おはようございます。
BBブリッジの番場です。
昨日は都内の大学で行われた医療関連のセミナーに参加してきました。
そこで聖路加病院の福井 次矢院長が「Quality Indictor(QI)を用いた医療の質管理」というテーマで講演をされており、非常に興味深い話でしたので記載したいと思います。
医療の質とは「患者に対して行われる医療が望ましい健康アウトカムをもたらす可能性の高さ、その時々の専門知識に合致している度合」と定義されており、QIは医療の質を測るための物差しのことです。
聖路加病院では福井院長が就任した2005年以降、医療の質を向上させるために数多くの取り組みを進めているとのことでした。例えば患者の転倒・転落を減らすため「発生率」「アセスメント(転倒・転落しやすい患者かどうかを事前に評価すること)実施率」「予防対策立案率」などの項目を入院・外来患者それぞれで評価・数値化し、目標値を達成するために日々改善・努力しているそうです。
聖路加病院では様々なQIを利用して改善・努力を進めているそうですが、特に興味深かったのは「糖尿病患者における血糖コントロール」です。血糖コントロールのためのマーカーとして糖尿病の進行を表すHbA1c(グリコヘモグロビン)を用い、年度の最後の受診におけるHbA1cが7.0%以下の患者がどの程度いるのかを調べています(この7.0%以下は糖尿病患者の血糖コントロールが上手くできているという数値です)。さらにこの数値は診療科全体として算出するのではなく、各医師別に算出しています。その結果、医師の間にはそれぞれが受け持つ糖尿病患者のHbA1cが7.0%以下に抑えられている比率に大きな差があり(39.2%~81.5%、平均59.0%)、それぞれの医師が使用している糖尿病治療薬にも大きな違いがあったとのことでした。具体的には血糖コントロール率が良い医師とそうでない医師には使用している糖尿病治療薬の種類が大きく異なっており、コントロール率が悪い医師は一般的にあまり利用されていない糖尿病治療薬を継続して使用している傾向があったとのことでした。
このような結果に対し、福井院長は対象となる医師に直接話を聞き、当該データを見せながら改善を促すことを実施し、これによって診療科全体の血糖コントロール率は飛躍的に向上したそうです。また、血糖コントロールだけでなく、高血圧患者における降圧薬においても同様の評価を実施しているとのことです。
このように病院そのものだけでなくその病院の医師それぞれの医療の質を評価することは、病院全体の診療の質を向上させるために非常に有効であり、治療薬だけでなく例えば画像検査なども同じ指標で評価することでより質の高い医療を提供できる可能性があります。医師が担当している患者の傾向の違い(例えば重度の患者が多い など)も考慮する必要がありますが、ビックデータ解析も応用し、QIを用いた評価が医師の診療にも利用されることで、今後、日本における医療の質がさらに向上することが期待されます。