小泉和裕指揮東京都交響楽団 フェスタサマーミューザ2024(8月1日・ミューザ川崎) | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


小泉和裕都響のモーツァルトとベートーヴェン。プログラムも演奏も、野球で言えばど真ん中に直球を投げるような王道中の王道と言えるもの。

コンサートマスターは水谷晃。東京交響楽団コンサートマスターとして長年親しんだホームグラウンドに、異なるオーケストラのリーダーとして登場した。指揮者が登場する前に楽員を立たせて客席に向かって挨拶をするのは、都響の伝統を踏襲したものだろう。

 

モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K. 550は12型。ピリオド奏法とは無縁の分厚い響きで進む。カラヤンの影響はあるが、カラヤンの滑らかなレガートとは異なり、ゴツゴツとして骨太の感触のある演奏。色彩はあまりなく、どちらかと言えば単色。
第3楽章スケルツォ、第4楽章の悲劇的な表情にインパクトがあった。

 

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op. 68は16型。都響全員が一丸となって邁進する。冒頭の序奏のコントラバスの厚みがすさまじい。少し飛び出し、「ブン」という音が最初に向かってきた。演奏は大河が水嵩(みずかさ)まして、滔々(とうとう)と流れていくよう。

 

ソロや対旋律はオーケストラの中に埋もれがちだが、第2楽章のオーボエや水谷晃のソロ、第4楽章のフルートのソロは美しく浮かび上がった。

第4楽章のアルペンホルンのように響くホルンは、クレッシェンドを強調し、フレーズの中間が大きく膨らむ。第1主題は底鳴りするような響きで堂々と始まる。

練習番号N前後の再現部の頂点も気合が入る。

コーダは小泉の真骨頂。ピウアレグロから力を蓄えながら盛り上げ、最後は下から突き上げるように主和音が4回響き渡って終えた。

 

個人的にはこの作品の構造が透けて見えるような演奏を好むので、1960年代から70年代にかけての全員一丸となる演奏スタイルのような小泉の指揮に感動は少ないが、聴衆の反応は熱狂的だった。

 

指揮:小泉和裕(東京都交響楽団 終身名誉指揮者)

モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K. 550

ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op. 68

 

プレコンサート

[曲目]

モーツァルト:フルート四重奏曲第1番 ニ長調 K.285

[出演]

フルート:小池郁江

ヴァイオリン:伊東翔太

ヴィオラ:石田紗樹

チェロ:伊東 裕