
“ふてぶてしい”。アスクレンのMMAは日進月歩の現代MMAにおいて語られる技術論、そして彼の輝かしいレスリング゛の実績をこんな言葉で片付けてしまえそうなほど無骨である。ラウンド終了時には当然の如く上のポジションにいるわけだが、相手選手の“早くどけよ”という心の声が見ているこちらに聞こえてきそうなほどゆっくりと立ち上がり、だらだらと歩きながらコーナーに戻るそのさまは、休日に寝癖をつけたままのオッサンが時間を持て余してブラーッと部屋を移動するそれと変わらない。
だがそのふてぶてしさ、そして痛点が存在しないかのような驚異的な打たれ強さが、彼のレスラーとしての強さをMMAで十二分に発揮させ連勝街道を突っ走らせている。試合内容といえばスタンドでの動きはとても現代MMAで一団体のチャンピオン選手とは思えず、かといってグラウンドでも柔術的な動きは多少見せるものの試合の8割方は力ないパンチを打ち続けるのみ(本人は本気で殴っているのだろうが)。だがその度に毎回起こるブーイングの嵐の中、そしてUFCのディナ社長から『睡眠薬より効く』と揶揄されたほどのいわゆる“つまらない試合”を延々とやってのけ、おまけに試合後には観客への投げキッス。並大抵の神経ではない。だがそんな彼の勝ち続ける姿はまるで『プロとは魅せるもの』という一定数存在する巷の意見をあざ笑っているかのようである意味痛快にも見える。
大方の観客にとってアスクレンはもはやヒール中のヒールである。強すぎるがゆえに“どうやって彼を倒すのか”と対戦相手に期待を込めた視点で試合を見てしまうのだ。そうなると世界最高峰と呼ばれる選手達との絡みの期待が俄然湧いてくるのだが、ディナ社長との関係や2人の性格を考えると夢のまた夢で終わりそうな気配もある。だがこのままマイナー団体で勝ち星を積み重ね、いずれ伝説となるのがアスクレンらしいとも思うのである。