オリジナル・メンバーが2人だけとなってしまった、ザ・フーですが、04年には初の来日公演を行い、06年にスタジオ・オリジナル・アルバムを発表し、ファンに過ぎ去った夢を見せてくれました。その後も、単独来日公演や、スーパーボウルのハーフタイム・ショー出演、アルバム「Tommy」の再現ライヴなど、ライヴ活動を活発に展開しておりました。
ただ、06年の新作が、それほど面白くなかったこともあって、新作を聴くことは、もうないのかなぁと思っていたのですが、やはり彼らは違います。今年、13年ぶりの新作を発表してくれました。
そんな彼らの心意気を感じて、2019年のラスト記事は、このアルバムを取り上げさせていただきました。
WHO / The Who
19年発表
アルバム・タイトルは、世界保健機関かと思うような、グループ名を大文字表記したものでした。確かに彼らには、セルフ・タイトルのアルバムがこれまでなかったので、ここに来て、これを持って来たのは、ある意味アリなのかなぁと思っております。
今回のアルバム、06年の前作と違って、60~70年代の全盛期の彼らを彷彿とさせる内容で、これがザ・フーなんだという、2人の高らかな意思表明であると感じました。10年代の終わりにこのようなサウンドを聴かせてくれたことに、心から感謝しております。
それにしても、懐メロ番組で東海林太郎が歌うのを見ていた時に、歳とっても声ってかわらないんだなぁと思ってはいたのですが、今回のロジャー・ダルトリーの張りのあるヴォーカルの力強さには、ビックリしてしまいました。70年代のお蔵入り音源と言われても、信じてしまいそうな勢いです。それに絡むピート・タウンゼンドのギターも饒舌で、切れがあり、本当に70年代に真空パックされた彼らを解凍して出して来たのではと思える出来でした。
サポート・メンバーには、ジョン・エントウィッスル亡き後、彼らをサポートして来た、ピノ・パラディーノや、キース・ムーンにドラムを教えられたザック・スターキーも参加して、ガッチリとザ・フー・サウンドを支えています。
① All This Music Must Fade
オープニングからダルトリーのヴォーカルがフルスロットルで攻めて来ます。アコースティック・ギターを絡めたリズムのノリも良く、彼らの健在ぶりを力強く訴えるナンバーとなっています。
② Ball And Chain
③ I Don't Wanna Get Wise
冒頭ややおとなしめの②ですが、グイグイ盛り上がって来て、ハード・ロック・ナンバーへと転換して来ます。60年代の彼らを思わせる、ポップなメロディが印象的な③は、個人的には今回のベスト・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=0X0TX-vyxSU
④ Detour
バンドの前身となったバンド名を思い出させるタイトルの④は、"My Generation"と"Magic Bus"を融合したような雰囲気。
https://www.youtube.com/watch?v=mITPKXD4VZA
⑤ Beads on One String
⑥ Hero Ground Zero
シンセのオープニングに導かれる⑤は、牧歌的な雰囲気のナンバー。サビにかけて、曲のスケールがどんどん大きくなって来ます。ストリングスも導入された⑥は、"Baba O'Riley"のような、ダルトリーの自信溢れるヴォーカルが楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=glhe17DqhR0
⑦ Street Song
⑧ I'll Be Back
なんとなく懐かしさを感じる⑦は、70年代後半から80年代前半を思わせるナンバー。音処理の関係でしょうか、MTV全盛時代にありがちな音の感触です。⑧は、タウンゼンドがヴォーカルを担う、バラード・ソング。
https://www.youtube.com/watch?v=vP6LPjmHIPc
⑨ Break the News
⑩ Rockin' in Rage
⑪ She Rocked My World
アコースティック・ギターをフィーチャーした⑨は、カントリー・ソング風のポップなナンバー。ピアノの伴奏からしっとりと入りながら、中盤からハードなサウンドへと展開する⑩で、終盤を盛り上げて来ます。そしてラストの⑪は、アコースティックな感触で、やや妖しげな雰囲気を醸して、静かに幕を閉じて行きます。
何に触発されたのかは定かではありませんが、まさに全盛期にも勝るとも劣らない作品を、この時代に創りあげた、ダルトリーとタウンゼンドの意欲に敬意を表さずにはいられない作品でした。
それでは、2019年の当ブログ、これにて千秋楽です。
皆さま、良いお年をお迎え下さい。