東京・春・音楽祭2021 川口成彦(フォルテピアノ)~協奏曲の夕べ ピリオド楽器で聴く | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

の夕べ

ピリオド楽器で聴くモーツァルト&ベートーヴェン

4月12日(月)・東京文化会館 小ホール

フォルテピアノ:川口成彦

古楽オーケストラ 《ラ・ムジカ・コッラーナ》ヴァイオリン:丸山 韶、廣海史帆/ヴィオラ:佐々木梨花/チェロ:島根朋史/ヴィオローネ:諸岡典経


モーツァルト:J.C.バッハのソナタによる協奏曲 第2番 ト長調 K.107-2はモーツァルトが多大な影響を受けたヨハン・ゼバスティアン・バッハの末の息子、ヨハン・クリスティアン・バッハのピアノ・ソナタを編曲したもの。モーツァルトの死後に発見された。ヨハン・クリスチャンの人柄が分かるようなほのぼのとした作品。モーツァルトのどこか超越した高みではなく、もっと親しみやすい。フォルテピアノの小さな音は、バロックヴァイオリン2挺、バロックチェロ1台でも、その音に消されるくらい。本当は残響豊かな石造りのお城の小さな部屋できくのがいいのだろう。

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第12番 イ長調 K.414のバックは、古楽オーケストラ《ラ・ムジカ・コッラーナ》の弦楽五重奏。典雅で楽しい。真ん中の通路から2列目だったが、音量的にフォルテピアノは目の前で聴きたいと思った。


 

C.P.E.バッハ:幻想曲 ヘ長調 Wq.59-5
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハはJ.S.バッハの最初の妻マリア・バルバラともうけた次男。

フォルテピアノの音だけに集中できた、フォルテピアノの音は時にチェンバロを思わせ、時にピアノがでてくる感じ。作品的にはカデンツァのようで、即興的で未完成の印象をもった。

 

ベートーヴェン(V.ラハナー編):ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.19

今夜の演奏のなかでは、ベートーヴェンが一番面白かった。フォルテピアノと弦楽五重奏の規模がぴったり合う。川口の華麗なテクニックが華やかさをもたらす。モダンピアノよりも、フォルテピアノはハイドンやモーツァルトの影響下にあった典雅さのある作品に合っている。
川口は、頭から弦と一緒に演奏した。第2楽章は、フォルテピアノがより主役となり、連綿と続く美しい主題を弾き続ける。コーダでのピアノと弦のピアニシモのやりとりが絶美。

第3楽章は、演奏者同士もバランスを掴んだのか、ロンド主題を軽やかに奏した。二つの副主題が躍動する部分も楽しい。

《ラ・ムジカ・コッラーナ》 の演奏も川口との一体感があった。

編曲のV.ラハナーは、ヴィンチェンツ・ラハナー, Vinzenz (Vincenz) Lachner, (1811~1893) のことだろう。 ドイツの作曲家、指揮者、ピアニスト。1834年ケルントナートーア劇場で楽長となり、36年にマンハイムで宮廷楽長になった。72年、独仏国境に近いカールスルーエに移り、12年以上、同地の音楽院で指導に当たった。 ラハナーは22歳年下のブラームスとも交友があり、ピアノのための《12のレントラー、間奏曲とフィナーレ付》はブラームスへの誕生日プレゼントとして書かれた。低音を重視する重厚な書法は、ブラームスに似ているとも言われる。

 

終演後の拍手の中、マイクを持って登場した川口は、『楽器は1795年ワルター製のレプリカで、ペートーヴェンの初期作品で使われ、モーツァルトにも関係します』と話した。

続いて『本日はありがとうございました。アンコールにハイドンのピアノ協奏曲第4番第2楽章を演奏します』と言い、優雅な作品にふさわしい和やかな演奏を聴かせた。

 

 

今夜の演奏のなかでは、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第2番」が一番面白かった。フォルテピアノと弦楽五重奏の規模がぴったり。川口の華麗なテクニックが華やかさをもたらす。モダンピアノよりも、フォルテピアノはハイドンやモーツァルトの影響下にあった典雅さのある作品に合っていた。