下野竜也 東京都交響楽団 都響スペシャル2021 ドビュッシー ブルックナー ブラームス | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


3月25日(木)・東京文化会館大ホール

コンサートマスターは矢部達哉。チェロのトップは向山佳絵子がゲストで入っていた。
1曲目はドビュッシー「交響組曲《春》」

第2楽章の軽快な行進曲風主題を中心に盛り上がっていく交響詩《海》の終結部に似たフィナーレが華やかな響きで、ドビュッシーの個性が良く伺えた。第1楽章はもう少し色彩感もほしいところ。

 

ブルックナー(スクロヴァチェフスキ編曲)「アダージョ(弦楽五重奏曲ヘ長調WAB112より第3楽章)」は、弦楽5部。ブルックナーの交響曲のアダージョを思わせるヴィオラとチェロによる主題の崇高な美しさが出色。

 

ブラームス「交響曲第1番」。16型のオーケストラ。演奏する側はやり尽くし、聴衆側は聴き尽くした作品を新鮮に聴かせるのは大変だと思うが、下野都響は新機軸をいくつも聴かせてくれた。これまであまり聞こえてこなかった第1楽章第1主題の中低音を強調したり、金管がコラール主題を咆哮し全オーケストラのトゥッティでクライマックスをつくる第4楽章コーダでは、ためをしっかりとつくり、劇的でありながら、同時に過度にならず抑えるというブラームスの特性(と個人的に思う)にかなう演奏を成し遂げた。

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