CAR-T療法が承認申請・実用化へ大きく近づく!! | BBブリッジ公式ブログ クワトロB(BB-Bridge Blog)

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 T細胞遺伝子改変療法CAR-T(Chimera Antigen Receptor T-cell Therapy)療法について、開発が先行しているNovartisのCTL019の国際共同治験(フェーズII)の結果が12月4日に公表されました。CTL019はCD19を標的としたCAR-Tで、ペンシルバニア大学によって開発され、Novartisが開発販売権を取得しています。
 第58回米国血液学会で発表されたのは、小児および若年成人を対象とした再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病に対する治験「ELIANA試験」の結果です。
 治験は米国、欧州、カナダ、オーストラリア、日本で行われ、50症例の中間解析の結果、81%(41例)の患者で完全寛解(血球の回復が不十分であるが、完全寛解を示した患者も含む)を達成しています。
 CAR-T療法の最も大きいな課題である重篤な副作用について、48%の患者でグレード3もしくはグレード4のサイトカイン放出症候群があったが、死亡例はなかったと報告しています。

 

【Nnovartis 12月4日プレスリリース】
Novartis presents results from first global registration trial of CTL019 in pediatric and young adult patients with r/r B-ALL


 Novartisはこの試験結果も踏まえ、2017年初めには米国FDAに、2017年後半には欧州EMAに承認申請を行うとしています。CTL019は2014年に米国FDAからbreakthrough therapyの指定、2016年に欧州EMAからPRIME (PRIority MEdicines)の指定を受けています。これらは画期的新薬をいち早く患者の下に届けるための規制当局の支援プログラムであり、Novartisによって承認申請が行われれば、早期の承認が期待できます。

 

 CAR-T療法はがん治療を革新させる可能性があると期待されていますが、実用化の大きな課題の一つが製造である。CAR-Tでは患者の血液を採取して、加工(遺伝子導入)して患者に戻すため、品質管理面から各国に製造拠点が必要になります。従って従来の医薬品のように治験など必要量が少ない場合は、1か所から輸入するなどの手法が使えない恐れがあります。実際にCTL019の国内における治験薬の製造は神戸の先端医療財団で行われています。CTL019が国内でも承認された場合、製造拠点をどのように運営するか検討する必要があります。
 

 このようにCAR-Tなど細胞製品の製造は、従来の医薬品の製造と大きく異なるため、細胞製品の開発を行う企業は入念な検討が必要です。
 BBブリッジでは、2016年10月に細胞製品の製造技術やビジネスを纏めた以下のレポートを発刊しています。また、CAR-Tの開発に関する情報も以下のブログでまとめておりますので、ご興味がある方はこちらをご覧ください。

 

【技術・市場調査レポート】再生医療・細胞医薬品製造技術の最新動向とビジネス展望

 

【ブログ】CAR-T療法・TCR療法の開発の方向性は!?