#帽子と預言者 #鳥が鳴き止む時  | 新宿信濃町観劇部日記時々野球とラグビー

新宿信濃町観劇部日記時々野球とラグビー

兵庫県出身。還暦直近の年男。文学座パートナーズ倶楽部会員。

パレスティナ演劇上演シリーズ 

名取事務所公演 

演出 生田みゆき

「帽子と預言者」

作 ガッサーン・カナファーリー 

翻訳 渡辺真帆 
「鳥が鳴く止む時-占領下のラマッラー」

作 ラジャ・シャハデ

翻訳 吉原豊司 


会場:下北沢『劇』小劇場


パレスティナ演劇上演。これまで「紛争地域の演劇作品」に何度か足を運んだこともあって、紛争に関連するテーマという先入観を持って劇場に入った。


後半の「鳥」の方はまさにイスラエルの「違法で非人道的な占領に、戦闘員でも政治家でもない普通のパレスティナ人がどう向き合ったのか」(当日パンフレットより)というテーマで、紛争そのもののリアリティが鮮明に伝わってくる作品だった。

一方の「帽子と預言者」は抽象的なストーリーの不条理劇で、帽子や預言者とはどういったメタファーなんだろうと考えながら観ていたが途中でその思考を止めた。もちろん〇がパレスティナ人なのかイスラエル人なのか、△が入植地かな、□は××とかの類推は働くが、実は作家はもっと深いところを考えているかもしれないと思ったからだ。


演出の生田みゆきから「謎解きを楽しんでください」と開演前に囁かれ、終演後その謎についてじっくり話す機会があった。そこで得た「一つの答え」はなるほどと腹に落ちるもので、こういった頭の体操は観劇後の大きな楽しみである。


ここでその「一つの答え」を書くのは無粋だから、キーワードとして「法」或いは「裁くとは」とか「モノの価値」「帽子の転売」「好奇心」といったものがあったことを備忘録として記載しておく。


「帽子...」では「被告」役の内藤裕志、「1番」の山口眞司、そして「女」の滝沢花野が印象に残った。「燃えるスタアのバラッド」でもそうだったが、滝沢の眼ヂカラは強い印象を残してくれた。


「鳥…」は田代隆英の実質一人芝居。ウードという弦楽器を常味裕詞が演奏し、効果抜群。


舞台美術の工夫が興味深い。あのネットに掛かった生活用品の意味を演出家から聞いて「なるほど!」と。本棚の向こう側の花園の意味も。いやはや、深い。


3/1の日曜日まで。文化庁助成、公益財団法人東京歴史文化財団アーツカウンシル東京助成、下北沢演劇祭参加作品。知的刺激を求める方々に是非観ていただきたい。