『言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか』 (中公新書 )
我々が直視している「世界」は、
言葉に伴う意味体系で作られ
たアーティフィシャルな「世界」
と言える。
その言葉を人類はどのように
生み出して来たのか?
言葉になる前の音だけを
発する赤ちゃんの喃語(なんご)
から、擬音語・擬態語である
オノマトペを習得。
そのオノマトペに言語発生と
生成の鍵があるとみて著者は
壮大な言語探検の旅に出た。
しかし、目の前に聳え立つ言語の
成り立ちは、エベレストより遥か
高みを目指さなければならなかった
という。
以下、目次
はじめに
言語という謎/記号接地という視点/言語の抽象性
――アカを例に/言語の進化と子どもの言語習得の謎
第1章 オノマトペとは何か
「オノマトペ」の語源/オノマトペの定義/感覚イメージ
を表すことば?/写し取っている記号?/オノマトペは
「アイコン」/オノマトペの写し取り方アイコンと違う点/
まとめ
第2章 アイコン性――形式と意味の類似性
単語の形のアイコン性/音のアイコン性――清濁
の音象徴/続・音のアイコン性その他の音象徴/
発音のアイコン性――角ばっている阻害音、丸っこ
い共鳴音/赤ちゃんにもわかる音象徴/聾者の音
象徴感覚/発音の仕方でアイコン性を高める/
ジェスチャーでアイコン性を高める/オノマトペの
脳活動/音象徴の言語個別性/日本語の音韻体系
――ハ行、バ行、パ行/韓国語とポーランド語の音韻
体系/他言語のオノマトペは理解可能か/音象徴の
使い方は言語間で異なるのか/まとめ
コラム1 主食は「パ」「バ」「マ」「ファ」「ワ」
第3章 オノマトペは言語か
言語の十大原則とオノマトペ/音声性・聴覚性/
コミュニケーション機能/意味性/超越性/継承性/
習得可能性/生産性/経済性――言語になぜ経済
性が必要か/続・経済性オノマトペと経済性原理/
離散性/恣意性/二重性/まとめ
第4章 子どもの言語習得1――オノマトペ篇
子どもが小さいほどオノマトペを多用する/絵本
の中のオノマトペ/オノマトペは言語の学習に役
に立つのか/音と形の一致・不一致がわかるか/
ことばの音が身体に接地する第一歩/名づけの
洞察――ヘレン・ケラーの閃き/クワインの「ガヴァガ
ーイ問題」/単語が多義であることも学べる/オノマ
トペは言語学習の足場/まとめ
第5章 言語の進化
言語の理解に身体性は必要か/永遠のメリー
ゴーランド/AIは記号接地問題を解決できるのか/
一般語と身体性/音と意味のつながり/隠れた
オノマトペ/オノマトペと日本語の方言/なぜ言語・
地域固有性があるのか/なぜオノマトペから離れ
たのか/ニカラグア手話――アナログからデジタル
への進化/事象を要素に分割して結合する/
デジタル化するオノマトペの音象徴/意味の
派生によってアイコン性を失う/脳の情報処理
と言語/オノマトペが苦手な概念/言語の体系性
/副詞>スル動詞>一般動詞/英語にオノマトペ
の体系がない理由/恣意性からアイコン性への
回帰/「アイコン性の輪」仮説/オノマトペの歴史/
まとめ
第6章 子どもの言語習得2――アブダクション推論篇
ガヴァガーイ問題再び/一般化の誤り――かわいい
事例から/「ポイする」/オノマトペを疑う/最強の
データベース、身体を持つロボット/ニューラルネット
型AI――ChatGPT/記号接地できずに学べない子
どもたち/ブートストラッピング・サイクル/名詞学習/
動詞学習/動詞のエッセンスへの気づき/記号接地
問題の解決/知識を使う力/演繹/推論、帰納推論、
アブダクション推論/ヘレン・ケラーとアブダクション推論
/帰納推論による言い間違い/アブダクション推論によ
る言い間違い/誤りの修正/まとめ
コラム2 子どもの言い間違い
第7章 ヒトと動物を分かつもの――推論と思考バイアス
チンパンジー「アイ」の実験/非論理的な推論/
動物はしない対称性推論/対称性推論のミッシン
グリンク/ヒト乳児の対称性推論/チンパンジーの
反応/「クロエ」とアブダクション推論の萌芽/人類の
進化/まとめ
終 章 言語の本質
本書での探究を振りかえる/AIとヒトの違い/
今井・秋田版「言語の大原則」
この書は、現今流行りのAI言語にも
言及する。
人間の言葉理解は「記号接地」(身体感覚)
を経て理解しているが、AIは言葉を単なる記号
としか看做していない、と指摘する。
つまりは、AIは言葉を論理的に並べているだ
けで、理解しながら言葉を駆使してないという
ことになる。
まあ、これからAI言語に対して様々な側面から
その問題点がアプローチされてくると思われるが、
興味ある方はこの本を入門書として活用される
ことを推奨致します。