#カタロゴス 〜「青」についての短編集〜 | 新宿信濃町観劇部日記時々野球とラグビー

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兵庫県出身。還暦直近の年男。文学座パートナーズ倶楽部会員。

作・演出 春陽漁介 

2月の「ト音」に続き及川詩乃が出演していて、研修科の頃から好きな女優だけに今回も楽しみにしていた。ト音の座組の好感度が全体的に高かったこともあるし、straw & berry の「サイケデリック」で印象に残った波多野伶奈も気になっていた。


青と言えば空。週末を過ごす原村から見る八ヶ岳の上の真っ青な空。透き通ったイメージ。雲や雪の白や、木々の緑、山々の黒が引き立つ色。自己主張もするし、引き立てもできる万能さ。

若い、或いは染まっていないという意味もある。今回の作品、還暦前のオッさんがどこまで共感できるかな、と思っていたが、とんでもない。短編たちを繋ぐ、重奏低音としての「コールドベイビー」というストーリーが特に出色。感情と教育、或いは環境。コミュニティの成り立ち。それを理解できる人と客観視する人。その二人の存在が全体に深みを与えていたと感じた。

いや、若い人たちの青春を懐かしむ自分もいた。学生時代や社会人テニス部を卒業したあと、もうあの世界には戻れないと、胸を痛めた時期は確かにあった。演劇のタイムスリップ効果。鵜山仁がモジョミキボーのアフタートークで語っていた通りだ。

観劇前にモヤモヤした事があったのだが、そんな事を吹き飛ばしてくれた爽やかな作品だった。

そうそう。終演後に及川詩乃に作品の感想を話した後、通路で波多野伶奈に声を掛けた。彼女の役回りは、自己主張と引き立ての両面があったように感じた。straw & berry にまた出るそうだ。パンフを読むとなんと彼女も八ヶ岳の麓で育ったそうな。透き通った空の雰囲気は、環境のなせる技か。