5/17 直木賞作家の車谷長吉氏が死去
産経ニュースより。
「「赤目四十八瀧(あかめしじゅうやたき)心中未遂」などで知られる
直木賞作家の車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ、本名・嘉彦=よしひこ)
氏が17日、誤嚥(ごえん)による窒息のため亡くなった。
69歳。
昭和20年、兵庫県生まれ。慶応大学卒業後、広告代理店や出版社、
料理店などで働きながら私小説を書き続け、自身の生い立ちなどを
題材にした「鹽壺(しおつぼ)の匙(さじ)」で平成5年、芸術選奨文部
大臣新人賞 と三島由紀夫賞を受賞。
10年に初の長編「赤目四十八瀧心中未遂」で直木賞、
13年に「武蔵丸」で川端康成文学賞を受けた。
16年には、雑誌「新潮」に発表した私小説「刑務所の裏」に実名で登場
させた人物から名誉毀損(きそん)で訴えられ、その後和解したが、17年
に私小説作家としての廃業を宣言した。
妻は、詩人の高橋順子さん。」
15年前、可愛がって貰っていた元テレビ東京の常務に
「凄味のある存在感を持つ小説家がいるぞ」と聞いた。
何冊か買って積んであるが
直ぐに読んだのはこの本。
人間の浅ましさ、強欲さ、意地汚さの極限が
強烈な筆力で綴られていく内容だった。
以下、解説より。
「吉祥天のような貌と、獰猛酷薄を併せ持つ祖母は、闇の高利貸しだった。
陰気な癇癪持ちで、没落した家を背負わされた父は、発狂した。
銀の匙を堅く銜えた塩壷を、執拗に打砕いていた叔父は、首を縊った。
そして私は、所詮叛逆でしかないと知りつつ、私小説という名の悪事を
生きようと思った。
―反時代的毒虫が二十余年にわたり書き継いだ、生前の遺稿6篇。
第6回三島由紀夫文学賞。
芸術選奨文部大臣新人賞。」
他の本を読む前に、車谷さんは逝ってしまった。
慎みましてお悔やみ申し上げます。
合掌。