ・ナンバー。メロディがしっかりしているところが、このバンドの魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=hM_oov3dU6A
 

⑫ So Dead
⑬ Repeat (UK)
⑭ Spectators of Suicide
⑮ Damn Dog

後半に来ても勢いは止まりません。⑫もスピード感溢れるナンバー。⑬は⑧のパンク・ヴァージョンと言って良いでしょう。⑭でようやくスローダウンして、ミディアム・テンポのナンバーが登場して来ます。とはいえここまでのパワーは十分に持続されています。リズムを強調した⑮は2分未満の曲で、アルバムの流れ的にはアクセントを与えています。

⑯ Crucifix Kiss
⑰ Nethadone Pretty
⑱ Condemned to Rock 'N' Roll

そして⑯はラスト・スパートと言った感じで、スピード感のあるナンバーを繰り出して来ます。⑰でもヘビメタ風のギター・リフを鳴らしながら、メロディックな旋律を奏でます。ラスト・ナンバーの⑱は、ゆったりとした曲調ながらブラッドフォードのパワフルなヴォーカルが印象深い、アルバムの締めくくりに相応しい1曲。


エドワーズは3rdアルバム発表後、失踪してしまい、その後死亡宣告がなされますが、これらデビュー当時の映像を観ていると、ヴィジュアル的に非常に重要な存在であったと感じます。

現在もエドワーズを除く3人だけで活動を続けており、息の長いバンドとして、UKロック・シーンを支えています。