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目次
― 【対談編 後半】 ―
4.音像にこめた意図
▶ テンポ感の難しさ
▶ ジャケットの親和性
5.個人的に力説したいこと
▶ 歌詞の視点
6.歌詞について
7.メンバーランキング
― 【真相編】 ―
8.神部の一人語り
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4.音像にこめた意図
神部:
音像、というよりもぼくの場合は詩情について。
この曲に込めたかった最大の感情は “切なさ” です。歌われている言葉の一つ一つやぼくの声色から、聴く人が少しでもセンチメンタルな痛みを覚えてくれたらいいなと思っていました。
(実際に聴き手から得た反応として、死別の経験、忘れ難い人との望まぬ別れ、それらがもたらした悲しみや未練を想起させられたという声もありました)
音像については、曲全体を通して 「走馬灯」 のような、過去の記憶と現在の思念が頭の中で何度も交錯する目まぐるしさを感じさせられるものにしたいと望んでいました。
「あの人に会いたい」 、けれど 「もう会えない」 、そんな空虚さや惨めな現実から逃避しようとする焦燥感にも似た渇望、それらを曲調からも感じ取れるようにと、旧版よりBPMを上げた訳です。おかげでメンバーはレコーディングもライブも大変だっただろうけれど(笑)。
ぼくはちょっと頭の作りが普通と違うので、思わず身体が揺れ動くような疾走感のある曲調でも、進行と歌詞次第で勝手に切なくなったり涙してしまえる人種なのですが、聴き手の方はどうだったでしょうか。
ちなみに2番Aメロ後半 (1分34秒~) 、
「鏡の向こうに嫌気が差す夜更けには 届かない手紙をしたため続けているよ」
という歌詞のバックでぼくが弾いているきらびやかなフレーズは、おそらく歌やこにーちゃんのギターに隠れて、ほとんどの人が聴き取れていないんじゃないかなと思っています。ぼくの感覚では、透明感とか光を表したい場合に高音を用いるのが主ですが、 『トゥルーエンド』 では違う意味を与えました。
どこにも届けられない思いを胸の中で言葉に変えては、それらを幾重にも募らせていく内に、やがて目元から溢れ出していった一滴一滴。鈴のように針のように高く鋭く鳴らした音は、胸の痛みとその表出 = 涙 を意図しています。
こにー:
『ヴァイタルサイン』 と似て非なる感じの音像にしていて、さらにそこから2本のギターが絡む分、ちょっと艶っぽい感じにしている。
間奏から (2分28秒~) の奇妙な音は、理想と現実とか絶望と希望みたいなものを色に置き換えて、最初はまだらになった奇妙な色が混ざることで一色になっていくイメージで、最後のサビ (一色) がよりクリアに聞こえるように、敢えてすごく奇妙な音に作り込んでる。
dino:
音像に関しては正直前回の 『ヴァイタルサイン』 の時にも触れたけど、アルバムを通して比較的プレーンな音像になってます。フレーズ的には、イントロやAメロ部分はちょっと翳りのある雰囲気に合わせてベトッとしたベースラインを意識したのと、サビ部分はドラムフレーズの手数の細かさを借りて、気持ちのびやかなフレーズをあてることでなんとなく都会の夜みたいな雰囲気を演出しようとはしているかなあ。
江口:
流れるように聴いてほしいところと、流れを止めて詰まったようにしているところの落差を意識しています。
これらが切り替わるタイミングでは強く意識しないと、テンポとか意図しない部分に違和感が出たり、逆に意図したような違和感が出せなかったりするというのも。
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▶ テンポ感の難しさ ◀
こにー:
江口もリズムについて言ってるけど、この曲は結構リズム意識して練習してた気がするよね。
神部:
確かにこの曲はスタジオ練習でも全員でクリック聴きながら合わせたりしてたね。
イントロがハーフテンポ、2番サビ終わりからまたハーフテンポで、間奏はいったんリズム隊が消えて、大サビで盛り上がった後、またアウトロでハーフテンポになったり……と大忙しな分、全員のテンポ感の統一とキープにとにかく苦戦した思い出があるね。
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▶ ジャケットの親和性 ◀
神部:
あとdinoの話だけど、イントロ~Aメロの 「翳りのある雰囲気でベトッとしたベーライン」 とか、サビは 「伸びやかなフレーズで都会の夜みたいな雰囲気」 っていうところがぼくのイメージしてる通り過ぎて改めてびっくりした。
『トゥルーエンド』 は人工的な光に囲まれた夜の片隅で木漏れ日に焦がれているような詩世界の曲だから、dinoのこういうねらいでもアーバンな空気を醸し出せていたらいいよね。
(どうでもいい話だけど、『トゥルーエンド』 はぼくの音楽の中では 『夜間飛行』 と並んで2大 「夜の高速道路で聴いて欲しい曲」)
dino:
そう言っていただけるとありがたい(笑)。
ちょっとズレるけど、『リハビリテイション』 のジャケットの色味に一番近いのが 『トゥルーエンド』 やと自分の中で勝手に思ってるわ。
背景に都会の灯りがあって、歩道橋に佇む少女が飛んでいったマフラーを見つめて (?) いるという構図やと思うけど、結構 『トゥルーエンド』 の世界観と個人的にはマッチするなーと思ってる……という余談でした。
神部:
分かる。とっても分かる。
どちらかと言うと怖さや寂しさを感じてしまうような都会の夜の中で、おぼろげな街灯に照らし出された少女の孤独感がよく表れた作品だよね。真っ黒と見せかけて黄色が混ざったダークグリーン調だったり、色味や明暗のバランスは 『トゥルーエンド』 の持つ印象にぴったりだと思う。
リハビリの時は麺類子さんにはあえて何も指定せずにご本人にお任せして描いてもらって、『昨日のおとしもの』 の時と同じ夜の絵になったのがうれしかったな。分かってくれてるなあ、って感動してた。
きちんとぼくらの曲の詞や音像から着想を得て描いてくれたのが伝わってきたし、ジャケットはぼくの予想を上回る形で 「リハビリテイション」 というテーマを表現してくれたと思う。麺類子さん、お元気にしてるかな。
dino:
そういや特にお題というか縛りとか無しで描いてくれたんやったっけ。
本当に聴き込んで、理解して描いてくれたんやろうなというのがどちらの作品からも伝わるよね。 『リハビリテイション』 は特に、このジャケじゃないとって感じがするわ。
黄色ってバンドのイメージ的には (こにーちゃんのタイパンツ以外) あんまり持ってなかったんやけど、初めてジャケットのアガリ見た時、これやなあってなった記憶ある。
こにー:
ジャケットのこれやな感は確かにそうね。個人的には 『トゥルーエンド』 ももちろんだけど、このアルバムを通して聴きながらジャケットを見てると、曲ごとにジャケットの印象が変わる気がしててすごく不思議な感じ。
それはとても素敵な事だし、このアルバムを好きでいてくれる人たちも同じなんじゃないかなーと思ってる。
神部:
そうそう。 『昨日のおとしもの』 の時の感動を信じて、麺類子さんにあえてお任せしたよ。
実はぼくも 『リハビリテイション』 が黄色を基調とした画で上がってくるとは思ってなかったんだよね。それでも後から後から 「これしかなかったな」 って実感が湧いていったんだから不思議。
振り返ってみると、リハビリって自分が思っていた以上に暗くて悲しいアルバムで、優しさとか透明感みたいな色調とはかけ離れていたんだなって気が付いて。そう思うと、麺類子さんはもしかしたらぼくら以上にこのアルバムの持つ表情を読み取ってくれていたのかもしれないよね。
こにーちゃんの話もそう。曲が絵の印象を変えるのか、絵が曲の印象に寄り添ってくれるのか、聴く人と見る人の心を映す鏡のような面白さがあるよね。
単一のアルバムのジャケットとしても見れるし、各曲ごとのビジュアルとしても見れる、そんな魅力のある絵だと思う。
江口:
そういえば 「夜の高速道路で聴いてほしい」 ってずっと言ってたな(笑)。
神部:
9年経っても言い続けていくよ(笑)。
その2大ソングについては、そもそも自分が高速道路で聴きたくて創ったところもあるからね。
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5.個人的に力説したいこと
神部:
全楽器隊が、バーバーの楽曲中トップクラスの難度とBPMで演奏するこの曲は、どのパートも隅々まで味わい尽くして欲しいと思うほど緻密で凝った作りになっています。
跳ねるような疾走感あるビートを盤石に固めてくれたリズム隊。
dinoの粘り気のあるベース音は休符の取り方が粋だし、1番Aメロと2番Aメロの譜割りの変化の面白さ、サビやアウトロなど聴かせどころでの躍動感は文句なしです。
くみちゃん (※Dr.江口) は一曲の中で見本市のように様々なビートを刻んでいる点や、これでもかと言わんばかりにねじ込んでくる精緻かつ圧倒的なフィルに注目 (注耳?) してください。特にラストサビ終わり、「あなたに会いに行くよ」 からの怒涛のフィルインは神がかり的です。
ぼくもこの曲では珍しくギタリスト然とした演奏をしているので、アルペジオのピッキングニュアンスを感じてもらえればと思いますし、2番目Aメロ後半の美しさにも気付いてもらえたらうれしいです。
こにーちゃんはもはや言わずもがな、『トゥルーエンド』 においてもう一つの “歌” として詩世界を彩ってくれた手腕をつくづく讃えたいです。こにーちゃんのリフがなければ、この曲をここまで昇華することはできなかったでしょう。
こにー:
上でも書いてしまったけど、自分の中でのリードっぽいイメージを結構入れ込んだ曲なので、1番と2番のアプローチの違いとか、サビでの動き方など、リードギターに耳を向けて一曲通して聴いてみるとまた違ったストーリーが見えて来そうな感じなので、そういう聴き方を一度してみてもらいたいです。
dino:
意外に思われるかもしれませんが、バーバーの中では数少ない
「男女の関係性 (の成り行き)」
みたいなものにスポットをあてた珍しい曲。もちろん他にも 「君と僕」 みたいなモチーフの曲はあるんやけど、他の楽曲が生活の延長みたいな感じやとしたら、『トゥルーエンド』 は少しスパイスが効いてて刺激的な曲だなあと思ってます。
あと、「1.自分にとってトゥルーエンドとは」 で触れたような理由で録音版とライブ演奏版のベースのフレーズが一番違う曲というのも個人的にはあります、それが良いのか悪いのかは別として(笑)。
江口:
マルチエンディングが用意されているストーリーの中でのトゥルーエンドは通常、一度の試行では掴みとれないルートになっていると思います。
これは比較対象がない初回で確認されては困るという制作サイドの都合もあると思いますが、
「真実に到達するのは容易ではなく、また苦難の道を乗り越えたからといって必ず大団円が待っているわけでもない。けど進めるの?」
と覚悟を求められているようなメッセージにも見えますね。
個人的な言葉への見解ですみません、詳しくは当時そのあたりを力説していたカンベさんに委ねます(笑)。
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▶ 歌詞の視点 ◀
神部:
dinoの言う通り 『トゥルーエンド』 はああいう視点で描いたからか、リスナーにも恋愛色が強めの歌として捉えられてる節があるよね。もちろんあらかじめそう受け取ってもらってもいいように書いたつもりだし、その点では想定内の反応だったな。
似たようなポジションに 『耳鳴り』 や 『明るい曲』 があるけれど、あの辺とはまた一線を画す位置にあって、確かにほどよいアクセントになってくれたのかもしれないね。
dino:
『耳鳴り』 とか 『明るい曲』 も似たようなポジションではあるんやけど、なんというかこの2曲は日常生活の中の苦悩とか葛藤みたいな気がするんよね。そういう意味では 『トゥルーエンド』 はもう少し違うレイヤーに居るというか。
何というか上記の2曲より 「関わり合い」 そのもの に重きが置かれてる気がするな、と。
神部:
そうだね。この歌詞を読んだだけでは 「僕」 と 「君」 がどんな関係性なのか具体的には分からなくて、せいぜい読み取れるのは
「再会を誓った後に引き裂かれ、そのまま離れ離れになった二人」
ってことぐらい。だからこそ聴き手がそれぞれの別離や未練、つまりは “自分だけの物語” を重ね合わせる余地が生まれると思ってぼくもああいう風に書いていて。
多種多様な他者との関わり合いの中で、心に深く刻まれた出会いと別れ、ただその一つを思い描ける一曲になればと考えていたから、dinoの印象は的を射ていると思うよ。
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6.歌詞について
神部:
ちょうど歌詞の話になったし、『イーハトーヴ』 や 『ヴァイタルサイン』 の時にはあまり触れられなかったから聞いてみたいんだけど、みんなは 『トゥルーエンド』 の歌詞について何かある?
江口:
ずっと思ってたんやけど、「湿気った風」 が吹いてる 「地下鉄」 って烏丸のこと?
神部:
そう。ぼくの中では京都市営地下鉄線と阪急線が交差する四条烏丸駅のことだね。市営地下鉄線も大概なんだけれど、特に阪急烏丸駅は年中電車が来るたびに埃っぽくて気持ち悪い風が吹いて、いつも気が滅入ってたんだ。そして京都市営地下鉄線も阪急線も、ぼくが本当に行きたい場所には絶対に辿り着かない路線でしかないって思いもあった。
『耳鳴り』 でも電車の描写が出てくるように、ぼくにとって近畿圏の公共交通機関は、
「望んでなんかいなかったはずの場所に来てしまった」
って感覚をもたらすものとして描かれるパターンが大半だね。
江口:
確かに!!
「猛スピードで走る特急」 = 止まらない = 烏丸 か!
めっちゃすっきりした(笑)。
神部:
あれ、烏丸は特急も止まらなかったっけ?
一応 『耳鳴り』 は竹田駅なんだけどね(笑)。でも西院とか大宮駅なら特急は止まらなかったから、よく過ごしてたあの辺も印象付いてる一部なんだとは思う。
dino:
『耳鳴り』 って勝手に京阪とか近鉄の丹波橋くらいやと思ってた(笑)。良くも悪くも俺と慈雲は学生時代にあの辺りに思い出あるしね……(笑)。
『トゥルーエンド』 に関してはこっちも勝手に京都じゃなくて東京とか首都圏かなーと思ってたわ。曲の雰囲気からかな? なんでかはわからんが……。
神部:
それだと完全にぼくとdinoの学生時代になるね(笑)。竹田駅も含めて、近鉄線にはろくな思い出がないなあ……(笑)。
あくまでぼくの中ではの話だし、曲を創る上では田舎から東京に上京した人をイメージして書いていたから、むしろ同じ近畿圏にいたdinoがそう感じてくれたならうれしいね。
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7.メンバーランキング
『トゥルーエンド』 ランキング
神部: 1位
こにー: 9位
dino: 10位
江口: 2位
神部:
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