(9月8日・東京芸術劇場シンフォニー・スペース)
昨日行われた東京ニューシティ管弦楽団の記者会見で、来年4月より名称を「パシフィック フィルハーモニア東京」とすることが発表され、新音楽監督に就任する飯森範親からの挨拶があった。また、指揮者として新たに園田隆一郎の就任も発表された。
理事長の日野洋一氏から、名称変更ロゴデザインはブランディング会社<㈱takibi、代表;朝倉昇誠>と共に、名称およびデザイン(Graphic Designer: Andreas Fehr)を決めたことがまず伝えられた。
新名称の由来は[Pacific/太平洋・穏やか]×[Philharmonia/音楽を愛する]×[Tokyo/東京]のキーワードからなる造語。太平洋、世界に向け、音楽を通じて国をつなぎ、平和と融合を音楽でもたらす(Pacifyする)使者でありたいとの願いを込めた。
ロゴマークの2つのライン、黒は弦、管、打楽器のスティックをイメージ。金色は指揮棒(タクト)を表す。楽団員と音楽監督が一体とり、新しい航海に進む決意を示す。
オーケストラの方向性について、日野氏は「オーケストラの歴史をたどると昔はブルジョワから今は市民がパトロン。一般大衆に軸足を置く決意を名称変更にこめた」と語り、オーケストラの新しい3つの方向性を説明した。
第1点は新しい音楽監督飯森範親の下楽団員の個性と話題性のあるコンサートをプロデュース。
第2点に、パシフィック フィルハーモニア東京のアカデミーオーケストラ、ユース・オーケストラの創設。特徴は若い音楽家にクラシック音楽と共に日本の伝統文化、芸術を学んでもらうこと。茶道家の木村宗慎氏を理事に迎え、茶道を通してアカデミー生に日本の伝統文化・おもてなしの心を伝えたいと考えている。
第3点に、パトロンである大衆と共に音楽を通じたコミュニティ形成を図る。
音楽監督就任の経緯、および指揮者体制について、専務理事兼楽団長齋藤正志氏より説明があった。
飯森との最初の接点は、2019年4月21日の第124回定期演奏会。その時に音ががらりと変わりスケールが大きくなり、楽団員からも好評だったこと。当時東京ニューシティは創立30年を迎え、音楽面運営面で変革を必要としていた。
2019年7月から日野氏が理事長に就任。楽員の増強、ソリストの充実、演奏会の増数を図るという課題があり、その中での最大の課題は楽団の将来像を決め、イメージを一新する音楽監督。地方のオーケストラ(山形交響楽団)や他のオーケストラで成功を収め、新たなリーダーとしては絶好の飯森に白羽の矢を立てた。
理事会で満場一致の了承後、交渉するも飯森から当面は無理との返事。あきらめることはできないので、再度交渉。2022年からなら可能との返事。それを確約するために、2020年10月1日から半年間相談役、2021年4月からミュージックアドヴァザーになってもらい、さらに踏み込んで次期音楽監督のタイトルも加えた。
2022年からの指揮者体制は音楽監督飯森範親、また園田隆一郎に指揮者に就任してもらう。イタリア系のオペラを得意としており、飯森とはバランスがとれる。首席客演指揮者は来年中に決め2023年から就任してもらう予定。
コンサートマスター、執行恒宏(しぎょうつねひろ)は、飯森に感謝の言葉を述べ、昨年9月のブルックナー「交響曲第9番」の3日間のリハーサルで飯森に音楽監督になってもらいたいとの気持ちが強まったこと。海外経験が豊富な飯森とともにオーケストラに足りなかった各国の音楽や言語などの色付けを創り上げていきたいと述べた。
最後に飯森範親新音楽監督から就任の挨拶と抱負が語られた。
自分のこだわりを聞き入れてくれた関係者へのお礼と、マーケティング会社を含めた人々の協力への感謝、多くの人々が力を合わせることでできなかったことが実現する大きな力が生まれると期待を込めた。
オーケストラを牽引するには日野氏のような力も重要だが、一緒に音楽を創る楽団員の前向きな意識はかけがえのない最大のプライオリティ。ブルックナーの第9番では、3日間の練習でメンバーの皆さんが自身の言葉を音楽にしようという強い思いが感じられた。本番はブルックナーに聴いてもらっても恥ずかしくない演奏ができた。
その後交渉されたが、四半世紀共にある東京交響楽団があり、無理と伝えた。ただコロナ禍の中で、自分が今後指揮者として音楽家としてどう生きるかを考えた。それから齋藤氏日野氏と再度話し合った。
令和アカデミーを主宰して日本の古典文化やヨーロッパ音楽について部分的にしか教育をうけてきた若者たちに歴史という観点で情報を提供する日野氏から、その音楽版をやってみたいと聞き、強く共感した。この人となら一緒にやれるという確信を持ち、音楽監督を引き受けた。
最後に、飯森から新シーズンラインアップの説明があった。
詳しくは添付の資料をご覧ください。
コンセプトは東京から国内外に音楽の最前線を伝えていくこと。
定番の作品のほか、近現代の作品を組み合わせる。若手ソリスト、ゲスト指揮者とともに新しい音楽をつくる。
目玉コンセプトは本邦初演曲。
音楽監督就任記念コンサートマスター第148回(5月11日サントリーホール)では10分から15分のメイソン・ベイツ「マザーシップ」をとりあげる。テクノや電子音響を用いたもの。ソリストには尺八の藤原道山、二胡の名手チャン・ヒナ、ピアノの牛牛も参加。
第152回(10月4日サントリーホール)では、角野隼斗(リストの“人”はミスプリ)のソロでアデス「ピアノと管弦楽のための協奏曲」を日本初演。
第155回(東京芸術劇場)は神尾真由子をソリストにヴィトマン「ヴァイオリン協奏曲第1番」を本邦初演。
指揮者鈴木秀美、秋山和慶、デュメイの弾き振り、園田隆一郎(リストにあるロッシーニのカンタータは変更になる)などのコンサートが紹介された。
第150回は森谷真理、大西宇宙のワーグナー「トリスタンとイゾルデの前奏曲と愛の死」「ツェムリンスキーの抒情交響曲」も目玉。
最後にコンサートマスター執行恒宏からのアイデアとして、25歳以下の学生に全部の定期演奏会を五千円で聴けるという企画が紹介された。
パシフィック フィルハーモニア東京の事務局の窓口で、先着100名で、すでに販売しているとのこと。
この後質疑応答の時間があり、私は最初に『園田隆一郎さんの就任でオペラの演奏会形式の企画や、特定の作曲家ツィクルスがあるのか』の2点を聞いた。
飯森は『いずれも考えている』と答え、ツィクルスについてはまだ言えないが珍しい作曲家のシリーズを2023年度から始めたいと答えた。
中で私も聞きたかった質問が配信で記者会見に参加している方からあった。『数ある東京のオーケストラの中でどのようなキャッチフレーズで個性を主張するか』。
これについて飯森範親は『東京には9つのオーケストラがある。その中でのコンセプトを考えた時、マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団の取り組みの本*を読んだ。山形交響楽団でも参考にしている。そこで語られているようにオーケストラとお客様のお互いの顔が見えるような取り組みを行っていきたい。』と答えた。
*「オーケストラは未来をつくる マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団の挑戦」(アルテスパブリッシング)
最後の質問はシビア。飯森範親にコロナウィルス罹患のいきさつと感染後の人生観が問われた。飯森からの率直な回答は1時間21分くらいからご覧ください。
またその他の質疑応答は下記youtubeの1時間05分くらいからお聞きください。



