SLN 第5回 『そうなんだ』前半 | BAA BAA BLACKSHEEPS

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京都発・新世代エモーショナルロックバンド 【 BAA BAA BLACKSHEEPS 】
オフィシャルブログ

 

 

 

目次

 

― 【前半】 ―

1.自分にとっての『そうなんだ』

 ▶バーバー始まりの曲
2.楽曲制作時のエピソード

 ▶鶏が先か卵が先か

 ▶こにーは偉大

 

― 【後半】 ―
3.音像にこめた意図
4.個人的に力説したいこと
5.歌詞について
6.メンバーランキング
7.おまけ

 

 

 

 

  1.自分にとっての『そうなんだ』

 

 

神部:
ぼくの、ぼくによる、dino (とぼく自身) のための歌」。それが『そうなんだ』です。
日常的に用いられる話し言葉をタイトルに選んでみたり、サウンドはマリン系 (※神部独自の定義) にもかかわらず歌詞と展開がダウナー極まりない気怠さだったり、それでいて最後はグランジ的に感情だけが爆発したり……という摩訶不思議な構造のこの楽曲は、案の定めでたく『薄氷』と並んで

2大リハビリ不人気曲

の称号を冠するに至りました (※自社調べ)
けれど、ぼくはこの歌がとても好き、いや、好きとか云々といった次元を超えています。ぼくにとっては、dinoへの贈り物であると同時に、ぼくの半身のようなフィット感のある楽曲です。こにーちゃんが加入して、いちばん最初に合奏した曲でもあるので、そうした思い入れも強いかな。
リハビリ発売から8年が経過した今、ぼくがいちばん聴いているのはこの曲かもしれません



dino:
「バーバーの楽曲で一番自分っぽい曲を選ぶなら?」

と聞かれたら間違いなくこの曲を秒で選びます。個人の趣味の範疇を出ないと言われたらそれまでですが、メロディー、コード感、アレンジ、歌詞、どれを取っても自分すぎて逆に笑けてくるくらい。墓まで持っていきます


こにー:
結構思い出深い曲だなぁ。バーバーで初めてスタジオ入る前にハーモニクス使った面白いフレーズができて、個人的新境地やったし。細かくは語らないけど、ライブで泣きながら弾いた事もあったな。いろんな場面でいろんな感情を作ってきた曲。



江口:
ダウナーな箸休め、という感じ。曲の宛先が存在していて割り込む余地が無いからなのかは分かりませんが、不思議なもので、演奏するときは重力を感じながら、要所でディノさんを凝視しながら叩かないと迷子になってしまう奇妙な曲でした。
 

 

 

バーバー始まりの曲

 


神部:
アルバムでは5曲目だけど、バーバー4人は『そうなんだ』から始まったんだよね。他者との関係性を諦めていく楽曲でスタートしたぼくらって、ある意味すごいバンド。


dino:
本人も言及してるけど、こにーちゃんが加入して最初のスタジオでやったんやっけな。曲自体は『トゥルーエンド』なんかと同じく3人時代に既に演奏してたけど。慈雲の言うように、心機一転のタイミングでこんな内容の曲いきなり持っていくのもある意味すごいね(笑)。


神部:
そもそもどうして『そうなんだ』から着手しようってなったんだっけね。スタジオ入りする前にいくつか送った音源の中から、こにーちゃん本人が先に考えてきたから……とかだったかな。


dino:
どうやっけね、もはやなんでかは覚えてないな……。結構アレンジとして固まってたからとか?


こにー:
そうやった気がする。他のは基本的にスタジオで合わせて作るって言ってたんやけど、これはほとんど出来てたから。


神部:
そっか、やっぱりそうだよね。
実を言うと、初合わせの日にこにーちゃんが鳴らした『そうなんだ』のフレーズを聴いた時、初めはまったく理解できなくて、
「ん? こにーちゃん、本当にギター弾いてる?」
って思っていたのはないしょ(笑)。
リードギターはキャッチーなメロディやリフを弾くだけではなくて、空気感そのものを作り出したり奥行きや深みをもたらす役割もあるんだって肌身で実感したのはこの曲のおかげだったかな。『そうなんだ』のギターはスルメだと思う。


江口:
こにーちゃんはリードギターであり空間デザイナーなんやと思うわ。縁の下から持ち上げるタイプの。


神部:
いいたとえだね、分かりやすい。
リードギターは目立つ要素が強く出てしまうと思われがちだけど、『そうなんだ』ではこにーちゃんの空間を彩る技能がよく表れていてると思う。

THE VESPERSから3人でのBAA BAA BLACKSHEEPSに変わっていこうとした中で『トワイライト』・『トゥルーエンド』・『夢の出口』・『そうなんだ』が生まれたんだと思うと、当時のぼく(ら)が精神的に相当参っていたのが分かるし、その懊悩に呼応するようにこの時期からぼくのソングライティング術も開花していった気がする。

 

(※Listen in browserをクリックでこのまま再生できます)

 

 

 

 

 

  2.楽曲制作時のエピソード

 

 


神部:
『そうなんだ』は、こにーちゃん加入前の3ピース期に創った曲です。
THE VESPERSとして活動を続けられなくなった後、3ピース編成での活動を見切り発車してしまい、今後の展望も分からぬまま途方に暮れていた時のこと。ある日、ぼくとdinoはJR京都駅で落ち合い、喫茶店で語り合っていました。
その頃のdinoは対人関係でいろいろと思い悩んでいて、ぼくに胸の内を明かしてくれました。ぼく自身も当時、鬱病を抱えながら過ごしていたので、dinoの語る思いに同調ないし共感するところが多々ありました。今でこそ細かな内容は薄れてしまったけれど、二人とも人との関わりに疲れ切っている状態だったということははっきり覚えています。
後日、ひとりギターを爪弾いていたら、適当に鳴らした音が妙に気になり、いつしか繰り返し繰り返し同じ音を弾くぼくがいました (それがイントロのアルペジオ)
それまで一度も鳴らしたことのなかった音色に訳もなく惹かれ、気が付いた時には出だしの歌詞とメロディが一緒に降って湧いてきたように自ずと口から発せられました。「大体」、という言葉から即座に繋がったのは、映画『マルホランド・ドライブ』の台詞に似た一言。
ぼくは自分自身の中に長年積もり積もったわだかまりを一つ一つ言葉に変えながら、それらが同時にdinoの打ち明けてくれた思いにも相通じるものであるのではと考え始めていました。
この曲は、ぼくとdinoとの心を合わせて出来上がっていったんだなと思います。

ちなみに映画中の台詞は
“A man's attitude goes some ways, the way his life will be.”

(意訳:人は自分自身の行いによって相応の報いを受ける)
というものです。



こにー:
楽曲制作時というかサビのフレーズ制作時の話。
元々前身バンドや慈雲のソロとかも聴く機会は結構あって、その中でも慈雲ソロ時代の『ガラークチカ』のイントロがハーモニクスで始まってるのが印象的だったのを思い出して、加入したらハーモニクスと実音を混ぜながら何か出来ないかなーと思ってたのね。
今でも思いついた瞬間の光景は鮮明に覚えてるんだけど、当時住んでたマンションで畳の部屋に寝っ転がりながら、窓から柔らかい光と風が入ってくる状況で、音源聴きながら手を動かしてたらほぼ一発で出てきた。
一聴すると気味の悪いフレーズだけど、アンサンブルで聴くと

「あれ、なんか変だけどハマる」

みたいなのが狙い通りにできたと思う。
このフレーズがサッと出来た時に、多分バーバーでギター弾いていけそうやなという、感覚があった。
これはかなり面白いと思って、メンバーに早く聞いてほしかったんやけど、スタジオで合わせたら意外と反応が薄くて焦った(笑)。



江口:
曲中盤の一番盛り上がる部分は制作時、ライブで演奏する度に温度感が上がっていって現在のようになったはずです。
当時のカンベさんとディノさんは精神的なベクトルが同じ方向にあることが多かったので、作曲時の感覚が共有しやすいのと同時に、ライブでの力の入り方も似ていたのかなと思います。



dino:
他の曲たちもだんだん記憶が薄れていってるけど、『そうなんだ』はマジで印象薄いかもしれん……。
一応目標とする音像みたいなのはなんとなーく3人の時からあって、わりとその目標に関しては達成出来てると思うんやけど、何故そういう音像にしようみたいになったのかが全然思い出せん……。
この曲って歌詞が先に出来上がってたんやっけ?
 

 

 

鶏が先か卵が先か

 


神部:
dinoくんの疑問にお答えしたいところだけれど、ぼくも覚えてないなあ。曲を作る時は、歌詞を先に書いた場合もあれば、浮かんだメロディに言葉を当てはめていく場合もあったし、全部同時に“降りてくる”場合もあって、記録自体を残してないからどの曲がどうだったかってことは分からないんだ。
2012年4月25日に名古屋club rock'n'rollで演ったライブ音源を聴いたら、3ピース期の『そうなんだ』はこにーちゃんのギターが存在しないだけあって、やっぱり面白味に欠けてた。ただ、この時から既にdinoとくみちゃん (※Dr.江口) の伴奏がほぼ完成していたり、ぼくもコーラスエフェクターで弾いているところからすると、割と早い段階からイメージは固まっていたんだなと思うよ。

 

(※Listen in browserをクリックでこのまま再生できます)



dino:
確かに、こにーちゃんが加入した後でも、間奏部分のコードとか尺の見直しはあったけど、土台のアレンジを大きく変えたって事は無かったかな。
今思えば、ある程度アレンジの固まった楽曲に上手いことギター乗っけてくれたんやなあと。上手い事乗りすぎて前項の
「あれ? こにーちゃん本当にギター弾いてる?」
に繋がってくるんやけど(笑)。


神部:
うん、せいぜい2番Aメロの出だしや、その後の間奏ぐらいだよね、変わったのって。
そうそう、本当にこにーちゃんのギターは違和感なく溶け込んでるよね。まるで元からそういうオケだったんじゃないかってぐらい。本人にも言われちゃったけれど、当時のぼくらは全然ピンと来てなかったのが悔やまれるね(笑)。


dino:
まあその辺のズレを埋めるためにも、しばらく修行期間も取ったりしたね……(笑)。


神部:

 

そっか、そういうこともあっての修行期間だったっけ(笑)。

 

 

 

 こにーは偉大

 

神部:
それにしてもこにーちゃんのギターフレーズが『ガラークチカ』きっかけとは知らなかったからびっくりだったな。


dino:
そうやなあ、『ガラークチカ』も確かにハーモニクスが印象的な楽曲やけど、『そうなんだ』のこにーちゃんのフレーズとはまた種類が違うからなあ。元々アイデアの出所は慈雲の曲なんやろうけど、それをこにーちゃんが飲み込んで生産したものがそうなんだになってると思うと、メンバーが増えることによるマジックありがてえなと低音しか出せない人間は思うわけです(笑)。


神部:
そうだね、むしろ『ガラークチカ』のハーモニクスは『おまじない』に転用した通りシンプルなものだったのに対して、こにーちゃんのフレーズは色とりどりの光が次々に瞬くような複雑さだもんね。
低音だけじゃないよ、当時はよく『そうなんだ』のコーラスもしてたじゃない(笑)。


dino:
当時は……ウッ頭痛が……。


神部:
あれっ、触れてはいけなかった……!?


dino:
いや、大丈夫や(笑)。


神部:
焦った……(笑)。


江口:
(カンベとディノの会話に補完する内容が無いと判断した江口は、満足気に微笑むと静かに目を閉じた。どうやらコスモを感じているようだ……)



こにー:
割と自分的にはクリティカルなフレーズやったけど、あまり誰からも褒められなかったなぁ。
もうちょっと弾いてる時にドヤ感出しとけば良かったかな。


dino:
当時は直接的なもの以外はあんまわからんかったんやろなあ……。
今でもわかってるかと言われたら微妙なとこやが。


神部:
今聞くとすごいなーって思うんだけどね。ああいうフレーズを自分の曲に当ててもらうって頭がまるでなくて、おおかた「リードギターはキャッチーなもの」って固定観念にとらわれてたんだろうなと。当時はちゃんと分かってあげられなくてごめんね(笑)。


江口:
みんなよく覚えてるな。
3人体制になった直後は明暗が極端な曲の原型がたくさんできていたので、その中でどちらにもそこまで寄りすぎてない『そうなんだ』は進めやすいっていうのもあったのかな?


dino:
確かに耳鳴りとかも昔はより静と動がパッキリ分かれてるアレンジやったしなあ。そういう意味ではずっと平熱みたいなテンションのこの曲は進めやすかったんかもね。

 


神部:
後にも先にも、あそこまでメロウでローテンションな曲って『そうなんだ』が唯一だし、ぼくらにとっては初めての試みだったはずなんだけれどね。たぶん楽曲への惚れこみようがすごかったdinoが決め打ちのベースラインを作ってきたこともあったりして、くみちゃん (※Dr.江口) もビートの構築が早かったんじゃないかな。


江口:
曲ができるときの経緯を少なからず横で見ていたこともあって、いつもはカンベさんを頂点にした三角形とすると、『そうなんだ』はスリーピース編成の配置通りで、ディノさんも前に出た逆三角形という感じ。
これが尖った三角形だったから、コニーちゃんが入って上手くバランスを整えてくれたのかな(笑)。


こにー:
いやん、照れちゃう!
もっと褒めてぇぇぇぇ!


dino:
今回こにーちゃんアゲ回やな(笑)。


神部:
こにーちゃんのテンション(笑)。

 

 

 

 

 

後半へつづく

 

(次回更新は10月25日)