1周年記念シンポジウム(テーマ:医療経済評価)を開催しました | BBブリッジ公式ブログ クワトロB(BB-Bridge Blog)

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おはようございます。
BBブリッジの番場です。


先日、当社主催の1周年記念シンポジウム「医療経済評価の導入と我が国の医療産業の方向性」が無事に終了しました。当日はたくさんの方に参加頂きありがとうございました。当日の内容について簡単にご紹介させて頂きます。

東京大学の鎌江 伊三夫先生からは「医療経済評価の概要と欧米・アジアの最新動向」というテーマで、医療経済評価の概念や欧州(特に英国NICE)の動向やアジアにおけるトピックスなどについてご紹介頂きました。以下はそのポイントです。
・世界大2位の医薬品や医療機器の市場を持つ日本が医療経済評価の導入を導入検討していることに世界が注目している。
・医療経済評価に関する世界的な学会であるHTAi(Health Technology Assessment international)の2016年の年次大会は東京で開催予定。
・医療システムが自由診療の米国においては政府やFDAは医療経済評価(医薬品や医療機器の費用対効果)には全く介入しない。しかし、米国市場が大きいため各企業間の競争が激しく、例えば製薬企業が医療保険会社を介して自社品を医療現場に導入していくには医療経済評価データが必須になっている。米国は医療経済評価に関する研究者や教育が世界で最も充実している。


国際医療福祉大学 池田 俊也先生から「日本における医療経済評価導入の方向性と課題」というテーマで、主に中医協 費用対効果評価専門部会での議論の経過についてご紹介頂きました。以下はポイントです。
・日本では2016年から医療経済評価の試験的導入を目指して議論が進められている。
・医療経済評価の対象となる医薬品は製品単価や売上高が一定以上のもの(但し基準額は未定)。
・医療経済評価の評価手法はQALYを中心に生存期間など適切な指標を用いる。
・医療経済評価を実施するタイミングは承認・上市した後に一定期間の経過後である。その結果は薬価の再算定の資料として利用する。
・増分費用効果比(ICER:incremental cost-effectiveness ratio)の閾値については決まっていない。

但し、上記はあくまでも現状での議論であり、最終決定ではないことにご注意ください。


武田薬品工業株式会社 山部 薫様からは「製薬企業における医療経済評価の現状と今後の展望」というテーマで製薬企業の立場として医療経済評価への取り組み状況についてご紹介頂きました。以下はポイントです。

・製薬企業では医療経済評価への対応の必要性が高まっているが、専門人材が不足している状況である。
・新薬の承認審査時に医療経済評価を行うと、評価に時間がかかるため実際に製品が医療保険で使用できるまでにタイムラグが生じ、患者が新薬にアクセスできなくなる。
・医療経済評価のために患者のQOLを測定するスケールには疾患横断的なものや特定疾患に特化したものなどいくつかの種類がある。どのようなスケールを測定するかは非常に重要である。


なお、2015年11月2日(月)に鎌江先生の所属が主催で以下のシンポジウムが開催されます。
第4回「医療技術評価」国際シンポジウム 医療技術評価と国際学会への招待-高まるアジアと日本への関心-

医療経済評価は医薬品や医療機器の開発にとって切り離すことができないものになっています。ご興味がある方はご参加してみては如何でしょうか。

最後にシンポジウム当日の写真をご紹介します。