ある、夜中に、吉田松陰は、奇妙な夢を見ます、老人の姿をした、神のような人間が現れます、その夢の内容を吉田松陰は、二十一回猛士説として書きます、
「ーーー、獄中、夢の中に神人が現れて、自分に1枚の札を与えた、見ればこれに、二十一回猛士と記している、夢から覚めて」、
吉田松陰が目が覚めて、しばらく夢の意味を考え、まず、神人が現れた様子を書き、考えてから、続きを書きます、
「よくよく考えてみると、自分は杉氏の生まれである、杉という字を分析してみると、木へんは十八という字になり、つくりは三という字と同じ意味で、これを合わせれば二十一になる、また自分は杉氏から出て吉田氏を継いだのだが、吉田の吉の字は、分析してみると十一口となり、田は十と大きな口でできている、田の十口と吉の十一口を合わせれば、二十一回となってゆく・・・、また、寅次郎の寅は虎である、虎であることを考え合わせると、これは自分を鞭打つ霊示に違いないと思われる。木の弱い自分は、体質もまた孱弱である、虎の勇猛さを学ばなければ1人前の士にはなれないぞという啓示に違いない、故にこれから二十一回孟子と名乗ることにする」。
夢を見て高ぶって、二十一回孟子と名乗ることに決めたけど、よく考えてみると、猛気を奮い立たせて、思い切った行動に出たのは、まだ3回だけだと気づいた。
1回目は脱藩状態で東北旅行に行った事、2回目は浪人の身でありながら藩公に対して、抗戦攘夷戦術書を堂々と差し出した事、3回目は黒船に乗り込み海外渡航をしようとしたことで、吉田松陰は、
「21回、僕は、まだ、3回しかしていない、あと18回、勇気を奮い起こして大きな事をやらねばならぬ」と、
自分に言い聞かし、兄に夢の事を手紙に書いて送った、すると早速、兄の梅太郎から返事が届き、
「二十一回孟子説は、なかなか面白いが、これから、まだ、18回も何かやらかそうとは、
勘弁してくれよ、寅次郎しのしたことに父上も叔父上も腹を立たせておらん、腹を立てているのは、この兄だけだ・・・」と、言うような事が書かれていた。

そして士分以下の者が入る、岩倉獄に入れられている、金子重之助が、ますます体の容態が悪くなっていた。
岩倉獄は百姓牢なので、環境は酷く、そのせいか、金子重之助は江戸の伝馬牢でかかった皮膚病が、ますます酷くなって、全身が膿み、移送中の時の寒気のせいが呼吸器も病んでる、そのことを、吉田松陰は面会に来る家族から聞かされているので、毎日のように牢の中から、
金子重之助を、「野山獄に移せ」、「医者に見せろ」などと大きな声で叫んだが、
それも虚しく、肺炎も併発して金子重之助は亡くなってしまった。

つづく。