西郷吉之助(西郷隆盛)が、藤田東湖のことを聞いてみようと思っている有村俊斎と樺山三円は、前から江戸に出てきていて、藤田東湖とは顔見知りだった。
西郷隆盛は、この2人からの手紙で藤田東湖のことは、よく書かれていたので、藤田東湖には、是非に会いたいと、ずっと思っていた。
西郷隆盛は、まず有村俊斎を訪ねて行った。
「俊斎どん、久しぶりでごわす」、
「おお、吉之助どんも、ついに江戸へ出て来たでごわすな、まあ上がってくるでごわす」、
有村俊斎の家に上がると、2人は懐かしがりながら、まずは最近の薩摩の様子と江戸の状況などを話し合い、西郷隆盛は藤田東湖の家に行き紹介してくれるよう、頼んだ、
「そうじゃな、藤田先生には、会っておいたほうがいいでごわすな、藤田先生には、おいどんより先に、三円どんのほうが早く藤田先生に会って親しくしているでごわすよ、じゃから、三円どんも誘って3人で行きもそう」、
「三円どんか、三円どんも久しぶりでごわすな、3人で行きもすか」、
こうして、樺山三円の家に行き誘って、藤田東湖の家に行ったが、藤田東湖は出かけていて不在だったので、3人で料理屋に入り、酒を飲み始めた。
「俊斎どんも三円どんも、今日は、すんもはんじゃったのう、藤田先生の家も、わかりもしたから、次は、おいどん1人で行ってみるでごわす」、
すると、有村俊斎が、
「そうか〜、そんじゃあ、おいどんが紹介状を書くでごわすよ」、
樺山三円も、つづいて、
「おいどんも書くでごわすよ、吉之助どん、2通持って行ったらいいでごわすよ」、
「それは、すんもはん、感謝しもす」
こうして西郷隆盛は、紹介状を2人に書いてもらい、別の日に改めて行くことにした。
有村俊斎と樺山三円は、酒を飲むのが進んでいくけど、西郷隆盛は、あまり飲めないので進まない、
「吉之助どん、もっと飲むでごわすよ」、
樺山三円が西郷隆盛の盃にそそごうとすると、西郷隆盛は手でふさぎ、
「すまんこってごわす三円どん、おいどんは酒に弱いでごわすから、もうこれ以上は」、
「吉之助どんは、体は大きいのに酒は、あんまり飲めんでごわすからの〜」、
そう言って、3人は笑ったが
「ところで、ペリーが来たことで江戸の様子は、どんなことになってもす」、
「それがのう、人間ってのは、ほんとに都合よくできてるもんでごわすよ、黒船が来もした時には、あんなに怯えていた江戸の者たちが、黒船が去ってしばらくすると、まるで何も無かったみたいになりもして元の陽気な感じになりもしてな、そんで、また黒船が来もしたら思い出したみたいに怯えてるでごわすよ」、
「そうで、ごわしょうな人間てもんは、して幕府の対応はどんなもんでごわすか」、
「どうにもこうにもならんでごわすよ、こちらに砲を向けて脅しているもんじゃから、幕府のもんは怯えて向こうの言うように国書を受け取ったでごわすよ、そんで2回目に来た時も幕府は何もできんと、横浜で日米和親条約を結んだでごわすよ」、
このあと、西郷隆盛は2人から詳しく話しを聞き、怒りが込み上げ、顔が真っ赤になって、大きな声で言った。
「今のままでは、いけもはん、こん国は、もっと強くならんといけんでごわす、異国なんぞに侮辱されん国になりもはんと」、
西郷隆盛が怒りを表すと、2人も、
「吉之助どん、おいどんらも、他の侍達も、メリケンに怒っているでごわすよ」、
その当時の侍達にとっては、黒船の態度は、人の家の玄関先で刀を抜いてわめきちらしているような感じに捉えて、多くの侍達は、喧嘩を売られたように感じて、アメリカに対して怒りを覚えていた。

つづく。