利上げ判断には景気のほかにも考えるべきことがある | OVERNIGHT SUCCESS

OVERNIGHT SUCCESS

オーバーナイトサクセス >>> 
帰国子女の英語データ集(英語喉 ネイティブ音完コピ 独り言英語)

利上げ判断には景気のほかにも考えるべきことがある
政策・経済研究センター 研究員
大島一宏

日銀が7月14日にゼロ金利政策を解除した。適切な金利は、物価を安定させるために必要なのは言うまでもない。金利が低すぎると経済に過熱感が生まれ、モノの価格が上がりやすくなってしまったり、不動産や株式といった資産価格も実力以上に上昇し、経済に歪みが生じやすくなる。また、経済が真の実力をつけていくためにも金利は必要である。もし金利があまりにも低ければ、安いコストで借入ができるため、効率がそれほど良くないものであっても設備投資を行いがちとなる。効率の悪い設備があまりに増えれば、国全体の生産性が低下する。国全体の生産性が低下するということは、国として儲からなくなるということだから、労働者にその果実が回りにくい構造を生む可能性が高まる。そうすると、内需のしっかりとした経済へとなかなかシフトできないということになりうる。

このように、一般論としては利上げが必要だと考えられるが、現局面においてはやや異なる観点から考慮しておくべきことがある。現在の景気回復のきっかけは、中国向けの輸出に支えられた面が相当大きいが、実はここに将来の日本経済の抱えるリスクが潜んでいる。日本の企業は経済が急拡大する中国向けに、最新型の設備投資機器をかなりのペースで輸出した。一方の日本では、バランスシート調整のために設備投資は長らく抑えられ、設備は古くなる一方であった。もしこの状況がいまだに大きく改善していないとすれば(私はそう考えているが)、日本の国際競争力が将来的に低下する確率が極めて高くなる。

経済統計上の数字でみれば、現在の日本の設備投資にやや過熱感はあるといえなくもないが、将来の国際競争力、設備のクオリティを考えれば、まだまだ設備投資が必要と考えられなくもない。設備のクオリティがどのレベルにあるか勘案した上で利上げのジャッジをしていかなければ、中長期的な我が国の競争力に負の影響を及ぼす可能性がある。一般の経済学からは離れた議論であるため、受け入れ難いロジックかもしれないが、そうしたクオリティに関する情報を取り込んだ上で判断を行っていくべき状況も時としてあるのではないか。