SLN 第4回 『薄氷』後半 | BAA BAA BLACKSHEEPS

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京都発・新世代エモーショナルロックバンド 【 BAA BAA BLACKSHEEPS 】
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― 【後半】 ―
6.歌詞について
 ▶ 誰のための音楽か ◀

 ▶ 身近な人間からの重圧 ◀

7.メンバーランキング
8.リスナーの声
 
 
 
 

  6.歌詞について

 

 
dino:
歌詞については、どの楽曲もノベルゲームの選択肢みたいに何個かある案から慈雲がみんなに相談という形で持ってきてくれたのを、「楽曲のイメージに合うのはどちらか」とか「文字の並びが楽曲に合ってるのはどれか」などをメンバーみんなで頭を捻って考えてた記憶があります。
『薄氷』ももちろんそのひとつで、印象的だったのは出だしの歌詞とメロディーがガバッと変わったこと。出だしの歌詞が変わるって結構珍しいというか、サビと出だしって同じくらい重要だと思うので、そこを結構ざっくり変えたので、なんというか慈雲かなり苦労したなという意味でも、この曲は強く印象に残ってます。
 
 
こにー:
アルバムを通して聴いたときに、ラストの『リハビリテイション』に行き着くまでにいろんな苦行があるよね。『薄氷』では多くの人が感じたことのある、怒りや悔しさみたいな部分が出てると思う。
『イーハトーヴ』もそういう意味では、多くの人が感じてると思うけど、『薄氷』の方がよりバーバーらしい形で表現できたんじゃないかな?
 
 
江口:
アルバム通して視野狭窄という意味では一番底にいるかも。詰みを感じて冷や汗をかく感覚と追い立てるサウンド面の噛み合わせを聴いてもらえたらなと。
 
 
神部:
「踏み抜くか 踏み外すか」、「息絶えるか 生き残るか」、どちらを選んでも苦痛という二律背反の窮地に立たされた人間からすれば、周囲から浴びせられるどんな叱咤も激励も、暴力と何ら変わりないでしょう。
いつ割れるとも知れない氷の上をあえて進もうとする者に対して、安全地帯から「行け」と呼び掛けるのか、「諦めて引き返せ」と止めるのか、嘲笑うのか、はたまた無関心に見向きもしないのか、それとも……。あなただったらどうするでしょうか。
 
「相手を称賛しようが非難しようが、その結果として本人が何を選んでどんな結末を迎えようと自分の与り知るところではない。なぜなら全ては“自己責任”だから」。
そういう態度の人間ばかりの世界なら、そこは望まずとも、凍てつく風の吹きすさぶ氷の上に早変わりするのでしょう。
 
 

 

 誰のための音楽か

 

dino:
慈雲の言うところの“自己責任”みたいな雰囲気はリリースした当時よりも色濃くなってるように個人的に感じるので、リリースから年数を経た今、以前よりもっと多くの人に届くような気がするなあ。届く人が多くなるってのが果たして良いことなのかどうかはさておき……。
 
神部:
ぼくの発言にそういう所感を述べてくれてありがとうね。
そうだね。苦境に立たされても、誰もかばってはくれないし助けてくれないのは、それだけ周りも同じように自分のことで苦しんだり精一杯な人だらけになってしまっているからなのかもしれないって考えた時もあった。でも、助けを求めている人に適切な支援が行き届かないばかりか、弱者に石を投げたり、あまつさえ犠牲になった人にも鞭打つような人間が本当に多くなったと思う。そうすると、先に脱落していった人たちの選択をなぞった方がいっそ楽なんじゃないか……なんて、極端な思考回路になっていってしまう人が増えていくのも当然だよね。
『薄氷』は夢を見る代償、誰かに夢を見させる功罪、そして夢が潰えていく末路を描いた楽曲ではあるけれど、言葉の断片からでも自己投影してもらえるものがあるかもしれない。
でもdinoの言う通り、ぼくらの音楽が届く人が多かったら、それはあまりよくないことなんだと思う。ぼく自身の懺悔として、もっと聴き手に生きる希望やよろこびをもたらす音楽を創るべきだったんじゃないかって悔いは、未だにわだかまっているよ。
 
dino:
聴き手に生きる希望や喜びをもたらす音楽を創るべきだったのかもしれないというのは、わだかまる気持ちはとてもよくわかる反面、そこまで気にしすぎることもないのかな、と思うわ。どんなにネガティブな音楽だったとしても、誰か1人には希望の歌になり得るかもしれんし、もしそうなったら (別にならなくても、俺たちにとっては意味のある曲やし) 、この曲はこの曲の装いで産まれてきた価値があるよね。
 
神部:
うん、ありがとう。そうなんだよね。事実としてぼくも傷口をえぐるような絶望的な歌に何度となく抱き締められてきた過去があるし、dinoが言ってくれたようなことを自分自身言い聞かせてきたつもり。
たださ、『Peacewall』や『羊とアスピリン』なんかを聴いてると、本当はもっと優しい歌を歌える人になりたかったはずじゃないのかなって考えてしまう日もある……って言ったら伝わるかな。
まあ、リハビリを聴いたことで人生が望ましくない方向に大きく傾いたって話を聞かない限りは、いたずらに罪悪感を抱く必要もないのかな。
 
dino:
もっと優しい歌を歌える人になりたかった、というのはわかるよ。そして事実優しい曲もあるしね。
俺が言いたかったのは要するに、作品をポジティブに受け取るのもネガティブに受け取るのも、極論受けて次第というか。俺たちがアウトプットした録音物は瞬間の切り取りなので形は変わらず (事実変えようも無い) 、受け手側の受け皿がそのタイミングでそれらにどうフィットするというか、それ次第で変わると思うなあ。もちろん、伝えたい願いや思いはこちらサイドにもあるんだけども、と言う感じ。こんなこと言うとちょっとおこがましいかな?
 
神部:
そっか。dinoが言わんとしてくれたことを履き違えてたかも。
ぼくらが形作って、発信して、実際に届いて受け止めてもらったその先は、ぼくらのコントロールできるものではないし (しようと思うべきでもなく) 、聴き手の心に委ねるしかないんだもんね。
 
dino:
そうね、作品を発表する事は例えば祈りとかみたいにわりと一方的で、それを受け止める神的な存在として聴き手の皆さんが居て、みたいな。で、もちろん神が全て受け入れる存在かというとそうでもないし、と言う感じかなあ。余計分かりにくいかな。しかもなんか本筋からちょっと脱線したね、すまぬ。
 
江口:
>別にならなくても、俺たちにとっては意味のある曲やし
これに全部詰まってるな。まず自分達のために音楽をやるわけなので。
ただそういう葛藤を抱くことは良いことやと思う。迷うおかげで人も曲も成長する気がする。
 
dino:
自分達のために音楽やってる、その通りですわ。他の人たちが正味なところどうなんかはわからんけど、何かしらの創作活動をする人は少なからずそう言うエネルギーを持ってみんなやってると思うわ。
 
 

 身近な人間からの重圧

 

神部:
そういえば
「いつ終わるんだ いつ止めるんだ」
って歌詞は、バンド活動している間に複数の人間から何度となく言われた言葉だったなって思い出してとても苦々しい気持ちになってきた。
 
dino:
やっぱこれって家族親族や友人から言われると辛いワードよな……。
幸い俺んとこは家族は良い意味で放任だったし、友人の輪もバンドで出会った人がほとんどやったから、そこはあんまり無かったかなあ。でもこれって音楽に限らずやけど、いわゆる“真っ当”な道筋を歩もうとしない人は言われるケースかなりあるんじゃないかな……。
 
 
 

 

  7.メンバーランキング

 

 

 『薄氷』 ランキング

 

dino: 4位
江口: 5位
こにー: 6位
神部: 10位
 
神部:
ぼくの最下位はこちらでした。
みんなと話しながら聴き直していたら改めて『薄氷』の魅力に気付かされたりもしたけれど、いかんせん他の曲への思い入れが強過ぎるんだよね……。
楽器隊3人はきれいに456と並んだね。
 
dino:
まああくまで相対的なランキングやからさ……。最下位だからといってこの曲を嫌いなわけじゃないやろうし(笑)。
 
こにー:
もちろん嫌いな訳じゃないと思うけど、慈雲が10位なのは結構意外やなー。
 
神部:
自分らしくない歌い方や作曲にあえて挑戦してみようと思った歌でもあるからね、その辺が大きかったかなあ。
ぼくももっと3人と同じくらい楽器パートで面白いことができれば違ったかも。
 
江口:
素直なアンサンブルとか歌い方じゃなかったりと簡単じゃないし、奏者側として見てるからこそのランク付けかもな。
 
神部:
くみちゃんナイス。本当そんな感じかな。
というかぼくが『薄氷』最下位だったことをみんなにフォローしてもらう流れになってしまった気がする(笑)。
先に旧版『夢の出口』があったおかげで創れた曲でもあるし、みんなで洋楽を聴いてやいのやいの言いながら創れたのは楽しかったから、いい思い出のある曲だよ。
 
 

  8.リスナーの声

 
 
今回、『薄氷』のセルフライナーノーツを投稿するにあたって、とある聴き手の方が『薄氷』への思いをツイートしてくださっていたので、ご本人の許可を得て掲載します。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンバー全員でうれしいね、ありがたいねと話しながら拝読しました。そんなくずきり。さん、今回のセルフライナーノーツ記事の更新も楽しみにしていてくださったようです。

 

 

 

かつてたくさんの人がぼくらの音楽について思いをしたためてくれていたとは言え、まさか今でも楽曲に対する思いを語ってくれる人の存在があるだなんて、うれしさはもちろんですが、同時に驚きも隠せません。

 

作品を生み出し、ひとたび世に出してしまえば、後のことは聴き手に委ねるしかない。今回のSLNではまさにそんなことも話題に上りました。

しかしこうして、自分たちさえ不憫に思った曲でも、確かに受け止め、味わい、好きだと感じ、その思いを表してくれる人がいるんだという事実を、今でも実感させてもらえるBAA BAA BLACKSHEEPSは幸せ者です。

 

思わず笑みのこぼれるような元気いっぱいの「好き」を表現してくださった、また一連のツイートの掲載許可もくださったくずきり。さん、ありがとうございました。

 

 

 

  おまけ

 

本編で語り忘れていました。

2018年にVo.神部がツイートしたBAA BAA裏話で、『薄氷』のアイディアの元になったのは一枚の絵だったというお話です。

Radioheadは世界中のミュージシャンに影響を与えた偉大なバンド。ぼくらもしっかり影響を受けていました。

 

 

 
今回はここまで。
それでは、また次回お会いしましょう。
 
 

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