若々しく、引き締まった重厚なブルックナー。
第1楽章は立って指揮した。演奏に生気が漲り、やや速めのテンポで前進していく。
飯守泰次郎の健在ぶりを高らかに宣言する超名演だった。
プログラムに飯守が寄稿した言葉が参考になった。
要約すると、
1997年にシティ・フィルの常任指揮者になって以来、ヨーロッパの歌劇場等の体験からオーケストラに伝えてきた重要なことは下記の3点。
1. 調性の持つ独自の意味や色合い。
2. いわゆる裏拍がドイツ語の語感に基づく重要な音であること。
3. 楽譜に記譜しきれない音楽の「重心schwerpunkt 」があること。
これらが、ブルックナーを演奏する上で特に大切。
今夜の演奏ではこの中の重心が具体的に実感できた。Schwerpunktを辞書で引くと、英語ではfocus 日本語では 中心 と出てくる。核がある、芯のしっかりとした重心の低い演奏だった。
また、ドイツ語の語感が持つ、切れの良さ、明解なアクセントと強弱も演奏からよく感じ取れた。
今日の飯守泰次郎のブルックナーは、弛緩や冗長さが皆無。シティ・フィルの演奏、集中力も素晴らしかった。両者の築き上げてきた音楽の総決算とも言える完成度の高さがあった。
ワーグナーテューバ、ホルン、トランペット、トロンボーン、バステューバの素晴らしさ。チェロ(首席は大友肇)、コントラバスの低音の厚み、ヴァイオリン、ヴィオラの芯のある磨き抜かれた音、木管の歌心、芯をしっかりと持つティンパニの打音、3台のハープまで、シティ・フィルの総力が結集されていた。
第2楽章スケルツォの雄渾さが素晴らしかった。第3楽章アダージョは精緻。第4楽章コーダの最後、第1楽章の主題動機の再現は短く切り裂くように鋭く鳴らされ、文字通り震撼した。
サントリーホールに轟くブラヴォの大合唱は本当に久しぶりに聞いた。スタンディングオベイションの中、ソロカーテンコールに飯守は二度登場した。
4月24日(月)19時サントリーホールでのブルックナー「交響曲第4番《ロマンティック》」にも期待が高まる。