以前も書いたと思いますが、私が洋楽を聴き始めた70年代初頭の日本において、ビートルズに対抗できるアーティストと言えば、ストーンズではなく、もちろんクイーンやビージーズでも当然なくて、今晩ご紹介するサイモンとガーファンクル(S&G)でした。当時、発売されたばかりの「Let It Be」とこのアルバムのどちらかは、洋楽聴いているお兄さん達は必ず持ってました。歴史的名盤と断言できるこのアルバム、見事「ファンが選ぶ20世紀のロック・アルバム」にランク・インいたしました。

イメージ 1

Bridge over Troubled Water / Simon and Garfunkel

(邦題:明日に架ける橋)

当ブログファン投票   第36位タイ
英米の評論家ランキング 第42位(87年)
70年発表

ダスティ・ホフマン主演の映画「卒業」でその音楽が使われた事から、がぜん人気が爆発したニューヨーク出身の男声デュオ。ポール・サイモンというアメリカを代表をするソング・ライターであり、ワールド・ミュージックの発掘と導入に意欲的なサウンド・クリエーターが、アート・ガーファンクルという天使の歌声を持つスーパー・シンガーと組んで作り上げたS&Gの音楽。広く万人に受け入れられる良質のポップでした。ビートルズよりも聴き易いため、先にこちらを好きになった人も多かったと思います。

さて、このアルバム、残念ながら彼らのラスト・アルバム(その後一時的な再結成はしますが)となるわけですが、「卒業」で火がついた勢いをそのまま引っ張って制作されたかのような、実に充実した内容。有名な曲も多くて、最初はベスト・アルバム?と思ったほどでした。

なんと言ってもオープニングにアルバム・タイトル曲である大名曲を持ってきます。「Bridge over Troubled Water」(邦題:明日に架ける橋)は、最早スタンダードですね。イントロのピアノの中からガーファンクルの声が立ち上がってくる出だし、サビでの熱唱、そしてラストにはストリングスで盛り上がる、これを名曲と言わずしてなにを名曲と言おうって位の出来です。

続いてこれまた誰もが知ってる「El Condor Pasa」(邦題:コンドルは飛んでいく)は南米のフォルクローレに英語の歌詞をつけたもの。哀愁漂う旋律が日本人の心にも沁みました。サイモンのワールド・ミュージックの旅、第1弾。最近何かのCMでも使われていた「Cecilia」は陽気なポップ・ソング。当時は全くわかんなかったけど、レゲエのリズムが使われています。「Keep the Customer Satisfied」はオールディズ調のアップ・テンポの楽しい曲。この時代に既に「顧客満足」を意識していたようです。「So Long, Frank Lloyd Wright」はボサノヴァ調のアレンジで友との別れを歌います。

B面はシングルとして先に発売されていた曲をトップに持ってきました。サイモンの代表作とも言われる「The Boxer」。これもサイモンの破れたアメリカン・ドリーム・シリーズの一つ(と思ってます)。アコギのアルペジオと『♪Lie-la-lie』のコーラス、間奏のシンセサイザー(だと思う)いずれも胸を打ちます。個人的な趣味から言えば、「明日に架ける橋」よりこちらに軍配です。

一転、ロック調の「Baby Driver」はある意味サイモンらしい、セコセコした歌(悪い意味ではありません)。このアルバムの中ではちょっと地味に聞こえるけど、メロディ・ラインは美しい、ウェスト・コースト風のバラード曲「The Only Living Boy in New Yoek」。ミドル・テンポの「Why Dont You Write Me」は、ややカリプソの味付けもされてる感じ。エヴァリー・ブラザーズのカバー「Bye Bye Love」はライヴ録音(擬似かもしれませんが)。オリジナルは知らなかった頃でしたが好きでした。ラストは「Song for the Asking」はサイモンのせつせつとした歌がジーンと来ます。

このアルバム、曲順がどうも違和感があるところだけが珠にキズです。「明日に架ける橋」はオープニングというよりは、B面ラス前(「Layla」的位置)に持ってくる方が感動大きかったと思うし、「Baby Driver」をオープニング曲に持ってくれば、もっとロック・アルバムらしい感じになったと思っております。「ボクサー」のB面トップは大正解ですけど。

この後、それぞれソロ・アーティストとして活躍するわけですが、サイモンの方は引き続き大物シンガー・ソング・ライターとして素晴らしい作品を発表し続けました。一方のガーファンクルも人の曲を取り上げながら、天使の歌声のソロ・アルバムを数枚発表しました。「ひとりぼっちのメリー」は、日本でも結構ヒットしました。何度か再結成シングルを発表したり、ライヴを行ってる永遠のデュオです。

HMVのサイト見てたら何とこの8月に紙ジャケシリーズ登場らしいです。

では、「The Boxer」です。75年、テレビ番組での共演です。ウルウル!!