ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルトを2日続けて聴く | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

10月9日武蔵野市民文化会館小ホール、10日、東京文化会館小ホール)

 

2日間ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト*を武蔵野市民文化会館小ホールと東京文化会館小ホールという違う会場で聴く。初日と2日目で違う印象を持った。(*下記にプロフィールを紹介)

ちなみに重なる曲はモーツァルト《ポスト・ホルン・セレナーデ》。座席や音響、アーティストの体調などさまざまな要因があるとは言え、その違いは興味深かった。同時に一度のコンサートでアーティストや演奏を判断する課題も浮かび上がる。

 

 武蔵野の最前列で聞いた印象は管楽器のうまさ。弦はもっと主張してもいいのではというものだったが、東京文化会館小ホール中央真ん中の席で聞いた演奏は、バランスは問題なく、逆に管楽器のうまさはそれほどとは思えなかった。

 

 バランスに関しては東京文化会館小ホールで聴いた印象が正解と思う。管楽器の違いは、奏者の疲れではないだろうか。ファゴットは2日間とも好調だったが、ホルンとクラリネットの2日目は疲れが感じられた。

 

東京文化会館小ホールの絶好の位置で聴いているとこの団体の長所と短所がよくわかる。長所は闊達で前向き、生き生きとした表現力。短所はそれと裏表だがアンサンブルが少し緩いこと。リーダーの白井圭は厳しくメンバーを律することはなく、お互いに演奏を聴きながらアンサンブルを創っていくという方法をとっているのではと想像する。

  

 武蔵野でのシューベルト「八重奏曲」はこの曲を演奏するためにヴァイオリンを補強したというだけあり、力の入った演奏であり、クラリネット、ファゴット、ホルンは絶好調だった。

 モーツァルト《ポスト・ホルン・セレナーデ》も武蔵野のほうが良かった。特に第6楽章のヴォルフガング・ヴィプフラーが吹くポストホルンは突き抜けるような、伸びのある美音で素晴らしいものがあった。文化会館でも良かったが、武蔵野のときの輝きがわずかだがなかったように思えた。

 

 東京文化会館小ホールは日本モーツァルト協会の主催。モーツァルト「交響曲第1番」ほかを編曲版で演奏。特に面白かったのはコントラバスの幣(へい) 隆太朗が弾く「このうるわしい御手と瞳のために」K612の演奏。難しいコンサートアリアをコントラバスが超絶技巧で弾くのは見事だった。

 

「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト」プロフィール

2013年、欧州で活躍する日本人若手演奏家とシュトゥットガルト放送響のメンバーたちが、シュトゥットガルトで奇跡的な出会いを果たし、尊敬する作曲家ベートーヴェンにあやかり「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ」としてグループが結成された。1819世紀の室内楽を中心に、近・現代音楽にも意欲的に取り組み、2013年 東京・春・音楽祭に出演、続く2014年はラ・フォル・ジュルネをはじめ全国6都市のツアーを展開、2015年の日本ツアーでは、東京交響楽団ソロ・コンサートマスターの水谷晃が加わり、念願であったシューベルトの八重奏を全国6都市で演奏。201610月にも6公演による全国ツアーを行い好評を得た。

 2017年からは、常にシューベルトの八重奏曲を演奏できるようヴァイオリニストをひとり加えて、名称も「ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト」と改名し、さらに発展した活動をヨーロッパとアジアで展開している。

 

 ●ヴァイオリン:白井 圭、エミリー・ケルナー

 ●ヴィオラ:ヤニス・リールバルディス

 ●チェロ:横坂 源

 ●コントラバス:幣 隆太朗

 ●クラリネット:ディルク・アルトマン

 ●ファゴット:ハンノ・ドネヴェーグ

 ●ホルン:ヴォルフガング・ヴィプフラー

 

ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ・シュトゥットガルト 写真:(c)newears.de