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Vol.80 FNY(16) Cellist Christine Walevska

Fabulous New Yorkers 16回  
Cellist Christine Walevska チェリスト クリスティーヌ・ワレフスカ


今、私の部屋には素晴らしいチェロの曲ボロニーニの”エコー・セレナーデ“が流れています。すすり泣くようなチェロの音が、私の胸を掻き乱します。
この曲を引いているのはチェロの女王と言われているクリスティーヌ・ワレフスカさんです。



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クリスティーヌさんのコンサートに行き、彼女の力強いそして、繊細な演奏に涙が止まりませんでした。どうしても彼女にインタビューをしたくて申し込むと彼女は太陽のような大きなほほ笑みでこころよく私の申し込みを受け入れてくれました。
私は不覚にも彼女のことを知りませんでしたが、チェロ奏者と言えば、クリスティーヌ・ワレフスカありと言われているくらい、すごい人なのです。
クリスティーヌさんは、楽器商の父とバイオリニストの母の間に生まれ、子供の頃から音楽に囲まれて育ちました。
「母はバイオリニストでしたが、父がチェロを弾いていて、私はなぜか、チェロの音に魅力を感じて、父に教えてほしいと自分から言い出したのです」
彼女は8歳からチェロを弾き始めました。彼はクリスティーヌさんの為に1832年に作られた子供用のチェロを用意してくれたのです。



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そして、アルゼンチンの名チェリストで作曲家のエニオ・ボロニーニに出会い、9歳からボロニーニに師事します。
「彼は素晴らしい音楽家でした。彼の前で演奏すると彼はとても気にいってくれて、両親に”彼女はすでに素晴らしいチェリストだ“と言ってくれたのです」
ボロニーニはクリスティーヌさんを娘のように可愛がり、そして良き師として彼女だけが弾くようにと彼の楽譜を託してくれたのです。今、私の部屋に流れている曲もクリスティーヌさんだけが弾くことを許された情熱的で切ない名曲です。
クリスティーヌさんは10代で米国でデビューし、フランスのコンテストでアメリカ人として初めて優勝し、奨学金も得ることができました。その後は世界各国で演奏旅行をしました。



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またクリスティーヌさんは"Women of 20th Century"という本に、インディラ・ガンジーやバレリーナのマーゴット・フォーンテーンなどと一緒に米国を代表する音楽家として紹介されています。



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"The Way They Play"という本にも紹介されています。



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そして、なんと36年ぶりに今年の5月日本で公演をしました。



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日本公演を記念したCD“The Artistry of Christine Walevska”も発売されました。クリスティーヌさんは私あてにサインもしてくれました。



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アルゼンチンで結婚し、しばらくの間、米国や他の国での演奏は少なくなっていました。けれども日本の熱烈なファンたちが、どうしても彼女の演奏を聴きたくて、クリスティーヌさんを日本に招くボランティアの会を発足させて招聘を実現してしまったのです。
彼女は36年前のポスターをまだ大切に保存していました。



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日本での10公演はとても成功し、京都にも行き、彼女は本当に久しぶりの日本を満喫したようです。



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セントラルパークを見渡す素敵なアパートでは、アルゼンチン人の夫と娘さんの3人で暮らしています。



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部屋



年齢は秘密ですが、10代でデビューしたクリスティーヌさんはもう何十年もチェロを弾いているのですが、今でも毎日、練習しているそうです。
「若いころはしばらく弾かなくても体が覚えているのですが、年を重ねると毎日、練習しないとだめなのです」とさりげなく語るクリスティーヌさん。そのプロ根性に頭が下がります。こうしたたゆまぬ努力があるからこそ、涙と感動を誘う名演奏ができるのでしょう。
クリスティーヌさんのことをもっと知りたい方はこちらへ

様々なインタビュー記事や写真を見ることができます。