数年前に、中村恒子さんという精神科医の『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』という本を買いました。

私が読んだ当時で89才、その後90歳まで現役で病院勤務をされ、医師キャリア70年というすごい方の本です。

 

たまに、Youtubeのカウンセラーさんの番組に寄せられたお悩みにカードを出してみることがあるんですけど、ほとんど同じ答えが出ます。

タロットを引かなくても、酸いも甘いもかみ分けた人生経験豊富な人や、人間心理について勉強された方はちゃんと分かるんですね。

 

この本を読むといつも、タロットカードが次々に浮かんできます。

 

若いころは欲求不満をバネにして、「もっともっと」とがんばるのも悪くないとは思います。それだけのエネルギーも伸びしろもあるやろうしね。
でも、だんだん歳をとってきたら、ちゃんと己を知って、「もっともっと」を一つずつ捨てていったほうがラクやと思います。
毎日がつらいなあと思うんであれば、何かを足していくのではなく、「これで上々やろ」と、納得していく道もあるんやないでしょうか。
世間ではそれを「あきらめ」と言うかもしれへんけど、あきらめることが悪いことだとは私は思いません。「あきらめる」というのは、もともとは「物事を明らかにする」っちゅうのが語源なんやそうです。
つまり、あきらめるというのは、自分の生き方をハッキリさせてやることでもあるんではないでしょうか。

(中村 恒子 ・奥田 弘美(著) 『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』より)
 

 

このくだりは、タロットなら「戦車」と「星」のことですね。

 


社会での成功や勝利のため、欲しいものを素直に欲しいと言って、獲得していく7番・戦車。


それを支えるのは5番・教皇の向上心。高い頂を志すパワー。

でも、「もっとやれるはず」って高い理想を描くほど、現実とのギャップは大きくなる。「皆はこのくらい持ってるはず」それに比べて自分は・・・とか。

 

ギャップを努力で埋められたらいいけどそこまでできなかったり、どこまで行っても、私の理想に届いて「ない」となったら、15番・悪魔に変わる。

 

でも、頑張り屋さんは、たとえ悪魔のモチベーションであっても、かなりのところまではいけるんだそうです。

世の中には、いじめられたのをバネにボクシングのチャンピオンになった選手もいますし、いじめられたけど体が弱かったからケンカでは勝てないのですごく勉強して先生になった人もいます。

小さいころ貧しくて恥ずかしかったから、大きくなったら玉の輿に乗っていっぱい洋服買うんだ!って見事に社長夫人になった女性。

笑いのない環境で育ったからこそ、お笑い芸人になった人。

始まりの動機こそ「マイナス」であっても、自分の中にある欠乏感をモチベーションに、努力してここまで来た。

私はあまり頑張れないのでそういう人は凄いと思うし、そういうことが人間にはできるんだなあ、と思います。努力をした人は誇っていいですよね。

 

でもいつしか、「悪魔」のモチベーションでは続かなくなる。悪魔はエネルギーを産み出せない、奪う者だから。

 

5・上を見て、7・努力して獲得して、15・囚われて、その後で足し算ではなく引き算をするのが17番・星。

引き算によって分かるのが、等身大の自分のサイズ・身の丈にあった幸せ。

着飾って、自分らしくないサイズの合わない服を着て、服をほめてもらっても意味がないや、と脱ぎ捨てていくカード。

中村先生の本の「これで上々やろ」という部分を読むと、星のカードにピッタリのセリフだなあ、と思います。

 

 

15番・悪魔とは反対に、なんにもない所からでも自分の中からどんどんパワーを生み出せるのは3番・女帝

 

「そんなにダメ出ししないで。どんなあなたでもいいですよ。欲しくてもいいですよ。特別なあなたでもいいけど、特別なあなたでなくても愛していますよ。」

って自分に言ってあげれたら変わるかしら?

 

たまに、物語の主役よりその友達の方が好きなことってあります。

特別な何かを持った主人公の親友の子。

“アンタってすごいよねー”とか新鮮に驚いて、なぜか主人公の恋や試合を、自分のことのように真剣に応援したりして。

主人公が部活でスランプになれば気晴らしに遊びに誘ったり、同級生のやっかみに言い返してくれたり、好きなら追いかけなさいよ!今ならまだ間に合う、15時の飛行機よ!とか言ってくれる(笑)成績も部活も容姿も恋愛も平凡な子。

でも実際は、武勇伝や自慢話より、残念カミングアウトの方が仲良くなったりするもので・・・。

すごい人の隣にいると、コンプレックスを抱いたり嫉妬したりして居心地よくないから、優秀=人気とは限らないのかもしれません。だから意外にファンが多かったりして?びっくり

 

万才のツッコミ役の人とかも。ボケだけでは、なんだか変なものを見た時間になってしまいかねないところを、「おかしいだろ!」と、常識的な意見が入ったところで笑いが起きる。

 

スポットライト浴びる人がいて照明当てる人がいて。

サバンナでライオンが元気なら、虫も草もシマウマも元気なはずです。

アニメ映画も、監督の個性の中にもどこか平均的な目がある作品はとても魅力的です。監督さんのやりたいことだけ描いてもついてきてくれる信者さんに向けて振り切るのもいいけど、振り切らない良さもある。

 

そんなふうにたぶん、世の中には、特化したものだけでは成り立たないものがたくさんあるんだろうと思います。