【乱読NO.1733】「医学史と数学史の対話 試練の中の科学と医学」川喜田愛郎(著)(中公新書) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
誕生時点から現実の課題にさらされ続けた長い歴史を有する医学。
その医学と医学史こそ、これからの学問のモデルだと認識した気鋭の数学史家が、基礎医学の広汎な分野で活躍し、医学史分野でも画期的な業績を上げている碩学に、医学の史的展開について問いかける。
対極的な専門分野にもかかわらず、脳死等の現実的課題への対応には歴史的反省の上に立つ理性的観点が必要だ、という共通の足場を確認し合い、知的対話の有効性を実証。

[ 目次 ]
第1章 病い、そして癒しの術と学
第2章 医学史への道
第3章 医学史と数学史―あるいはカオスとコスモス
第4章 日本の科学史・世界の科学史
第5章 変貌する現代医学
第6章 臓器移植医療をめぐる省察

[ 問題提起 ]
本書は医学史家と、数学史を中心とする科学史を論じてきた二人の硯学が近代社会における医学と科学の接点とそれらの現実について語り合う。

[ 結論 ]
狙いは2つあるという。

現在、試練にたたされている科学と医学のありかたについてそれぞれの立場から省察することであり、もう1つは現在の医学や科学に関して発言をおこなって科学史という学問の現状をかえりみることであると。

数学者、佐々木氏がもっぱら聞き手に回り、病原微生物学の分野で長年にわたり活躍し、医史学の分野で金字塔を築いた川喜田氏に医学の史的展開について問いかける。

病いそして、癒しの術にはじまり、近代医学を論じながら現在の医学の命題である生命とは何か、にはじまり人間機械論をめぐって数学論とのアナロジーを求める。

終盤にいたり脳死・臓器移植をめぐり、傘寿をとっくに過ぎた川喜田氏が身を乗り出して、その現実的課題への対応に史的反省の上にたつ理性的観点の必要性を熱っぽく説く。

[ コメント ]
やや対局的な専門分野ながら、試練のまっただなかにある科学と医学に共通の足場を理性的観点にもとめる高度な対話である。

[ 読了した日 ]
2009年2月21日