【乱読NO.3423】「振仮名の歴史」今野真二(著)(集英社新書) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
日本語史の影の主役は振仮名だった!
日本書紀の読み下しからサザンオールスターズの歌詞まで、日本語表現をいろどり、支えてきた陰の主役は振仮名!
平安時代から現代まで振仮名が日本語表現に与えた功罪を分析する画期的な一冊。

[ 目次 ]
第1章 振仮名とはなにか(サザンオールスターズの歌詞にみられる振仮名 現代の小説にみられる振仮名 コミックスにみられる振仮名 ルビ訳のいろいろ)
第2章 平安時代から室町時代までの振仮名―読みとしての振仮名(振仮名の起源 仮名(平仮名・片仮名)と振仮名 室町時代の仮名)
第3章 江戸期の振仮名―表現としての振仮名(読本の振仮名 江戸期に出版された辞書にみられる振仮名 江戸期の振仮名百花繚乱)
第4章 明治期の振仮名(新聞の振仮名 布告・布達の振仮名 翻訳小説の振仮名)

[ 問題提起 ]
振り仮名は読めない漢字のためのもの、こんな漢字は読めるぞと思う自分を反省する――本書を読み始めてすぐの感想だ。

サザンオールスターズのCDの歌詞で、「合図」には「サイン」、「瞬間」には「とき」、「あるがままに」には「let it be」と、振り仮名が付けてあるという。

「let it be」は歌われることなく、ある歌手へのリスペクトをフレーズで示す「表現としての振仮名」として機能する。

[ 結論 ]
「サイン」や「とき」も読み補助ではなく、漢字を媒介にした詩的世界の広がりのためにある。

古代の漢文訓読の補助に始まる振り仮名は、古代・中世の辞書編纂で普及する。

「蹂躙」には音の「ジウリン」と和語の「フミニジル」が振られ、漢字を媒介に「フミニジル」と「ジウリン」という和漢の概念が結びつけられる。

表現としての振り仮名の発生である。

振り仮名は近世の読本(よみほん)、明治の新聞・小説を経て現代漫画に至るまで様々に用いられ、漢字仮名併用という、日本語がユニークな言語体系であることを支える一要因となる。

[ コメント ]
本書は表現の豊かさを実現する振り仮名の機能と歴史を明快に伝える。

[ 読了した日 ]
2010年1月30日