【乱読NO.1809】「歴代天皇総覧 皇位はどう継承されたか」笠原英彦(著)(中公新書) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
天皇は古代より連綿と代を重ねてきた。
壬申の乱、承久の乱、南北朝動乱などの激動を乗り越え、その系譜は千年以上にわたって続いている。
皇位継承はどのように行われ、どう変質をとげたのか。
摂政・関白、将軍、執権といった時の権力との関わりはいかなる推移をたどったのか。
記紀に記される初代神武天皇から昭和天皇に至る百二十四代と北朝天皇五代すべての生涯と事績を丹念に叙述する。
巻末に系図、索引を付す。

[ 目次 ]
神話時代の天皇(神武天皇 綏靖天皇 ほか)
古代の天皇(応神天皇 仁徳天皇 ほか)
中世の天皇(後鳥羽天皇 土御門天皇 ほか)
近世の天皇(後水尾天皇 明正天皇 ほか)
近現代の天皇(明治天皇 大正天皇 ほか)

[ 問題提起 ]
古事記・日本書紀の神話の時代から連綿と続き、世界で一番古くまで家系をさかのぼることのできる日本の天皇家。

この皇室が、なぜこれほどまでに長い間続いてきたのか、当時の政治体系や権力者との関わり方、血統を残すための政略までを大局にたって総合的に検証する、などといった、小難しい本ではありません。

実在が疑問視されている神話時代の初代・神武天皇から、第124代・昭和天皇までの生涯や事跡がコンパクトにまとめられています。

さすがに124人ともなると、紙幅の都合もあったのか、あまりにコンパクトすぎるような気もしますが、天皇家に興味のある人はもちろん、歴史に興味のある人から歴史小説好きな人まで、手元においておくときっと重宝しますよ。

[ 結論 ]
子供の頃、日本史の授業では天皇家の歴史について、「欠史九代」といって初代神武天皇から九代開化天皇までは実在していないと習った。

古事記や日本書紀に記された年令が100歳を超えている天皇が何人もいるが、そんなことは考えにくい、というわけだ。

記紀の記述とは違うものが多いが、昭和19年に三省堂が発行した『模範世界最新年表』には、キリスト紀元前660年を日本の紀元1年とした上で、私が欠史九代と習った天皇の年令を次のように記している。

初代神武天皇127歳、五代孝昭天皇114歳、六代孝安天皇137代、七代孝霊天皇128歳、八代孝元天皇116歳、九代開化天皇115歳。当時は確かめたこともなかったが、なるほど、これだけ長生きだと「欠史」と教えるしかない。

続けて年表を進めて見てみると、十代祟神天皇119歳、十一代垂仁天皇139代、十二代景行天皇143歳、十三代成務天皇107歳、摂政神功皇后100歳、十五代応神天皇111歳、十六代仁徳天皇110歳で、十七代履中天皇以降になって普通の年令になってくる。

こうした数字が事実である必要はないと思うが、皇位継承の問題で政治家やキャスターらが突然、天皇家の歴史について2,600年とか、2,000年などと発言しているので、急に気になって、笠原英彦『歴代天皇総覧 皇位はどう継承されてきたか』(中公新書)など、いくつか売り物の本を開いてみた。

記紀は当時の権力者が自らの正当性を訴えるために、書いたに違いない。

今考えてみると、でっちあげるなら年齢を水増ししないで人数を増やした方が自然だし、権威もつきそうなものだが、やはりたくさんの人が指摘しているように、当時の人たちが思い当たるようなモデルはいたのだろうか。

[ コメント ]
記録するということは、嘘をつくことでもある。

国史だって、社史だって、自伝だって、ブログだって、嘘にあふれている。

しかし、なぜそのような嘘が書かれたのか、そんな推理を楽しむのも、書物の面白さだと思う。

[ 読了した日 ]
2009年2月27日