#ト音 #劇団5454 #ランドリー 祝東京初日  | 新宿信濃町観劇部日記時々野球とラグビー

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兵庫県出身。還暦直近の年男。文学座パートナーズ倶楽部会員。

作・演出:春陽漁介 

 

第19回劇作家協会新人戯曲賞の最終選考に残った作品。今回は再再演とのこと。昨年の大阪公演、直前の大分公演を経て、一年ぶりに前回デビューを果たした赤坂redでの凱旋公演という位置づけらしい。
 
ということは観劇の前後に知った。いや、賞の話は少し知っていたかもしれない。ただ、観終えて、確かにこれは面白いホンだということが実感された。
 
劇団5454と書いて、ランドリーと読む。ゴシゴシ。劇団員の板橋廉平は今回秋生役だが、過去上演では藤(小黒雄太)や千葉(真辺幸星)を演じていて、男子高校生三人を全て演じたことになるそうだ。また今回公演は劇団員に替えて客演を起用するなど、カンパニーとして作品の成長性に貪欲にチャレンジしようとする意欲が十分に感じられる。
 
過剰同調性の男子高校生。解離性同一性障害と言う言葉は先日観た「見渡す限りの卑怯者」でも出てきて、そういう流れなのかなとも。但し、過去公演では解離性同一性障害とイマジナリーフレンドと少し趣向を区別していて、今回は後者に近い感じだったという。「観劇三昧」のアプリで観れるようなので、近々チェックしてみようと思う。
 
秋生と藤の「二人はどういう関係なのですか?」と新任教師の古谷(関幸治)が同僚の江角(榊木並)に聞く。「詮索しないで」と江角が止める。この時点では、私もこの二人の関係は横置き状態で次の展開に自然体で臨んだ。なるほど、そういうことだったかと判ったのは数学の五味(高野アツシオ)が終盤に屋上でタバコを吸う場面。把握するタイミングは観る人によると思うが、私はおそらく平均より少し遅いのかもしれない。
 
座長の村尾俊明が演じる体育の坂内が「嘘をついている」、と。途中までどんな嘘なんだろうと考えながら。でも彼も五味や古谷や江角、国語の戸井(松永渚)も社会の安達(石田雅利絵)も、それぞれ悪人ではなかった。職員室のメンバーは、それなりに「確かに居るかもしれない」大人の社会人で、教諭の責任に対する考えもそれぞれ。画一的な描き方でなく、多少のデフォルメはあっても相応に現実的。そう、ありそうなFAKE。
 
四人の高校生も、その純粋さがあるから客席に共感性を与えるのだと思う。比較的若い観客が多かった初日、客席の温度は高いように思ったが、キャストは手応えを感じてくれただろうか。
 
最後に書くことになってしまった。そもそも55期の及川詩乃が大阪で出演することを知り、半年後の東京公演を楽しみにしていたのだ。秀才女子高生長谷川のちょっとした嫌味と純粋さのミックスを上手く演じていて、自称応援団としては彼女の成長が嬉しかった。まだまだ試行錯誤中、この公演をこなしながら更に成長してくれることに期待しよう。
 
台詞のテンポがいい。伏線回収も鮮やか。特にチョークで書く文字や絵がこのように展開していくとは。ホンが面白く、キャストの理解度も高いからこそ演出が映えるのではなかろうか。秀作と言えよう。
 
前回出演していた座員がスタッフとして観客に目配りを欠かさない。キャスト面会で残った見知らぬ観客に対して、出演者もスタッフも丁寧に対応している。パンフレットの中身も濃く、これなら千円(中身だけなら500円)払ってもコスパが高いと思える。非常に好感度の高いカンパニー。これからもきっと成長を続けるだろうと思う。
 
TONEをト音と読む。なるほどね。