西郷隆盛は、まだ納得しきれない顔でいると、島津斉彬は、
「もうよい西郷、退がれ、退がって、よく考えろ」、
西郷隆盛は、俯き沈黙して、
「では、失礼しもす」、
西郷隆盛が下がろうとすると、島津斉彬は、
「西郷、わしが、お前を江戸へ連れて来たのはの、島津家にあって島津家を忘れて欲しいからだ、その意味も良く考えて見よ」、
西郷隆盛は部屋に入り、1人になると考え込んだ、島津家にあって島津家を忘れろとは、どういう意味か、
『斉彬様は、呪詛なんかで自分の子供が死んだのでは無いと思ってごわそうが、自分の子供を呪詛で殺そうとした奴らに怒りを持っているに違いないでごわす、じゃのに、久光様の子供を世子にするとは、斉彬様はもう怒りを忘れて、由羅達を許したでごわそうか』、
確かに産まれたばかりの子供を世子にするより、今の日本の事を考えると、いくぶんも育っている島津久光の子供を世子にしたほうがいいが、西郷隆盛は、その事を考えていると島津斉彬の度量の深さを感じて、
『おいどんは、斉彬様のために生き、その斉彬様は、日本国のために生きているでごわす』、
そう思いながら、西郷隆盛は、島津斉彬が水戸斉昭に親しく接近している理由が解るような気がしてきた。
『水戸の御老公様(水戸斉昭)は、徳川家であるでごわすのに徳川家で無いようでごわす、いや、まるで徳川家であるのを忘れようとしているでごわす・・・』、
西郷隆盛は、そう思いながら、安政の大地震で死んでしまった、藤田東湖の言った、天の人、地の人のことを思い出した。
それは、ある日のこと、西郷隆盛が、島津斉彬と親しい阿部正弘について信用できる人物かどうか、藤田東湖に質問した時のことで、
「おいどんらにとっては、この国の事よりも前に薩摩のことのほうが大事でごわす、なのに、斉彬様は阿部様と親しく、この国の事について考えているでごわす、大丈夫でごわそうか」、
「西郷君は、天下の事よりも、薩摩の事のほうが大事だと思うておるのだな」、
「当然でごわす、他の薩摩のもんも皆、そう思うとるでごわす」、
「西郷君は素直じゃのう、ならば、天の人と地の人の違いは解るかな?」、
「天の人と地の人!?、藤田先生、人間に、そのような差があるでごわそうか?」、
藤田東湖は大きく頷いて、
「ああ、天の人とは、神仏が、この世につかわす者、地の人とは、人と人との間に自然に生まれ出てくるもの、だから、地の人には使命に殉ずる事は無い、じゃが、天の人は、本来の使命を果たす事に我を忘れてしまう」、
「ほ~ぉ」、西郷隆盛は藤田東湖の言葉に頷き、瞬(まばた)きもせずに藤田東湖の顔を見ている、
「いいかな西郷君、勢州候(阿部正弘)は地の人、薩州候(島津斉彬)は天の人と言ったら解るかの?」
西郷隆盛が体が震え、解るような解らないような様子で藤田東湖を見ていた。
つづく。
「もうよい西郷、退がれ、退がって、よく考えろ」、
西郷隆盛は、俯き沈黙して、
「では、失礼しもす」、
西郷隆盛が下がろうとすると、島津斉彬は、
「西郷、わしが、お前を江戸へ連れて来たのはの、島津家にあって島津家を忘れて欲しいからだ、その意味も良く考えて見よ」、
西郷隆盛は部屋に入り、1人になると考え込んだ、島津家にあって島津家を忘れろとは、どういう意味か、
『斉彬様は、呪詛なんかで自分の子供が死んだのでは無いと思ってごわそうが、自分の子供を呪詛で殺そうとした奴らに怒りを持っているに違いないでごわす、じゃのに、久光様の子供を世子にするとは、斉彬様はもう怒りを忘れて、由羅達を許したでごわそうか』、
確かに産まれたばかりの子供を世子にするより、今の日本の事を考えると、いくぶんも育っている島津久光の子供を世子にしたほうがいいが、西郷隆盛は、その事を考えていると島津斉彬の度量の深さを感じて、
『おいどんは、斉彬様のために生き、その斉彬様は、日本国のために生きているでごわす』、
そう思いながら、西郷隆盛は、島津斉彬が水戸斉昭に親しく接近している理由が解るような気がしてきた。
『水戸の御老公様(水戸斉昭)は、徳川家であるでごわすのに徳川家で無いようでごわす、いや、まるで徳川家であるのを忘れようとしているでごわす・・・』、
西郷隆盛は、そう思いながら、安政の大地震で死んでしまった、藤田東湖の言った、天の人、地の人のことを思い出した。
それは、ある日のこと、西郷隆盛が、島津斉彬と親しい阿部正弘について信用できる人物かどうか、藤田東湖に質問した時のことで、
「おいどんらにとっては、この国の事よりも前に薩摩のことのほうが大事でごわす、なのに、斉彬様は阿部様と親しく、この国の事について考えているでごわす、大丈夫でごわそうか」、
「西郷君は、天下の事よりも、薩摩の事のほうが大事だと思うておるのだな」、
「当然でごわす、他の薩摩のもんも皆、そう思うとるでごわす」、
「西郷君は素直じゃのう、ならば、天の人と地の人の違いは解るかな?」、
「天の人と地の人!?、藤田先生、人間に、そのような差があるでごわそうか?」、
藤田東湖は大きく頷いて、
「ああ、天の人とは、神仏が、この世につかわす者、地の人とは、人と人との間に自然に生まれ出てくるもの、だから、地の人には使命に殉ずる事は無い、じゃが、天の人は、本来の使命を果たす事に我を忘れてしまう」、
「ほ~ぉ」、西郷隆盛は藤田東湖の言葉に頷き、瞬(まばた)きもせずに藤田東湖の顔を見ている、
「いいかな西郷君、勢州候(阿部正弘)は地の人、薩州候(島津斉彬)は天の人と言ったら解るかの?」
西郷隆盛が体が震え、解るような解らないような様子で藤田東湖を見ていた。
つづく。