ジョナサン・ノット 東京交響楽団 石丸由佳(オルガン) 児玉 桃(ピアノ)(10月21日、サントリーホール)
変奏曲をテーマにしたと思われるプログラム。1曲目のリスト「バッハの名による前奏曲とフーガ」は、2曲目のシェーンベルク「管弦楽のための変奏曲」と共通するBACH音型(シ♭ラドシ)が使われていることから選ばれたのだろう。
オルガンの演奏をあまり聴いていないので感想は述べにくいが、石丸由佳の演奏は格調があって正確だと思う一方、力強さと俊敏性があればさらに良かった。現代音楽に通ずるようなリストの前衛性をもっと激しく表現してほしかった。
続けて演奏されたシェーンベルクは、ノット東響らしく精緻だが、艶と温かみと柔らかさを少し加えたら、深みが出たのではないだろうか。しかしフォルティシモのアンサンブルの密度の濃さはさすがだ。
後半はラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」。児玉 桃のピアノは力強く透明度もある。第10、第15変奏や、第21変奏からコーダに至るダイナミックな部分はツボにはまるが、第1変奏から第6変奏まで、少し荒く感じられ、第11変奏や幻想的な第17変奏、聴きどころの第18変奏は抒情味とファンタジーがあまり感じられなかった。ノット東響は、後半の盛り上げが素晴らしかった。
児玉のアンコールは、次のラヴェル「ボレロ」に関連付けたのか、ラヴェル「鏡」から「悲しい鳥たち」だった。
ノットの指揮する「ボレロ」は、冷静と熱狂のコントロールが行き届いており、これもまたノットの個性がよく表れていた。各楽器のソロをくっきりと浮き立たせながら、きめ細かく、しかし常にくさびを打ち込むように着実に音を重ね合わせて行き、最後のクライマックスで爆発させる。いつもながら、見事な指揮ぶりだった。
写真:ジョナサン・ノット(c)中村 風詩人 児玉 桃(c)Marco Borggreve