小林研一郎 宮田大(チェロ)読売日本交響楽団 (9月2日・サントリーホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


●ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」、リムスキー=コルサコフ「交響組曲《シェエラザード》」
宮田大は聴く度に成長していることに驚く。技術的に益々磨きがかかり、音程も正確、安定感は盤石である。名器1698年製ストラディヴァリウス”Cholmodeley”の音が艶やかに朗々と響き渡り、高音の最弱音の繊細な表情は冴え渡っていた。

 

小林、読響は、ゆったりとしたテンポで、宮田大を細やかにサポートしていく。オーケストラの総奏部分は壮大に鳴らす。読響はクラリネット、フルート、オーボエ、ホルンが名人芸を繰り広げた。

 

第1楽章と第2楽章の第2主題は、ドヴォルザークが書いた屈指の名旋律だが、宮田は思い入れたっぷりに弾くのではなく、意外なほど淡々と弾いた。それを聴いて物足りなく、せっかくの聴かせどころなのに、もったいないとも思ったが、ひょっとしたら宮田は自分の演奏をさらに広く深く極めようとしているのかもしれない、という考えが浮かんできた。芸風をさらに大きく発展させるため、細部の情緒に溺れるのではなく、全体の構成やスケール感を重視しているのではないだろうか。
いずれにせよ、宮田大が巨匠への道を着実に進んでいることだけは間違いない。

 

演奏後の宮田への拍手は爆発的で、楽器を叩いて称賛する楽員たちも宮田に感服している様子が伺えた。

アンコールは、カザルス「鳥の歌」が深々と奏でられた。

 

後半は、リムスキー=コルサコフ「交響組曲《シェエラザード》」。小林は、遅いテンポで、雄大な演奏を繰り広げた。シャリアール王の主題を豪快に鳴らし、第3楽章「若い王子と王女」のメロディをこれでもかとばかりに、ロマンティックに歌わせる。小林の指揮は言葉が悪いが、いささか芝居じみており、色彩感や洗練された表情は少ない。

しかし、読響の首席に常にスポットライトを当て、思う存分に彼らにソロを演奏させ、オーケストラの中から引き立てる指揮は素晴らしかった。

 

コンサートマスター日下紗矢子は妖艶でキリリとした、芯の強い絶世の美女が目に浮かぶような見事なソロを聴かせた。チェロの遠藤真理、フルートのフリスト・ドブリノヴ、オーボエ蠣崎耕三、クラリネット金子平、ファゴット吉田将、ホルン日橋辰朗、トランペット辻本 憲一、トロンボーン青木昂らのソロも伸びやかで素晴らしい。ピッコロも良かった。読響の首席陣の技術の高さを知らしめた。

アンコールは、この状況(コロナ禍)の中の癒しの音楽としてと、小林研一郎は前置きして、マスカーニ「歌劇《カヴァレリア・ルスティカーニ》」から「間奏曲」が演奏された。

 

宮田大©亀村俊二 小林研一郎©満田聡