ボブ・ディランの全曲訳詞に挑戦中、「ディラン日記」のコーナー。"Bootleg Series Vol.1"が昨年内に終えることができませんでしたので、年が変わっても続けさせていただきます。今回も"The Times They Are A-Changin'"のアウトテイク。今回はトラディショナル・ナンバーです。

 

Moonshiner
"The Bootleg Series Volumes 1-3 (Rare & Unreleased) 1961-1991"(1991)収録

"Moonshiner"とは密造酒を作る人のこと。禁酒法時代に隆盛を極めた男が、禁酒法が廃止されたことで、生活の糧を失った状況を描いた曲と思われます。このトラディショナル・ナンバーは、アイルランドやアメリカで歌われて来た曲で、37年にアラン・ロマックスらの手によって、初めてレコーディングされたものです。

この曲をディランは、当時の典型的なスタイル、すなわちギターの弾き語りに、イントロと間奏にハーモニカを挟んでいます。途方に暮れる男の様子を、悲しげにゆっくりと歌っています。

まずは原詩をディランのHPでご確認下さい。
https://www.bobdylan.com/songs/moonshiner/

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オレは密造酒を作って来た
17年もの長い間
金はみんな使い果たした
ウィスキーとビールに
からっぽになった所へ行って
スチルに座る
ウィスキーがオレを殺さないなら
何がどうなるかわからない

あるバーへ行って
ダチたちと飲む
女たちが追って来れない所で
オレが費やしたモノを見る
神よ女たちにご加護を
女たちがオレのものだったなら
彼女たちの吐息は甘い
つるに絡まる露のように

腹が減ったら食わせてくれ
喉が渇いたら飲ませてくれ
オケラになったら1ドルを
死ぬときには宗教を
この世界はみなボトル
でも人生はほんの一口
ボトルがカラになったら
確かにけなす価値もない
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それでは曲をお聴き下さい。