映画『シャルギー(東洋人)』 | バザラスからのアジアン紀行

映画『シャルギー(東洋人)』

俺は20代の頃にイスラム・東洋哲学の泰斗 井筒 俊彦さんの 
『意識と本質』(岩波文庫)を読んだ。 

背伸びするのが得意な年頃だった(笑)。 

中身はほとんど忘れてるから、何も理解出来なかったのだろう(笑)。

ただ、とんでもなく凄い学者が海外で活躍されて
いることだけは分かった。

井筒 俊彦(1914-1993)とは? 

昭和期の言語学者、哲学者、イスラーム学者。 
東京生まれ。 

幼少のころから在家の禅修行者であった父に独自の内観法を教わり、 
禅書にも親しんでいた。
  
慶應義塾大学文学部英文科卒業。 

卓越した語学力によって、初期にはギリシャ神秘思想、イスラム思想、 
コーランの言語哲学的研究に従事。 

1932年、日本で最初の『コーラン』の原典訳を刊行。 

厳密な言語学的研究を基礎とする訳は、現在にいたるまで 
高く評価されている。
   
また、『コーラン』についての意味論的研究『意味の構造』(原著英語)の
 評価も高い。 
 
中期には、ペルシャ・イスラム哲学を研究し、日本のイスラム研究の 
水準を飛躍的に引き上げた。
 
後期には仏教思想・老荘思想・朱子学などを視野に収めた独自の東洋哲学 
の構築を試みた。 

慶応義塾大学、カナダ・マッギル大学、イラン王立哲学研究所の教授を歴任。
   
1967年以降、エラノス学会で主として東アジア思想に関して公演を続けた。 

大部分の著作が英文で書かれていることもあり、日本国内でよりも、欧米におい 
て高く評価されている。


上記の通り、井筒さんは世界的にも重要な東洋学者であり、 
日本以外の国々では有名で、日本では無名に等しい。 

なぜか?

それは、井筒さんが長年に亘ってイスラム哲学や法学を研究され 
てきたからだ。
 
西洋中心主義に洗脳された日本のアカデミズムと 
その教育を受けて来た我々日本国民にとって、 
イスラムは、辺境の文化文明として取り上げられている。 
 
実は、近世まではイスラム圏こそが世界の中心で、 
西洋こそが辺境であったにも関らずである。

そして、我々が学んでいる諸学問の基礎において、
イスラム&イランの果たしてきた役割は非常に重要で
あるにも関わらずである。
 

その偉大な学者である井筒さんを偲んで、ドキュメンタリー映画が完成し、 
先日上映された。 

以下、長くなるがイランのニュースサイトPars Todayより。
 

 


 






「日本のイスラム学者、言語学者、東洋思想研究者の井筒俊彦氏の 

生涯を描いたドキュメンタリー映画の制作が終了しました。


 

井筒俊彦氏は、イランの学界だけでなく、トルコ、エジプト、レバノン、 

マレーシアなどのイスラム諸国でも、著名なコーラン研究者、イスラム 

学者として知られています。 


この映画では、イランの哲学者のホセイン・ナスル氏、作家のメフディ・モハッゲグ氏、 

歴史学者の黒田俊雄氏、思想家のウィズネスキー氏など、世界各国の60人 

を超える研究者が、井筒俊彦氏の人生、作品、思想に関して見解を述べています。


   

この映画にはまた、井筒研究家のバフマンザッキープール氏、 

井筒氏のもとで学んだゴラームレザー・アーヴァーニー氏やナスロッラー・ 

プールジャヴァーディ氏、井筒氏と家族ぐるみの親交があった

ノウシャーファリーン・アンサーリー氏、西洋哲学者のキャリーム・モジュタヘディ氏、 

現在イラン外務次官で、以前に日本駐在イラン大使を務めたアラーグチー氏、 

コーラン研究者のアフマド・パーキャトチー氏、元大阪大学教授のハーシェム・ 

ラジャブザーデ氏、シャフリヤール・ニヤーズィー氏などが出演しています。

   

この映画は、イラン、日本、フランス、スイス、イタリア、トルコ、カナダ、 

アメリカ、シリア、スペイン、中国など13カ国で撮影が行われ、すべての

インタビューはそれぞれの国の言語で撮影されたために、およそ12の

言語が含まれ、全編は130分です。 


この映画はイラン、日本、カナダで関係者向けに特別に公開されます。

 
 



イラン・日本国交樹立90周年を前に、イランと日本の政府関係者や 
思想家らの参加のもと、ドキュメンタリー映画「東洋人」(シャルギー)が 
東京で上映されました。
   

このドキュメンタリー映画は、日本の著名なイスラム学者で、コーランを 

日本語に翻訳した故・井筒俊彦氏の生涯と思想を描いたものです。 


IRIB通信が、在日イラン文化参事官の話として伝えたところによりますと、 

マスウード・ターヘリー氏の制作によるこの映画の公開式典は、日本の著名 

な思想家や要人の列席のもと、24日火曜、在日イラン文化参事室により開催 

されました。 


この映画の制作にあたっては、12カ国以上の著名な思想家102人とのインタビュー

 が行われています。  

https://www.youtube.com/watch?v=MtVsQbXnyD0&t=31s


今回の式典の最初にあたって、ディーヴサーラール在日イラン文化参事官が、 

日・イ国交樹立90周年記念とイランイスラム革命勝利40周年記念がちょうど 

同じ年に当たる事に触れ、「イランと日本は、それぞれ西アジアと東アジアの 

大国として、長い交流の歴史を持ち、常に奥深い友好関係を維持してきており、 

この2つの国の国民は、互いの文化に大きな関心を持ち続けてきている。

   

こうした中で、日本のイスラム学者やイラン学者のエリート、有識者たち、 

さらにはイランの日本学者が果たした大きな役割が指摘されるべきであり、 

我々はこうした親密な関係が、これらの人々に負うところが大きいと考える」

 と述べました。  


井筒俊彦氏は、日本のイスラム学者、哲学者であり、コーランを日本語に翻訳 

したとともに、イスラムや道教、仏教などの東洋の思想哲学にも特別な注目を寄せ、

 最終的にはアジア哲学という形で自らの哲学を提唱しました。  


今回公開されたドキュメンタリー映画の多くは、井筒氏のこうした哲学の

基盤の形成や、その批評に重点が置かれています。」