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BBブリッジ公式ブログ クワトロB(BB-Bridge Blog)

ライフサイエンス・メディカル分野の研究開発動向などの情報を発信しています。本ブログへのリンクは大歓迎です。ブログ内容や写真のすべてまたは一部の引用は事前にご連絡をお願いします。

おはようございます。

BBブリッジの番場です。

 

 久しぶりの投稿です。以前から本ブログで取り上げているCAR-T(キメラ受容体T細胞療

法)について、先週から今週にかけて大きな動きが立て続けにありました。

 

 1つは既に承認申請段階にありましたNovartisのCAR-T(キメラ受容体T細胞療法)であるKymriah (CTL019)が、遂に8月30日に米国FDAに承認されました。対象は再発性の前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)である25歳までの患者です。KymriahはNovartisとペンシルバニア大学との共同開発として進められました。具体的には患者の血液から採取されたT細胞にレンチウイルスによってCD19を標的としたCAR(キメラ受容体)の導入が行われます。

 米国におけるKymriahの製造は、ニュージャージー州の専用工場で行われますが、この工場は細胞医薬品Provengeを販売していたDendreon社(2014年倒産)が保有していた施設を、Novartisが4,300万米ドルで取得したものです。

【Novartisプレスリリース】

 

 以下は米国のニュースサイトからの引用ですが、Kymriahの1回当たりの治療はおよそ47万5,000米ドル(約5,000万円強)になる見込みです。但し、米国の保険機構であるメディケア・メディケイドと協議を進めており、治療後1か月以内に効果があった患者のみ費用を徴収するプランが選択される見込みです。

【9月1日 bloombergニュース】

 

 

 また、CAR-Tの重要な副作用であるサイトカイン放出症候群について、特効薬としてCAR-Tの臨床試験で適用外使用されていた抗IL-6抗体アクテムラ(Roche/中外)も、同日に米国FDAに正式に承認されました。

【Rocheプレスリリース】

 

 CAR-Tは細胞医薬品市場の最も大きなドライバーになると期待されており、今回、世界で初めてCAR-Tが細胞医薬品として承認されました。血液がんは患者数が少ないですが、がん種の適用が増加すれば、ブロックバスターも登場すると期待されています。

 価格について今回は5,000万円という高い価格になりましたが、今後は開発競争や適用患者の増加などにより、2,000万円前後まで下がると見込んでいます(BBブリッジ調査)。

 

 もう1つ大きなニュースはGilead Sciencesによる米国Kite Pharmaの買収で、買収の総額は119億米ドル(約1兆3,000億円強)です。Kite PharmaはCAR-T開発の中心となっている1社であり、既に承認申請段階の開発品も保有しています。同社は2009年に設立され、従業員は200名程度のベンチャーです。このようなベンチャーで承認された製品も持たない企業が1兆円を超える金額で買収されたのは、医薬品業界においても異例中の異例のことです。Gilead SciencesはC型肝炎の治療薬で年間売り上げ1兆円を軽く超える製品を持っていますが、次の柱になる分野としてCAR-Tに投資したと考えられます。

【Kite社プレスリリース】

 

 さらに9月4日には武田薬品工業とCAR-T開発を進める日本のベンチャーであるノイルイミューン・バイオテックとの提携が発表されました。ノイルイミューン・バイオテックは次世代CAR-Tの実用化を目的に2015年4月に設立されたベンチャーです。同社の次世代CAR-T関連技術は、山口大学の玉田耕治教授らによって開発されたもので、詳細は割愛しますが、CAR-Tでの治療が難しい固形がんに高い効果を示すと期待されています。

 武田薬品工業は次世代CAR-Tの実用化のための共同研究を実施し、ノイルイミューンの持つ一部パイプラインの独占的な開発・販売権を得るオプション権を取得しています。

【武田薬品工業プレスリリース】

 

 

 世界初のCAR-T承認、超高額でのKite社の買収、我が国トップの製薬企業によるCAR-T開発参入、この3つのニュースを見ると医薬品業界は明らかに大きな変革期を迎えていることがわかります。既存の医薬品に加え、細胞医薬品など新しい技術の積極的な取り込みと、その新しい技術・製品に合わせた普及方法(保険償還やプライシング)が更に重要になると考えられます。  

 

 BBブリッジではCAR-Tを含む細胞医薬品の開発やビジネス動向をまとめたレポートを本年3月に発刊しています。ご興味がある方は以下をご覧ください。

 

【技術・市場調査レポート】

 2017年版 世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望