アメリカのルーツ・ミュージックへの探求を続ける2人の大物アーティストが、この度、コラボ・アルバムを発表しました。タジ・マハールライ・クーダーが、アコースティック・ブルーズの伝説的コンビ、ソニー・テリー&ブラウニー・マギーの曲をアルバム全編にわたりカヴァーしています。

 

Get On Board: The Songs of Sonny Terry & Brownie McGhee / Taj Mahal & Ry Cooder
22年発表

65年から66年にかけて、マハールとクーダーの2人はライシング・サンズというグループを結成しており、録音にまでこぎつけたようなんですが、結局、彼らのアルバムは発売されずに終わりました(92年に発掘されてリリースされましたが)。

その後、マハールはソロ活動を開始し、マハールの68年のデビュー・アルバムにクーダーが参加。意外な感じがしましたが、今回のコラボ・アルバムはそれ以来の共演とのことです。その後、マハールはブルーズ・ミュージシャンとして活躍して来ました。ロック・ファンにはザ・ローリング・ストーンズのテレビ番組"Rock And Roll Circus"に、ジェシ・エド・デイヴィスを引き連れて参加したことでも知られています。

一方の、クーダーは、その後、キャプテン・ビーフハートのバンドに参加。さらにセッション・ミュージシャンや映画音楽ライターとして活動。こちらもストーンズの69年のアルバム"Let It Bleed"に参加。ストーンズがクーダーのフレーズを盗用するという事件もあったようです。70年にソロ・デビューし、ロック界にルーツ・ミュージックを大胆に取り入れる作風で、独特の存在感を示して来ました。

今回、彼らが取り上げたテリー&マギー。ハーモニカ奏者のテリーとギタリストのマギーは、それぞれソロ・アーティストとして活動をしてきましたが、39年以降活動を共にするようになります。戦後のフォーク・リヴァイヴァル・シーンで高い評価を受け、全米にその名を轟かせます。若き日のマハールやクーダーも、大変気に入っていたそうです。そんなわけで、今回のアルバム、2人にとって原点回帰的な意味合いもあるようです。

参加ミュージシャンは2人の他、クーダーの息子、ヨアキム・クーダーがドラムで加わり、3人だけのシンプルな編成。しかしながら、ルーツを極めた2人が奏でるサウンドは、深みと重みがあり、テリー&マギーの存在を知らなかった私の耳にも、強烈に訴えて来るものがありました。

収録曲は以下の通り。 
① My Baby Done Changed the Look on the Door
② The Midnight Special
③ Hooray Hooray
④ Deep Sea Diver
⑤ Pick a Bale of Cotton
⑥ Drinkin' Wine Spo-Dee-o-Dee
⑦ What a Beautiful Day
⑧ Pawn Shop Blues
⑨ Cornbread, Peas, Black Molasses
⑩ Packing Up Getting Ready to Go
⑪ I Shall Not Be Moved 


このアルバムの発売元であるノンサッチ・レコーズのYouTubeチャンネルに、応接間みたいなところで3人が演奏している映像がいくつかありましたので、ご紹介いたします。

まずは③の"Hooray Hooray"


続いて、⑤の"Pick a Bale of Cotton"
https://www.youtube.com/watch?v=bnN3kgtKopw

さらに、⑨の"Cornbread, Peas, Black Molasses"。molasseとは糖蜜のことだそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=UokmuQJqGks

そしてラスト・ラスト・ナンバー⑪の"I Shall Not Be Moved"です。
https://www.youtube.com/watch?v=i0njBe_5Qn4


自分にとっては全く新しい世界でしたが、今年を代表する1枚ではないかと思うくらい、現代的にも十分に聴き応えのある作品でした。