バッティストーニ 東京フィル オルフ《カルミナ・ブラーナ》」(3月15日・サントリーホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

バッティスト指揮東京フィル《カルミナ・ブラーナ》は、緩急がはなはだしく、急の楽曲では聴き手は速さについていけないような(東京フィルはよくついていった)、感覚も味わった。

強烈ではあるが、急ぎすぎるため、音の粘りや芯が吹き飛ばされてしまうような気もした。

 

一方で、第7曲「気高い木々に」の女声合唱の優しい表情と澄み切った高音の美しさを充分に聞かせたり、第8曲「小間物屋さん ちょうだいな」でも女声合唱と男声合唱のやりとりをかわいらしくユーモアを交えて歌わせるなど、柔らかな表情も欠かすことはない。

バッティストーニには緩急、強弱のコントラストをはっきりと描く意図があったのかもしれない。

 

ソリストの3人は少し線が細かったように思えた。

バリトンミケーレ・パッティは、第11曲「胸の中はたぎっている」が押し出しがあまり強くない。しかし、第13曲「俺は修道院長だ」は表情たっぷりで、酒場で大声を張り上げ自慢話を繰り広げるおやじらしさが良く出ていた。

 

カウンターテナー彌勒忠史が1曲だけ歌う第12曲「昔は湖にいたものさ 丸焼きにされる白鳥の歌」は、白鳥のぬいぐるみを手に持つなど笑いを誘う工夫はあったが、ブラックユーモアの持つ強烈な諧謔の迫力と粘っこい表情もほしかった。

 

ソプラノのヴィットリアーナ・デ・アミーチスは繊細で、きれいな高音だが、迫力はそれほどない。最後の聴かせどころ、第23曲「愛しい貴方」はがんばっていたけれど、別世界に誘われるまでの陶酔感には至らず。

 

新国立劇場合唱団は男声28人、女声32人、世田谷ジュニア合唱団は20名。

バッティストーニ東京フィルの爆音に押され気味だったが、中盤以降は力強さを増した。
 

前半に、めったに演奏されないレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア 第2組曲」が置かれた。ふだんよく聴く第3組曲とは違って、キャッチーな旋律はないが、素朴な舞曲風の4曲は味わいがあった。

 

指揮:アンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)

ソプラノ:ヴィットリアーナ・デ・アミーチス

カウンターテナー:彌勒忠史

バリトン:ミケーレ・パッティ

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

児童合唱:世田谷ジュニア合唱団(児童合唱指揮:掛江みどり)

 

レスピーギ/リュートのための古風な舞曲とアリア 第2組曲

オルフ/世俗カンタータ『カルミナ・ブラーナ』