ヤルヴィ ドイツ・カンマー・フィル ブラームス 2日目 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。



パーヴォ・ヤルヴィ ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団 ブラームス・シンフォニック・クロノロジー第2

20141211日木曜日 東京オペラシティ・コンサートホール)

2日目はクリスティアン・テツラフのヴァイオリンでヴァイオリン協奏曲と、「ハイドンの主題による変奏曲」、交響曲第2番のプログラム。


初日はヤルヴィとカンマー・フィルの度肝を抜くような交響曲第1番にショックを受けたが、2日目となるとヤルヴィの指揮のパターンがわかり、また耳も慣れてきた。カンマー・フィルもざらつきが消えたわけではないが、音が柔らかくすこし雑然としたところがなくなってきた。


テツラフによるヴァイオリン協奏曲が素晴らしかった。繊細さと強靭さが同居するヴァイオリンで、クリスタルなダイヤの美しさと堅牢さを持っている。そのクールな音色と切れ味の鋭い奏法は、ドライな響きのドイツ・カンマー・フィルとよく合う。ヤルヴィとカンマー・フィルはテツラフにぴったりとつけるというより、仲間の一人のように一緒に、自発的に弾いている。また細やかな表現のテツラフのヴァイオリンはカンマー・フィルの規模がちょうどよい。まるで室内楽のように各声部が明確に把握でき、オーケストラがヴァイオリンに覆いかぶさるといった通常の編成で起こりがちのことがない。第2楽章の中間部では第1ヴァイオリンの伴奏がテツラフに寄り添いすばらしかった。


全体にやや速めのテンポで進められたヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリンの最初の重音はやすりを一気にかけるような怜悧な響きで始まる。歌うところも高音が音程も正確で細い糸がピンと張った細やかさと強さを併せ持つ。カデンツァはヨアヒムのものだと思うが、一気呵成に弾ききる。

3楽章のカンマー・フィルの躍動に乗ってテツラフも激しく弾くが、バランスを欠くことはなく、最後まで細やかさと強靭さを失わない。

アンコールのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番のラルゴは鋭さが影をひそめ、ひたすら細やかな美しさと、ここでは柔らかさが加えられ、感動を呼んだ。


交響曲第2番は第1番に較べて音がこなれていた。あるいはヤルヴィはこの交響曲の穏やかな性格(実際には激しさと暗さもあるが)に合わせて、第1番の激情とはやや違うアプローチをしたのかもしれない。

頭から最終楽章まで、見通しが良く見事にコントロールされた明快な演奏。第1番のときのように、盛り上がるところはより劇的に強調するところは変わらない。第1楽章提示部の繰り返しは第1番同様に行う。第4楽章のコーダは昨夜の爆発を思わせる盛り上がり。


「ハイドンの主題による変奏曲」は各変奏の描きかたの違いが面白い。

活発な変奏のダイナミックとゆったりとした変奏の細やかな表現。そのコントラストが見事。第8変奏の不気味さ、終曲のピーク主題の再現のクライマックスへ盛り上がって行く運び方もすばらしい。


アンコールはハンガリー舞曲の第3番と第5番。表情たっぷりで、楽しいことこの上ない。第5番はト短調とロビーに貼りだされていたが、嬰ヘ短調では、という指摘が友人からあった。ト短調のシュメリング版、パーロウ版という編曲版があるようで、そちらの版を使ったのだろうか。