「続・20世紀のロック・アルバム」ゆるゆると進めておりますが、ひと月に1回では10年近くかかってしまいますので、少しスピード・アップしていきたいと思っておりますが、どうなりますことやら。今年2枚目のこのコーナー、ザ・フーの2枚組アルバムをピックアップいたしました。

 

Tommy / The Who
69年発表

2ndアルバム以降、組曲形式のナンバーを収録してきた彼らですが、彼らにとって4枚目となるこのアルバムで、ピート・タウンゼンドが創作した、三重苦の少年トミーが名声を得て教祖となるも、最終的に信者たちが離れて行くというストーリーを、アルバム2枚を通して24曲で歌い語っていく作品でした。当時「ロック・オペラ」ということで、大きな話題になりました。

さらに、75年にはこれを映像化。ヴォーカリストのロジャー・ダルトリーが主役のトミーを演じ、エリック・クラプトン、ティナ・ターナー、エルトン・ジョンといった豪華ゲストも出演した作品でした。私はこの映画が最初にこの作品に出会ったメディアとなりました。色彩やセットもド派手で強く印象に残りました。この中で、"Pinball Wizard"のシーンで、ダルトリー以外の3人の演奏が短いながら見られるのですが、スゲェなぁと思いました。

サウンドの方も彼らの演奏力の高さを感じさせ、曲自体も彼らのライヴの定番となった曲も多く、いろんな意味で、ザ・フーの評価を大きく高めた作品でありました。


① Overture
アルバムのオープニングはインストゥルメンタル・ナンバーで始まります。これから登場する曲のサワリをつなげたナンバー。アルバムではベーシストのジョン・エントウィッスルによるフレンチ・ホルンがフィーチャーされていますが、今回はギター・バンド・サウンドによるライヴ映像でご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=ce2Bc3lGG7c
 

② It's a Boy
③ 1921
④ Amazing Journey
⑤ Sparks

父が第一次世界大戦で戦死した(と伝えられた)後に、②で主人公トミーが生まれます。しかし、③のタイトルにある1921年に父が生きて戻ってきます。ところが、トミーの母は別の男とつきあってました。父はその男を殺していまいますが、トミーはその様子を鏡を通して観てしまい、両親から「お前は何も見ていない、聞いていない」と強く言われ、これかきっかけとなり、トミーは見ざる聞かざる言わざるの三重苦になってしまいます。そんな世界に入ってしまったトミーの心証を表現したかのようなナンバーが④⑤と続きます。⑤はインストゥルメンタル・ナンバー。続けてご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=tVwSlb01H50

⑥ Eyesight to the Blind (The Hawker)
A面ラストでは、三重苦となったトミーを両親はカルト教団を訪れ救いを求めます。映画ではクラプトンが教祖となって、マリリン・モンローの巨大フィギュアの前でギターを弾きながら歌ってました。オリジナルはサニー・ボーイ・ウィリアムソンIIが51年に発表したブルーズ・ナンバー。

⑦ Christmas
⑧ Cousin Kevin
⑨ Acid Queen

ここからB面に入ります。クリスマスが来ても何の反応もないトミーの様子が歌われます。ここで、このアルバムで随所に登場する"See Me, Feel Me"のフレーズが登場します。トミーの子守を頼まれた、いとこのケヴィンが⑧で登場してトミーを虐待します。作はエントウィッスル。続いてトミーは薬物治療を行うジプシー女のところへ連れていかれます。その様子を歌ったのが⑨。映画ではターナーがド迫力で歌ってましたが、今回はワイト島のライヴ映像でお楽しみ下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=wQ7x865C8y0

⑩ Underture
B面ラストの⑩では、上記の治療でトミーが体験した世界がインストゥルメンタル・ナンバーで表現されます。


⑪ Do You Think It's Alright?
⑫ Fiddle About
⑬ Pinball Wizard

C面に入ると、今度はアーニーおじさんに預けられますが、性的虐待を受けてしまいます。⑪⑫でそんな状況が歌われます。⑫もエントウィッスル作。そして、突如⑬でピンボールの才能を開花させ、チャンピオンに勝利し、世に知れ渡るようになります。映画ではその打ち負かされるチャンピオンをエルトン・ジョンが演じています。モノクロ映像ですがビートクラブ出演時の映像をご覧下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=288cvHTOn_k

⑭ There's a Doctor
⑮ Go to the Mirror!
⑯ Tommy Can You Hear Me?
⑰ Smash the Mirror
⑱ Sensation

有名になった彼に治療を施そうと医者が現れますが、いっこうに状況は変わりません。そして母親はトミーが向き合っていた鏡を割ってしまいます。⑭~⑰でそんな様子を歌った後、突如、⑮でトミーは全ての障害を克服し、教祖としてセンセーショナルに世界に迎え入れられます。ここは映画の映像でお楽しみ下さい。ハングライダーで空を飛ぶダルトリーの姿は、まさにセンセーションでした。
https://www.youtube.com/watch?v=B4vW7iNAQ54

⑲ Miracle Cure
⑳ Sally Simpson
㉑ I'm Free
㉒ Welcome
㉓ Tommy's Holiday Camp
(24) We're Gonna Take It

そしてラストのD面では、新たな宗教と教祖として活躍する姿や、彼を信奉する人のことが⑲~㉓で歌われていきます。㉓はキース・ムーン作の彼らしいふざけたナンバー。ところが、彼らの修業は万人には受け入れられないもので、信者たちは彼のもとを離れていき、結局、また彼は孤独な存在に戻って行きます。その様子がラスト・ナンバー(24)で歌われます。終盤にはこのアルバムのテーマである、"See Me, Feel Me"のフレーズが登場し、アルバムは幕を閉じて行きます。彼らのライヴでも定番となった曲でした。ワイト島のライヴ映像でお楽しみ下さい。



ロック・オペラという新たなジャンルを生み出した、ロック史に残る名作として、大きな衝撃を与えた作品でした。